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「ゴリラーマン」と鯉釣り

「ゴリラーマン」という漫画がある。

この漫画はよくあるヤンキーギャグ漫画なのだが、この漫画の画期的なところは、主人公のセリフが全くない⁉ところだと思う。

「ゴリラーマン」を読んでいて、何度も主人公に言葉を発しなければならないような場面が訪れる。読んでいるこちらも「ついに言葉を発するか」とハラハラドキドキしながら読み進めるのだが、いつも言葉を発することなく、絶妙且つ滑稽な表情と身振り手振りで、なんとかその場をしのぎ切るのだった。

主人公にセリフがない漫画など、それまでに読んだことがなかったので、最初はなんともけったいな感じがしたのだが、すぐに主人公のふしぎな魅力に引き付けられていったように思う。

また、この漫画には、落語家の桂べかこ(現・桂南光)にそっくりなキャラクターが描かれていて、連載当時、それが話題となりテレビ番組で取り上げられたことがあったように思う。

さて、ネタバレ注意、漫画紹介はこのくらいにして、「ゴリラーマン」と鯉釣りの話である。

ある日、「ゴリラーマン」を読んでいて驚いたことがあった。

主人公が通う高校には池があって、そこには鯉が飼育されているのだった。

主人公にかかわりのあるいちびりヤンキー数名が、ふざけてその池の鯉を釣り上げていたのだが、その鯉は学校用務員さんが大切に育てているものだったのだ。

偶然、鯉を釣っているところを目撃した学校用務員さんは、烈火のごとく怒り、いちびりヤンキーたちを張り倒し、得意の柔道で投げ飛ばしたのだった。

そのシーンを読んで、僕は「あっ、いっしょやん」と思わず独り言ちていた。そして、それと同時に忘れていた記憶が鮮やかによみがえったのだった。

あれは中学の1年生の時だったように思う。僕の通っていた中学校にも池があり、そこには数匹の大きな鯉が泳いでいたのだった。

ちょうどその頃、僕たちの間では釣りが流行りだしていた。池の鯉に目をつけるアホが出てくるのも時間の問題だったのだろう。ある日、一人の友達が家から釣り糸と釣り針を持ってきて池の鯉を釣り始めたのだった。

僕は実際にその場にはいなかったのだが、釣りをした友達の話では、簡単に鯉を釣ることができたらしかった。驚いたことに、エサはなんとティッシュペーパーを丸めただけのものだった。

それから、味をしめて何人かの仲間で、時々鯉釣りをしていたのだが、運悪く学校用務員さんに見つかり、何発もの往復ビンタをくらったのだった。

普段は物静かな学校用務員さんが怒るだけでも驚きなのに、生徒にビンタをくらわすなどとは全く信じられないことだった。だけど、それくらい鯉を大切に育てていたのだろう。

当然その日以来、池で鯉を釣るようなアホな生徒はいなくなったのだが、「学校用務員さんを怒らせると、ヤバイことになるぞ」ということが、ヤンキーの間に広まったのは言うまでもない。

学校での鯉釣りといい、学校用務員さんから大目玉をくらったこといい、自分の中学で実際にあった出来事とほぼほぼ同じよなことが漫画に描かれていたので、本当に驚いた記憶がある。

学校の池で鯉が飼育されているところでは、〖あるあるな話〗なのだろうか。



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