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毎週毎週日曜日にシドニーのカジノであるThe Starに出向いて高級日本食レストランでしでかしていること

さて、毎週毎週日曜日にシドニーのカジノであるThe Starに出向いて高級日本食レストランで何をしでかしているかと言えば、これ(写真参照)だ。

ご希望される方だけだが、レストランに来られたお客様のお名前を毛筆で書いて差し上げる、それが仕事だ。俺の給金はThe Starからでているので、お客様はこれらをフリーで受け取れる。

一昔前は「漢字で名前を…」というのが主流だった。今でもそうなのかもしれない。そういう依頼も度々受けてきた(し、実はこの仕事も最初はそういう依頼だった)。

だがどうなんだ?日本人は漢字に頼らねばならないのか?
漢字の後ろには当然中国の姿が見え隠れする。オーストラリアでの日本のイベントなのに本当にそれでいいのか?

日本には日本独自の仮名がある。しかも平仮名、片仮名と二種類もあるではないか。日本に親しみを持ってくれている非日本人の方の名前を日本人の俺が書くのに何故それを使わない?いや日本人としては断然それを使うべきではないか。

そういう巌になったさざれ石くらい硬くて強い意志を持って吾輩は毛筆で片仮名を使ってお名前を書かせていただいているわけであるのである。

とまあそういうふうには言ってはいるが、半分はまあそんな感じだとしても半分は表記できる音の問題だ。

日本語の漢字では表記できない「音」が沢山ある。それに漢字には当然意味が入ってくる。可能な限り嫌な意味のある文字は使いたくない。

例えば「セバスチャン」はどう漢字を充てるだろうか。日本語に「チャン」という発音の漢字は無い。無理矢理に「知安」を充てるのが正しいと言えるのか?片仮名ならより近い音を書いて差し上げられるではないか。外国人の名前に日本語の音のまま漢字を充てようなんて、よくよく考えれば無茶でおかしな話だと分かるだろう。

では「ドミニク」はどうか。
簡単に浮かんだ易しい漢字を組み合わせて「土味肉」などと充てたとすればいくらなんでも失礼が過ぎよう。殴られても文句は言えぬ。そもそも「ド」の音には「土」のほかに「度、怒、努」くらいしかない。「ミ」には取り敢えず「魅、彌」があるからいいとして(美は「ビ」、実は「ジツ」とも発音するから使い辛い)、「二」と「ク」はどうする?ということになる。全体感を出すために組み合わせを考えるのも大変なのだ。

ネットには外国人の名前を漢字にするサイトがいくつもあるが、あれを正気でやっているのなら恐ろしすぎる。音さえ合えばどんな意味であろうが構わず使っているものもあるのだ。他人を慮る日本人の心があれば決していい意味を持たない漢字を日本を好きでいてくれる人の名前に入れてあげたくはなかろう。

別々の二つのサイトで「ドミニク」を試してみると以下が出る。
「努三宍紅」
「友明宍」
「宍」は、1 人のからだの肉。2 猪(いのしし)・鹿(しか)などの食用肉。のことだ。どうしてこんな漢字をわざわざ人名に充てさせるのだ? ふざけているとしか思えない。「努力みっつで赤い猪肉が食える」という意味か?「友達は明らかに人肉」という意味の名前なのか?これを鵜呑みにしてそのまま書いて本人に渡すなんてことは日本人として愚の骨頂、いや一人の人間としてどうなのか。 

https://note.com/renclub/n/n5b68f5175681
これはFBでそんなある人間を偶然見てしまって、止めときゃいいのにちょっと彼に一言言ってしまった俺の若気の至りの話である。知り合いの筆屋の跡取りがその彼の書き込みに「いいね」をしていたからその若旦那とも丁寧にお別れをした。他国の英雄をわざわざ貶めるような行為に賛同するような人間とは関わりたくない。

とにかく、以上のようななんのかんのがあって今回の仕事では全面的に片仮名を使っている。もちろん片仮名を使ったからと言って他言語が正確に表記できるわけはない。ただ日本語の漢字よりマシというだけだ。しかしそのマシな方が日本独特のものであるならば断然それを使うべきだ。

要はカッコよく仕上げさえすれば、みんな喜んでくれるのだ。

オージー達に喜んでもらって、少しでも日本に対して好意をもってくれれば、それが一番だ。

海外で生活している日本人は各々が日本の代表だと思って過ごしているはずだ。ほんの、本当に小さな小さなことではあるが、俺もそう思っていつも仕事をしている。




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