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大戸屋VSコロワイド 買収劇の真相とは ガイアの夜明け6ヶ月完全密着を徹底解説

どもう、かずちです。
前回のnoteが少し反響良かったので調子乗ってまた学びになったことをシェアできればと思い、深夜3時に筆を握りました。(読了時間:10分)

※こちらは前回のnoteです。もしまだ読んでいない方いましたらぜひ一度御覧ください。

今日のテーマは”企業買収”
その中でもコロナ禍で大打撃を受けた飲食店業界についてです。

10月6日のガイアの夜明けは6ヶ月独自密着をした大戸屋買収劇の回でした。
4月14日の買収開始から9月8日のTOB成立までを完全密着!
正直、驚きの連続かつ企業戦略の大切さを身にしみました。
広報人生として企業買収に出会う確率はかなり少ないですが、この世の中で何が起きるかわかりません。スタートアップでもリアル半沢直樹のような出来事が起きないとも言い切れません。それに対応できる広報はほんの一握りだと思いますので少しでも参考になれば幸いです。

また、ガイアの夜明けはどの企業も喉から手が出るほど放送してほしいと思っているのではないでしょうか。しかし、ガイアの夜明けで放送されることはリスクもつきものです。

そこで今回は簡単に買収劇の概要と番組がどう報じていたかをメインにお伝えいたします。

0.買収劇の概要

すべては4月14日に始まりました。

ある企業が突然人気定食チェーン大戸屋へ株主提案をし、買収計画を発表しました。その企業とは大戸屋の10倍の売上を誇る巨大外食企業ののコロワイドです。コロワイドはやきとりセンターや甘太郎の居酒屋事業から牛角や温野菜などの外食事業まで幅広く手掛けています。

コロワイドは今までも多くの企業を買収して、事業を伸ばしてきました。
もともとは現在の社長・蔵人金男氏が甘太郎を創業して、その後2002年から牛角やかっぱ寿司といった外食チェーン店を次々に買収しています。いわばコロワイドは買収をして大きくなってきた会社と言っても過言ではありません。

しかし、このコロナで居酒屋事業の業績が曲がり角をむかえており、その中注目されているのが「非アルコール事業」の定食事業でした。コロワイドは定食事業を持っていなかったので、今回大戸屋に注目したと思われます。コロワイドからすると生き残りを賭けた企業買収になります。

新たに動き出したのは株主提案をした約1ヶ月後の5月25日。
大戸屋はマスコミを集めて記者会見を行いました。
そこで窪田社長は以下のような反対コメントをしています。

「大戸屋の未来を創るのは現経営陣であり、コロワイドが要求している子会社化に大戸屋の未来はない」

ここからコロワイドと大戸屋の戦いの火蓋が切られました。

そもそもなぜ大戸屋はこの買収を反対しているのでしょうか。
それは大戸屋の創業者・三森久実氏のときから大事にしている手作りかつ店内調理という考え方にありました。

コロワイドが提案したのはセントラルキッチンの活用で、低コストであり、スピード感を考えた戦略ですが、大戸屋としてはお客様を裏切ってしまう行為になってしまうと判断をし、今回の企業買収に真っ向勝負しています。

決着が着くのは6月25日の株主総会で、そこでの判決が大戸屋の未来を決める大事な局面です。コロワイドはすでに20%の株を持っているので残り30%の賛成が得られたら今回の買収は成立になります。

いよいよ株主総会当日になり、株主からの賛同が得られなかったためコロワイドの株主提案は否決されました。いわゆる買収不成立に終わったのです。

しかし、コロワイドも生き残りを賭けた買収のためここで引き下がりませんでした。大戸屋の株主総会から数日後の6月30日にコロワイドも株主総会かを行いました。マスコミには非公開でしたがガイアの夜明けでは音声データを入手しておりそれが報じられてました。そこには蔵人社長の厳しいコメントが録音されていました。

セントラルキッチンが良い
セントラルキッチンが良いとなんべんも言ってました
工場で作ろうが店舗で作ろうが
安全で安心でおいしくてそれ相応の価格ならどこで作ろうと変わらない
ただ早く出なければサービス業としてダメ
店舗調理なんてやってたら日が暮れちゃうよ
僕は大戸屋さんを買う前からたまに行ってね 
でも出てくるのが遅い
話にならんのですよ
うちなら倒産するね
M&A(買収)は優勝劣敗

そして株主総会9日後の7月9日にTOB(株式公開買い付け)することを発表いたしました。それを受けた大戸屋は7月17日に再度メディアを集めて記者会見を開き、従業員代表の方が強引な子会社化に反対を訴えました。

しかし、その訴えも叶わず9月8日TOBが成立し、コロワイドは大戸屋の株を47%保有したことで買収成立しました。

これにて日本の外食業界で成功例がない敵対的買収劇の幕が閉じたのです。
(しかし、この買収劇にはまだ裏がありました。そもそもコロワイドがなぜ大戸屋の株20%を持っているのでしょうか。気になった方は最後までご覧いただければと思います。)

1.コロワイドの考えつくされた買収戦略

この買収劇は決して運が良かったから成立したのではなく、すべては今まで買収をしてきて培ったノウハウや戦略などがあったから成立したのだと思います。株主提案をした時点からTOBはおそらく考えていたと感じます。

TOBとは、本来株式は市場を通して行いますが、市場を通さず直接株式から広く株を買い集める方法です。コロワイドが提示した価格は1株あたり3,018円で、大戸屋の前日の終値である2,113円の約1.5倍という破格の設定をしてきました。

実はこの数字にはコロワイドの戦略が隠されていました。3,018円という価格はこの10数年で株を買った人が全員儲かる価格帯でした。また、TOBを発表してから大戸屋の株を買ってそれをコロワイドに高く買ってもらい利益を出す投資家も現れました。

ガイアでは専門家のコメントも取り上げられていました。

コロワイド自身がM&Aを繰り返して大きくなってきた
“外食日本一“を目指すそのために「定食」というラインを持つ
並々ならぬ覚悟と決意と資金力

2.番組の切り取り方(過去の大戸屋の話も含めて)

広報やPRをしている人は一度は聞いたことがある”ガイア砲”

大戸屋に関してはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。2019年12月10日のガイアの夜明けでは『残業を減らす!45時間の壁』というテーマで大戸屋を120日間密着取材していました。しかし、放送後ネットでは「ただのブラック企業」「社長がパワハラ」と炎上してしまいました。一部では密着といいながら社員の暴露ではないのかと憶測も飛び交いました。

そして今回は約6ヶ月間の密着でしたが、大戸屋の炎上はなく、むしろコロワイドが少し炎上したような気がします。しかし、今回の密着は大戸屋が望んでいなかったことに過ぎません。正直、視聴者としては勉強にもなるので「取材してくれてありがとうございます」と思うのですが、大戸屋からすると本当に取り上げられてよかったのかと思ってしまいます。

このように実際の取り上げられ方は予想していものを超えてくるケースがとても多く見られます。だから冒頭でも言ったようにガイアの夜明けの出るのはリスクがあります。もちろんガイアの夜明けもジャーナリズム精神を持って放送してますし、精神誠意に企業も密着に応じているのもわかるのですがテレビというものは不思議です。テレビで報じられるのはごく一部で、視聴者はそれを鵜呑みにします。もう少し落ち着いてその余白で何が起きて関わる全ての人の汗と涙の結晶を汲んでくれたらもっと世界は生きやすいのではないでしょうか。

3.大戸屋とコロワイドの映り方

結論として、大戸屋とコロワイドの映り方は真逆だったと言えます。

SNSの投稿では、今回のコロワイドの強引な買収や蔵人社長の発言に火が少し燃えていました。確かにあの音声データの発言は大戸屋の社員、株主以前に飲食店を利用するお客様目線が欠けています。もちろん、クローズドな場所での発言なので致し方ない部分はありますが、それが公開されてはそういう言い訳がつかないのが世の中です。もう少し誠意を持った買収はできなかったのでしょうか。これだと完全に悪役になっていて、更にイメージが悪くなる一方な気がします。

買収の戦略はたしかにビジネスマンとして勉強にはなるのですが、人としての観点でいうとコロワイドが提供している飲食店には行きたくないと思ってしまいました。しかしこれも不思議なことで牛角や温野菜はいつも行っていたのでこの発言や今回の放送だけで行かないと断言はできません。おそらく蔵人社長は飲食店に罪はないという生活者の心の声をわかっているのでここまで強気になれるのでしょう。

一方、大戸屋にネガティブなコメントは少なかったです。むしろ店内調理を諦めなかった姿勢や大戸屋の食への愛情が感じられるという前向きなコメントが多かったです。確かに今回の放送で大戸屋の企業姿勢が生活者に伝わるいい機会だったのですが、それが今後新しくなる大戸屋とギャップがあれば生活者は離れていく危険性もあります。また、大戸屋のお家騒動の投稿が多くあり、やはり長男に対する内容ばかりでした。

4.今後の企業買収について

現在はコロナ禍で様々な業界が経営悪化に陥っています。最近の話題でいうと、外食チェーン店のワタミが120店舗を非接触型の焼肉店に転換することを発表し話題になっていました。特に飲食店の経営は今後大きく変わっていくことが予想されます。今回のコロワイドの件もコロナが後押しした事例になります。ガイアの夜明けでは今後の買収について専門家もコメントをしています。

この新型コロナの影響でこのような買収劇は増えると思われる
新型コロナで外食はどこもきつい
業績悪化・株安の局面を受けてM&A(買収)を仕掛け
来たるべきいい時代にもっと会社を大きくする
そういうM&Aはこの先も続く
起こりやすい

さらに「非接触」「テイクアウト」「オンライン販売」などができる技術に注目する大手外食チェーン店も増えてくるでしょう。そんなとき、子会社化の相談や業務提携などが今以上に増えてきます。そのときにすぐに対応できる広報はかなり市場価値が高いと思います。私もまだ勉強中ですが、そういったところも今後学んでいきたいと思います。

5.ガイアの夜明けに必要な素材

今回の放送で使用された場面をまとめてみました。企画提案にする際に参考にしてください。※あくまで個人的な意見ですのでご理解いただけますと幸いです。

大戸屋の現状(店内でお客様が食べている画・店内調理の画・売上データ)

コロワイドからの株主提案(記者会見、株主総会の画・株主のコメント)

創業者の想い(回想)

仕事風景(試食している画、社長のコメント)

専門家コメント

TOB成立後の大戸屋(成立後の社長コメント、社内の引き継ぎの画)

お家騒動(買収のキーパーソンのコメント)

ざっくり流れはこんな感じでした。最後のお家騒動の話は結構ディープなので実際にご覧いただければと思います。

テレビの中でも圧倒的に画の数が必要なのがガイアの夜明けです。今回は1時間だったのですが普通は3社くらい分けて1つの共通するテーマについて紹介します。今回分けても6つくらいの画に分かれると思います。ちょっと簡単に説明します。

大戸屋の現状(店内でお客様が食べている画・店内調理の画・売上データ)
→企業紹介の際はだいたい冒頭で現状整理をするのが多いので、これは事前にまとめておいたほうがいいと思います。特に売上は公開できる範囲だとは思いますが重要です。今までは順調に推移してきた数字がコロナで落ちてきたので挽回策として新たな新規事業を始めましたというストーリーは報道番組だと主流です。

コロワイドからの株主提案(記者会見、株主総会の画・株主のコメント)
→今回のメインの画になるところですね。密着なのでこちらで準備というよりかは開催することが決まったときにガイアの夜明けが取材をするとは思うのですが、事前に企画提案するときに新サービスの発表会など控えているならそれを先に情報を出したほうがいいと思います。ガイアの夜明けは密着という言葉に弱いです。

創業者の想い(回想)
→これは大戸屋の考え方について説得力を持たせるために今回は使用されていました。店内調理は創業者からの受け継いでいる大戸屋らしさであるという点により深みをもたせる演出でした。あとはおそらく最後のお家騒動も関わるので創業者の映像は先に出しとこうという流れだったのではないでしょうか。

仕事風景(試食している画、社長のコメント)
→こちらも大戸屋の考え方について説得力を持たせるための画だったとは思いますが、その他にも窪田社長が自ら試食をしていたり窪田社長がどのような思いで仕事をしているのかを伝えることで企業姿勢が理解できます。一石三鳥くらいの画だったと思います。ガイアの夜明けでは社長のコメントは殆どの確率で必要なのでしっかりメディトレーニングをしておくといいです。

専門家コメント
→今回の出演はおそらくガイアの夜明け側が準備したと思いますが、専門家起用はとても大事です。テレビでは特に専門家起用の企画提案は通りやすい印象があります。1つ注意なのは社内外の専門家が有効的です。どうしても社内だと専門家という考えから少し離れてしまいます。(番組内では専門家リストみたいなのもあるのでそこに入れたらラッキーですね。)

TOB成立後の大戸屋(成立後の社長コメント、社内の引き継ぎの画)
→山を超えたあとの企業の動向についての画になります。例えば最初サービスを作り上げる上で順調に進んでいたのですが突然パートナー企業が倒産するというピンチに陥ったがなんとか諦めずにピンチを乗り切りました。その後サービス公開後に大手販売店から契約したいとご連絡があったというのがあればその契約のタイミングをガイアの夜明けに取材機会として提供するのがいいと思います。ただ、その前のサービス開始から密着して貰う必要があるので、そこが少し難しいところではあります。

お家騒動(買収のキーパーソンのコメント)
→これは完全に独立している画でしたけど、すべての始まりの画でもありました。私的にはこういう出し方はガイアの夜明けっぽいなと勝手に思っていたのですが、最後に切り札を残しておくのはガイアの夜明けの企画を組む上での考え方だと思います。今回でいうとそもそもなぜ大戸屋の株20%をコロワイドが持っていたかと疑問に思うはずです。しかし、それを最後しっかりと伏線回収するいわばドラマ仕立てにするのが本当にガイアの夜明けは上手いんです!ここは企画を構成する上での話なので提案する際にそれを考慮した形で話すと好感持ってもらえるかもです。

最後に

今回もかなり文字量が多く見づらいかもしれませんが、最後に1つだけ言いたいことがあります。

ぜひ、ガイアの夜明け観てください

かなり面白い企業を先取りしていたり、今回のような勉強になる買収劇を丁寧に説明してくれています。

今回は私の独自視点がかなり多くて学びが少なくて恐縮ですが、少しでもなにかの参考になっていたら嬉しいです。ぜひ感想きかせください。

現在朝の6時…もうかれこれ2時間ぶっ通しで書いてます。
そろそろ出社の時間ですね。笑

かずち

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