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日曜劇場「VIVANT」から考える②〜日本映画が描くべきものとは?

TBSの日曜劇場VIVANTが、同時配信にすることで、1本1億円の予算を得て、1か月のモンゴルロケを敢行、これまで見たことのないドラマを作ると制作陣が語ったことをきっかけに、普段あまりドラマや映画を見ない私ではあるが、日本映画の将来についてちょっと考えてみた。

もちろん、正味50分程度の作品で、1本1億円というのはハリウッド映画は当然のこと、最近の韓国映画に比べても数分の1の制作費で、それほどすごい額ではない。テレビドラマの通常予算と比べたら倍くらいの違いがあるというだけで、テレビと映画では元々、それくらい規模が違うということだ。だから、テレビドラマはこれまで、テレビドラマなりの面白さを追求してきたわけだ。

日本の場合、「半沢直樹」みたいに、複雑に細かい心理描写をしたりする代わりに、歌舞伎や漫画といった日本文化を最大限に利用し、「決め台詞」や「決め顔」を絶妙のタイミングで入れて、わかりやすい勧善懲悪の構図を作ることで、見るものの興味を惹きつけたり、大映テレビの一連の作品のように、あえてチープな感じにし、それを面白さと位置付けることで、オタク魂をくすぐったり、制作費がないなりの色々な工夫をしてきたわけだ。しかし、バブル崩壊後の失われた30年で、制作費不足が定着し、映画の制作費も低値安定になってしまった。

制作費の問題だけではないだろうが、日本のエンタメは近年、韓国エンタメに大きく水を開けられていると言われてきた。そして、そう言われている間に、韓国映画の「パラサイト」がアカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した。近年の韓国映画は社会派なテーマを描きながら、それを上手くアクションエンターテインメントに仕上げ、背後のテーマに興味がない人をも満足させうる魅力的な作品になっているとの評価を得ている。一方で、日本映画は演出にしろ、演技にしろ、ガラパゴス的な小さな世界に収まってしまい、世界に通用しないと言われてきた。

それに、これまではスパイ映画や現代のテロ絡みの映画を日本で作ると、どうしてもダサくなった。多分、私も含めた日本人が、現代社会において日本人スパイが暗躍するところなどほぼイメージできないからだろう。日々、テレビニュースなどでアメリカ、ロシア、中国など大国の首脳と日本の政治家の貫禄の違いを見せつけられていると、どうしても日本人が007のように立ち回る姿は想像がつかないのだ。それに、日本人のスタイルが良くなってきたのは最近のことで、随分最近まで、背も低く、脚も短く、アクションがサマにならなかった現実がある。時代劇の殺陣などはかっこいいのに、こと、国際社会を飛び回るとなるとカッコいいイメージは萎んでしまっていた。

でもそうしたら、韓国人だって同じ東アジア人である。なのに、韓国映画は国際社会に翻弄される自国を描いた映画で高い評価を得ている。スパイもいっぱい登場する。朝鮮戦争という冷戦の産物によって、自国を南北に分断されるという悲劇が映画の題材にぴったりだったというのはあるが、それを、アクションあり、恋愛模様あり、政治批判あり、人間讃歌ありのエンターテイメントにして次々と世の中に出していって、評価された。それはなぜなのか。

これは私の勝手な分析であるが、韓国の制作者たちは自らに降りかかった悲劇を徹底的に客観視して、自分たちの国際社会における立ち位置や、自分たちが弱者であるという事実を認め、再評価したのではないかと思うのだ。もちろん、軍隊と徴兵がいまだある国のリアリティというものが、映画にもリアリティをもたらしているだろうことは否定できない。しかし、それだけではないはずだ。

一方、敗戦国でありながら、朝鮮戦争が戦後復興の引き金となり、経済発展していった日本は、本来は敗戦国という国際社会の弱者であるにもかかわらず、そこに目を向けることなく、ジャパンアズNo. 1などという言葉に浮かれ、国際社会の主役か準主役のようなつもりになって、戦後の自分たちの本当の姿を客観的に見つめられなかったのではないだろうか。

日本映画界が国際社会における自国日本の戦後現代史をシビアに描く作品を作れなかったのは、言い方を変えれば、国際社会において戦後の日本というのはどういう存在であり、立ち位置であるかを日本人自身が客観的に見てこなかったということではないか、、、。

冷戦の落とし子としての韓国における南北分断のような国の悲劇は、第二次大戦における敗戦国日本においては何にあたるのか、、、。日本映画はそこに切り込んでいない。

日本が敗戦によって背負わなければならなくなったもの。それは何か?
敗戦国なのにまったくお咎めなし、そんなことあるわけがない。
でも、この問いに答えようとした日本映画は存在するのだろうか?
映画に詳しくない私が当然それを知るわけはない。どなたか詳しい方、この日本映画がそこに挑戦していて、こういうことを描こうとしているというのをご存知でしたら、コメント欄にコメントください。

ここでふたたび「VIVANT」の話に戻る。
私がこの「VIVANT」について書こうと思ったのは、当初、このドラマはもしかしたら、この大きな問いに答えようとしているのではないかと思ったからなのである。後々、ドラマを見ながら、この制作陣の目指すものは、必ずしもそういうものというわけでもないのだろうと思うようになったのは、前回の投稿に書いたとおりだが、では、監督の言う「まだ見たことのないドラマ」とはどう言うものなのか。そこに、ハリウッド映画ばりのスケール感や深い歴史観を期待してはいけないだろうか。


ここから先は、考察隊の言葉も含め、また、VIVANT制作の参考資料にされた本などからの情報も交え、私がVIVANTで描いて欲しいと思ったことや、こういうドラマになり得ると考えたことなどを書きたい。なので、これまで放送分のドラマを見ていない方には、ネタバレになってしまう。というわけで、ネタバレが嫌な方は、ドラマを見られてから次回以降の投稿は読んで欲しい。


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