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連続と再結合"オカムラ ほそくて、ふくらんだ柱の群れ"

久しぶりに紀尾井町のニューオータニへ行った。
以前はたまにランチをするために訪れていたが、子育てが始まってから大分遠ざかっていた気がする。
ニューオータニの一角にオフィス家具メーカーのオカムラのショールームがある。そこに新たに「OPEN FIELD」という表現の場が誕生した。
ここのキュレーターに建築史家の五十嵐太郎氏を迎え、気鋭のアーティストによるインスタレーションを発表をしていく。
今回は「ほそくて、ふくらんだ柱の群れ」と題して、3名の異なるジャンルのクリエイターが参加し、絵画とデザインをともに体験してもらう風景としての空間をつくることを企画した展示会だ。


1.連続性による異質で穏やかな空間

少しふくらんだ柱の群れ
柱頭部

会場には無数の細い柱が等間隔に並んでいる。会場の空間構成は建築家の中村竜治氏が手掛ける。
中村氏は建築というよりインスタレーションや舞台美術の印象が強く、海外からも高く評価され作品がヒューストン美術館などに所蔵されている。
素材の柔らかさなどを活かしてその重なりや連続性によって説明のいらない繊細な表現ができることが彼の特徴と言える。
今回は無数の杉の木を細い円柱に切り出したものの中心部が控えめに膨らんでいる。古くはギリシャのパルテノン神殿に見られるエンタシスと呼ばれる柱頭部へ向けて細くなる形状にも重なる。法隆寺などの寺社仏閣にも見られるが、それらより圧倒的に細く等間隔に連続していることで、僅かな緊張感と安定感が感じられる。
天井との接点は何やらモコモコした素材が柱を覆い、天井にテンションをかけているようだ。
この部分のデザインを手がけたのはテキスタイルデザイナーの安東陽子氏だ。白井屋ホテルをはじめとして話題の建築のテキスタイルではよく名前を聞く存在だ。
ただ今回会場で使われてるものはエスキモー帽子の裏地のようなモコモコしたもので、これはテキスタイルなのか?と読み取りが難しい。チラシを見ると他にもいくつかデザインがあり、そちらの実物も見たかった。

2.分断と結合と時間の流れ

解体された絵画
解体された絵画

柱の中心部に施されているのは、アーティスト花房紗也香氏による絵画の一部分だ。彼女は普段油彩やアクリル画を描き、色毎の滲みによる曖昧な色みや境界により、自然界を独自の視点でやや歪ませた世界観になっている。
今回は一度本展のために新作を描いた後、柱にその断片的なイメージを足していったと言う。
元々一つであったものが解体され、その部分たちが柱に巻きつけられていることで、分断されてはいるが、何本もの柱は当然ながら同時に見え、ひとつの画となっている。また歩き進めるうちのその重なった画は変化して見える。
そんな見える画の変化を通じて時間の流れを感じられる空間でもあった。


3.インスタレーションの在り方

柱の結合によるスツール
スツールの座面

会場の一角には、柱を同モジュールでカットした部材を並べてできたスツールの展示もあった。
オカムラの会議室にある最新鋭のオフィス用チェアとの比較も面白い。
今回このスツールは、インスタレーションが終了した後の部材の再利用方法についても提示している。
削り出しの位置によるのか、それぞれ断面の年輪の中心部に偏りがあって、デザイン的にも見応えがある。

様々なジャンルのデザインアプローチがあり、それは柱の連続によって今回分断されて、再結合している。その化学反応を見る側に委ねている。
これからの企画展も期待したい。

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