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55.静寂との約束

静寂には静寂の音がある。
静寂の音がうるさい日は心がひとりぼっちな時。
人間朝起きてから眠りにつくまで、ずっと考え事をしている

何をそんなに考えているのか思い返してみると、そんなに大した事ではないのか、大半覚えていない。
ただ選択をしていることも多いのだろう。

外側が静寂を貫いている間も、
内側の私は喋り続ける。
テーブルを拭きながら私が何を考えているか知らないでしょう?
階段を登りながら私が何を考えているか知らないでしょう?
踏切待ちの横顔がどんな感情なのか分からないでしょう?

私もあなたが今何を考えているかを知らない
分からない。

静寂は働く。
私に恐ろしいことを考える隙間を与えて、
音もなく笑っている。

きっと私の心が何かに満ちているからこういう事になるのだ。
だって静寂の音が気になって眠れない夜が減った。
前よりも私は独りではない。
怖くてたまらなくて眠れない日もあったし
柔らかい布団に包まれながら、わけもなく泣けて来て翌日パンパンに顔が腫れた日もあった。

だれかの温もりをそばに感じている時も
そうでない時も、静寂はあるはずなのに
前よりも聞こえない。
怖いことも減ったのか、

テーブルを拭きながら、その音はそうやって鳴らすより魅力的な鳴らし方があるだろうにとか

階段を登りながら、この謎の筋肉痛の原因は宇宙人から送られて来た救難のテレパシーかもしれないだとか

踏切が開くのを待ちながら、どれくらいの距離に電車が見えた時ここを潜ったら向こう岸に間に合わないのかなとか

私はうるさい静寂を、外に漏らしてはいけない。
静寂との約束

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