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海老・穴子・牡蠣のトリオ海鮮天重 南チロルの透明度高い果実味とミネラル豊かな白ワイン

自炊スキップの日、家路でテイクアウトの夕食を探す。
駅構内のショップに弁当・惣菜が並ぶなか、“贅沢 海鮮天重”と目が合った。福井県小浜市を拠点とする“若廣”の商品だ。

過去にもこの若廣の弁当にワインを合わせていた。

アナゴ寿司と鮭ハラスと、いずれも題材が難題だったようでワインとの調律にはややしくじっていたようだ。

さて、今回の贅沢海鮮天重は海老、穴子、牡蠣の3種の天ぷらが乗っかり1,350円。弁当でこの金額、期待値も高まる。
一方で天ぷらは完成してからの風味の劣化が二次関数的な曲線を描いて下る(気がする)。
さらに天重となると上からタレが掛かり、下からは白米の蒸気にさらされる。
風味の強いタレで風味劣化をクリンチしているのだから焦らなくても大丈夫、と自分に言い聞かせるも、最寄り駅から自宅へペダルを漕ぐスピードは無意識に加速する。
振り返ると、さっきまで伴奏していた電動自転車の妻をはるか後方に見つけ、我に返る。私の電源は食欲とワインへの渇望。

さて、自宅に到着し肩で息をしながらセラーに向かい取り出したのは、オーストラリアからスパークリングワイン(シャルドネ主体)とセミヨン品種の白ワイン、イタリア トレンティーノ・アルト・アディジェ州のピノ・グリージョ品種の白ワインの計3種。
妻が購入したオードブルからエビ入りアボカドサラダも少々失敬し、ワインに合わせた。

実食の結果、海鮮天ぷらトリオとのシンクロ率が最も高かったのはアルト・アディジェ州の白ワイン。南チロルの透明度の高い果実味と豊かなミネラル感が好相性のポイント。
絶妙な風味バランスの甘辛タレが、冷えていても天ぷらの魅力を引き出してくれた。冷えた状態で食べても美味しいように精密に計算されているのだろう。

さて、それぞれの料理とワインとの組み合わせについて。


テルラン, ピノ グリージョ, イタリア, アルト・アディジェDOC, 2021, 3,366円
Terlan, Pinot Grigio, Alto Adige DOC, Italy

アルプス山脈の麓にあるワイナリー。ピノ・グリージョ品種は標高約300m以上の斜面の場所に植わる。寒暖差が大きく、ブドウの酸は高いレベルで保たれる。土壌にはミネラルも豊富。
香りには青リンゴ、マルメロのハリのあるみずみずしい果実香、ライムのような引き締まった香りも穏やかに。微かにパンから香るイースト香、白い花のフラワリーなフレーバーもふわりと。白胡椒がワインを心地よく引き締める。
味わいにはみずみずしくハリのある果実味、キュッとした酸味が心地よい緊張感、ほのかな塩味と余韻のほろ苦さがワインにバネのように抑揚を付けていて楽しい。癒しの果実の滋味が上品に広がる。

先ずは海老天にワインを合わせる。エビの甲殻の香ばしいフレーバーに、ワインのミネラルや塩味のニュアンスが調和。相性: ★★★★☆

穴子天に。甘辛のタレをまとったアナゴの柔らかい脂にワインの透明度が高く清々しいな果実味がふわりと合わさる。ただ、余韻のアナゴの土っぽいフレーバーにワインが反応して、微かながら苦み生臭み立つも許容範囲。相性: ★★★☆☆

牡蠣天に。タレを吸ってジトっとして冷えた牡蠣にワインは難しいかなと思いつつ、牡蠣天の余韻に恐る恐るワインをひと口。ワインの透明感の高い果実味は牡蠣の生臭みスイッチをみごとにかわし、ワインのミネラルと塩味が牡蠣のほろ苦さもみごとに包み込む。相性: ★★★★☆

エビ入りアボカドサラダに。アボカドのグリーンな植物的な香りとまったりとしたクリーミーな食感に包まれたエビに、ワインの軽快なミネラル感が調和。相性: ★★★☆☆


デ・ボルトリ, ラ ボエム キュヴェ ブラン, ヤラ・ヴァレー, オーストラリア, 2,586円
De Bortoli, La Boheme Cuvee Blanc, Yarra Valley, Australia

1924年にヴィットリオ・デ・ボルトリは北イタリアからオーストラリアに移住。それから100年。
コストパフォーマンスの高い魅力的なワインを世に送り出している。
オーストラリア出身のソプラノ歌手「ネリー・メルバ」をリスペクし、代表作である4幕からなるオペラ「ラ・ボエム」をイメージして造られたワイン。
シャルドネ品種93%、ピノ ノワール品種7%のブレンド。
香りにはリンゴジャム、リンゴのコンポートの厚みのある果実香にカスタードクリーム、レモンカードのまったりとした香り、バニラ香も、微かに黄色い花、アカシアハチミツも。
風味にはフレッシュさがややしっかりとしつつ心地よい複雑さと奥行き、シャープな酸味、ゆったりと中庸からやや長めの余韻、鼻腔を微かに柑橘果皮や植物的なタッチが抜けて爽やか。

海老天に。
天丼弁当の宿命だが、タレを吸ってジトっとなり冷たくなった衣。このスパークリングワインの泡の刺激がそこに活力を与え、エビのフレーバーもしっかりと立ち上げ、シャープな酸味が油をリフレッシュする。相性: ★★★★☆

穴子天に。
スパークリングの泡の器用さを見せ、完成からしばらく時間の経ちジトっとなった衣の奥のアナゴをやさしく起こす。甘辛のタレに繋がりつつ、穴子の甘みを含む脂に調和するも、シナジーを生み出すには至らず、今一つ深みに欠ける。相性: ★★★☆☆

牡蠣天に。
このスパークリングワインの器用さをもってしても、時間経過して冷たくなった牡蠣天に活を与えるには至らず。むしろ若干の生臭みが立ちあがる。この難しい食材にはワインにミネラル感が求められるか。相性: ★★☆☆☆


トルブレック, ウッドカッターズ セミヨン, オーストラリア, 2022
Torbreck, Woodcutter's Semillon, 3,080円

1994年に設立のワイナリー。ワイナリー名は創業者がスコットランドで木こりをしていた時の思い出深い森の名前。なんともほっこりとするエピソードだ。
ローヌ品種から造る凝縮したワインで、創業直後から国際的な評価を得ている。
このワインはバロッサ・ヴァレー産のセミヨンを使用。
香りには青リンゴ、白桃などが爽やかに、軽快に。フラワリーなニュアンス、酵母の香ばしさもほのかに。
味わいの果実味の凝縮感は軽快でみずみずしい。酸味は中庸ながら的確にワインを引き締め、余韻の最後の最後まで清々しい。セミヨン特有のクリーミーなニュアンスはほぼなく、それもワインの清々しさに繋がっている。

海老天に。
ワインの華やかな果実香はエビ特有の甲殻のフレーバーに調和。相性: ★★★☆☆

穴子天に。
華やかで軽快な果実味は、甘辛のタレとアナゴの脂に圧され、余韻には若干の苦みすら立ち上げてしまった。相性: ★★☆☆☆

牡蠣天に。
ワインの軽快でみずみずしい果実味は、冷めた牡蠣という生臭みの地雷だらけの食材の爆破スイッチをみごとにかわし切り、臭みを立たせない。ミネラル感はあまり強くないワインながらもここまで調和するとは清々しい。相性: ★★★★☆

エビ入りアボカドサラダに。ワインの風味が軽快で、アボカドとエビのパワーに圧される。果実味が土俵際に押しやられ余韻には微かにエビの生臭さが立ってしまうが許容範囲に踏み止まる。相性: ★★★☆☆

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