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社内で新聞記事を共有…著作権は大丈夫? リスクを回避する方法とは

昨日、日本経済新聞社が、「つくばエクスプレス」を運行する首都圏新都市鉄道株式会社に対し、日本経済新聞とその電子版の記事を無断でコピーし、社内の電子掲示板に掲載していたとして、著作権侵害を理由に、約3500万円の損害賠償を求めて提訴しました。

#COMEMO #NIKKEI

日本経済新聞社のプレスリリースはこちらです。

実は、今年2月、東京新聞を発行している中日新聞社が、同じく首都圏新都市鉄道株式会社に対して、同様の理由で、約1250万円の損害賠償を求めて、訴訟提起しております。

それぞれ係争中なので個別具体的なコメントは控えますが、これら一連の報道をみて、ひょっとしたら心中穏やかではない企業の方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、社内で新聞記事に掲載の情報をシェアする場合の著作権法上の留意点をお伝えします。

1. 回避すべき行為

そもそも新聞記事は事実の伝達にすぎない以上、著作物ではないから著作権を気にしなくてもよいのでは?と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません(著作権法10条2項)。
しかしながら、新聞記事は思想感情が創作的に表現されたものがほとんどですので、著作物(同法10条1項1号)と考えて対応すべきです(日経新聞予約翻案事件(原告は日本経済新聞社) 東京地判平成6年2月18日判タ841号235頁参照)。

新聞記事をコピーして社内でシェアしたり、アップロードしてあらゆる場所から閲覧可能にすると、著作権(複製権(著作権法21条)、公衆送信権(送信可能化権)(同法23条))を侵害する可能性があるので、これらの行為をしないように留意してください(雑誌記事についてですが社保庁LAN事件 東京地判平成20年2月26日判例集未搭載参照)

なお、著作権法には、著作権者の許諾を得ることなく、著作物を利用できる行為が規定されていますが、上記の行為はそれらの規定に当たらないと考えるべきでしょう。
すなわち、社内でシェアする際に想定される態様は、引用(同法32条1項)に該当しないことがほとんどでしょう(絵画の鑑定書事件 知財高判平成22年10月13日判時2092号135頁参照 判決要旨はこちら)。
また、社内でシェアする以上、私的使用のための複製(同法30条1項)に該当しないと考えてリスクを回避すべきです(舞台装置設計図事件 東京地判昭和52年7月22日判タ369号268頁参照)。

2. 適法に共有する方法

(1) 許諾料を支払う。
社内で必ず共有する新聞紙については、新聞著作権協議会に加盟している新聞社については公益社団法人日本複製権センターに、加盟していない新聞社については個別に(例えば日本経済新聞社については、記事利用・リプリントサービス)許諾料を支払って利用することが考えられます。

(2) 新聞記事を複製せずに回覧する。

(3) リンクを共有する。
ネット上に掲載されている記事のURLを共有することは適法です。
最近はインターネット上に新聞記事が掲載されていることが多いので、そのURLをメールやSNS等でシェアすることが、合理的な方法かと存じます。

3. 結び

以上、著作権法上の観点から、社内で新聞記事の情報をシェアする方法について検討しました。
情報共有の方法は、各社それぞれあるでしょうし、個別具体的な事情に鑑みて結論は変わるかもしれませんので、気になる方はご相談いただければと存じます。

弊所には、顧問先等から著作権のご相談が多く寄せられます。
顧問弁護士はいるけど著作権や知財には詳しくなさそう、ということであれば、セカンドオピニオンとして、まずはスポットでのご相談をご検討いただければと存じます。
いつでもお気軽にご連絡ください。

弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
所長 弁護士 弁理士 西脇 怜史(第二東京弁護士会所属)
(お問い合わせページ https://nipo.gr.jp/contactus-2/)


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