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文明と椅子"ATELIER MUJI GINZA Japanese modern展"

昨年に引き続き、ATERIER MUJI GLNZAで開催されているのが、「Japanese modern展」だ。
これは日本のモダンデザインに焦点を当てた展覧会。
トーネット社の曲げ木の椅子が台頭した20世紀初頭から日本のモダンデザインは動き始めた。マルニ木工、飛騨産業の誕生もこの頃で国内でも曲げ木の技術が発達した。
会場にあるモダンデザインの椅子たちは、100年経っても色褪せずに長く愛されていることがよくわかる。そして現代のデザイナーやこれからのデザインに多大な影響を与えていることも展覧会から読み取れる。
日本の生活様式に寄り添った家具が作られ、ひとつの家具の在り方を示すこととなったジャパニーズモダンデザイン。それぞれの椅子がバラバラに見えて、その文脈がはっきりと浮かび上がっているように思う。
せっかくなので、ようやく戻りつつある銀座を訪れる外国人観光客にも、北欧やアメリカだけでない、日本で育まれてきたモダンデザインを感じて欲しい。

会場の様子
会場の様子

自由に座ることができる会場の椅子。座り比べてたりディテールを見るに、デザイナーたちが様々なアプローチでものづくりとデザインの間で格闘する様子が伺える。
その中のいくつかを紹介したい。

1.座ることの根本を問う

坐ることを拒否する椅子

パッと見でギョッとしてしまう座面。有名なこのお顔を生み出す作者は皆が知ってるあのお方だ。
岡本太郎氏はこの椅子を通して、生活や生き方へ対する問題提起をしている。椅子だからといって全てが座りやすくあるべきではない、という日常生活への緊張感や刺激を提案している。他の椅子と比べるとコンセプトも含めてかなり異質ではあるが、デザインだけでない、生き方へのアプローチも含めて彼にとっては芸術なのだ。

2.生活様式に寄り添うデザイン

天童木工 低座椅子

坂倉事務所の社員であった長大作氏による名作、低座椅子。
座椅子の座面が高さ29cmの位置に設定してある。
座面が大きく厚みがあるので座面の中で脚を組んだり、脚を投げ出したりもできる。和室でも長く楽にくつろぐことができ、洋室でもインテリアと調和するデザインだ。この和洋折衷の在り方こそ、ジャパニーズモダンのひとつの回答とも言える。この椅子は京都の境内で運営されているdd食堂でも使われている。

3.片持ちが美しい小さな建築

ジョージナカシマ コノイドチェア

ジョージナカシマは、ワシントンに生まれ大学卒業後、帝国ホテル設計時にフランクロイドライトに伴って日本に来日、レーモンド事務所に入所し、独立後は前川國男氏の仕事を手伝い丹下健三氏とも知り合っている。正に日本の近代建築史を生きてきた人物である。コノイドチェアには、そのな彼の建築家としてのアプローチや人間工学に基づいた丁寧な日本らしいものづくりが伺える。
二本脚に大胆に差し込まれている座面は、人間の体に合わせて緩やかな彫り込みが施されている。背板の高さや角度もよく計算されている。フォルム全体に温かみが感じられ、これも和室にも洋室にも溶け込む意匠だ。

会場には寺田尚樹氏による、ジャパニーズモダンデザイン史が時系列で紹介されている。
たまには見るだけでなく、家具を理解する上でスケッチもしないとダメだなと感じた。

ジャパニーズモダンデザイン史

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