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【モノローグ】カフカとマカロニ

  似ている、似ていない、同じ、違う、複製、文字どおりに取る、文字どおりに取らない、人のつくるものは人に似ている、人のつくるものに人は似ていく、鏡――。こうしたテーマについてのモノローグです。

 以下の記事からつくった記事です。

 本記事は「【レトリック詞】であって、でない」という戯れ言を書いた記事に似ていますが、戯れ言のつもりで書いたものではありません。本気で書きました。正気かどうかは不明ですが。


判断を自分のつくった外部の物に委託する人


 人には「似ている」「似ていない」しか分からない。
 人には「似ている」「似ていない」しか分けられない。

「同じ」「違う」の判断は、人に代わって、道具や器械や機械や複製がする。
「似ている」「似ていない」の世界に住む人は、「同じ」「違う」の判断を、自分の外部に委託する。

     *

*はかる・置き換える・見る・見える化・視覚化。

 秤(アナログ式・デジタル式)、物差し(アナログ式・デジタル式)、時計(アナログ式・デジタル式)、温度計((アナログ式・デジタル式)、計算機、写真、レントゲン、千里眼、顕微鏡(光学式・電子式)、望遠鏡(光学式・電波式)、MRI、CT。

 文字・数字・記号・しるし、言葉(音声、表情、身振り)、絵、遠近法、地図、世界地図、地球儀、年表。

     *

*代理・代行・遠隔操作。

 放送、報道、電話、電報、通信、孫の手、隔靴掻痒、念力、遠隔医療。

     *

*身代わり・代理・鏡・分身・擬人・呪術。

 道具、人形、キャラクター、アバター、人工○○、人造○○、物語、小説、演劇、映画、漫画、アニメ、ロボット、人身御供、生け贄、サイボーグ、仮想現実、人工知能、生成AI。

     *

 "カフカ"と"カフカ"は「似ている」。
 "カフカ"と"カフカ"は「同じ」。

 "カフカ"は文字。
 文字は、人のつくった複製。

 文字は複製だから、人は自信をもって「似ている」を「同じ」だと言える。

     

 複製である文字は、人を自分が「同じ」「違う」の世界に住んでいると錯覚させる。
 複製としてしか存在できない文字は、人のつくった頑固な錯覚製造装置。

 
人は錯覚を忘れるか、錯覚に気づかない。
 人であることは錯覚を生きること。

 夢に気づけば夢がなくなるように、錯覚に気づけば錯覚がなくなるわけではないもよう。
 錯覚は最期まで覚めない最強の夢。

     *

 "カフカ"と"力フ力"(「力」は漢字の「ちから」)は「似ている」。
 "カフカ"と"力フ力"(「力」は漢字の「ちから」)は「違う」らしい。

 "カフカ"と"力フ力"(「力」は漢字の「ちから」)は文字。
 文字は、人のつくった複製。

 文字は複製だからといって、人は自信をもって「似ている」を「違う」と言えるわけではない。

「似ている」「似ていない」の世界に住む人は、「同じ」「違う」の判断を、自分の外部に委託する。

「似ている」「似ていない」の世界に住む人は、自分の外部に委託した「同じ」「違う」の判断を、「似ている」「似ていない」の世界で判断しなければならない。

「同じ」「違う」の判断を検索エンジンに任せる


 たとえば、"カフカ"を"力フ力"としても、機械はちゃんと「違う」と判断してくれます。

・"カフカ"
 約 7,870,000 件 (0.39 秒)
・"力フ力"
 約 811 件 (0.25 秒)
(「力」は「ちから」の漢字です。)

 たとえ、"マカロニ"を"マ力口二"としても、ちゃんと見破ってくれるでしょう。

・"マカロニ"
 約 18,000,000 件 (0.34 秒)
・"マ力口二"(「マ」以外は漢字です。)
 約 11,800 件 (0.31 秒)
 もしかして: "マチカラ口二"

カフカとマカロニ


 "カフカ"と"力フ力"は、「似ている」。
 "カフカ"と"力フ力"は、「そっくり」。
 "カフカ"と"力フ力"は、たぶん「同じ」……。

 "マカロニ"と"マ力口二"は、「似ている」。
 "マカロニ"と"マ力口二"は、「そっくり」。
 "マカロニ"と"マ力口二"は、たぶん「同じ」……。

文字列と、文字列ではないもの


 あやまる(文字列)とあやまる(文字列)は似ている。
 あやまる(文字列)とあやまる(文字列)は同じ。

 あやまる(文字列ではないもの)とあやまる(文字列ではないもの)は、たぶん違う、たぶん同じ。
 あやまる(文字列も、文字列ではないものも)とあやまる(文字列も、文字列ではないものも)は、人がつくったもの。

 人は、文字列と文字列ではないもののあいだで、ゆれる、ふれる、ぶれる。
 人のつくった機械は、文字列と文字列ではないもののあいだで、ゆれない、ふれない、ぶれない。

     *

 目の前にあるものを文字として見ないことから、すべての学問は始まる。
 目の前にあるものを文字( letter )として見ることから、文学( letters )が始まる。

 目の前にあるものを文字として見ないのが、大多数の人間。
 目の前にあるものを文字として見るのが、機械と一部の人間。ただし、両者の見方はおおきく異なる。

     *

 人には、人のつくったものが、分からないし、分けられない。
 人には、人のつくったものの判断を、外部に委託しても、分からないし、分けられない。

あやまっても、あやまらない


 あやまっても、あやまらない。
 誤っても、謝らない。
 謝っても、誤らない。

 あやまっても、きづかない。
 誤っても、気づかない。
 謝っても、気づかない。

 あやまっても、しらない。
 誤っても、知らない。
 謝っても、知らない。

 あやまっても、分からないし、分けられない。
 誤っても、分からないし、分けられない。
 謝っても、分からないし、分けられない。

憧れる、崇め奉り、ひれ伏す


 機械は、あやまっても、あやまらない。
 人には、あやまっても、あやまらないものがいる。

 人は、あやまっても、あやまらないものに、憧れる。
 人は、あやまっても、あやまらないものを、崇め奉り、それにひれ伏す。

     

 文字は、人が外部につくる複製。
 外部にあるから、共有できる。

 文字は、固定し、増やし、広め、残し、伝えるためにつくられる。
 何を固定し、増やし、広め、残し、伝えているのかは、おそらく人には分かっていない。

 ただ文字と文字列と文書がある。これだけは確か。
 文字と文字列と文書は、あやまっても、あやまらない者たちに利用される。これも確か。

 ありとあらゆるものが最終的には文字にされる。

 経典、聖典、法典、百科事典、辞典、史書、法螺話、夢物語、寝言、年表、文学全集、公文書、私文書、契約書、誓約書、条約、約款、メモ・覚え書き、落書き。

似ている、似ていく


 人のつくるものは人に似ている。
 人のつくるものに人は似ていく。

 絵、人形、キャラクター、アバター、人工○○、人造○○、物語、小説、演劇、映画、漫画、アニメ、ロボット、サイボーグ、仮想現実、人工知能、生成AI。

似ている、真似ている、違う、間違う


 似ている、真似ている。
 違う、間違う。

「似ている」と「真似ている」は「似ている」。
「似ている」と「真似ている」は似ていない。
「似ている」と「真似ている」は違う。

「違う」と「間違う」は「違う」。
「違う」と「間違う」は「似ている」。
「違う」と「間違う」は「似ていない」。

人間の機械化、機械の人間化


 人のつくるものは人に似ている。
 人のつくるものに人は似ていく。

     *

 人間の機械化。機械の人間化。
 人間の人形化。人形の人間化。
 人間の道具化。道具の人間化。
 
 人間の言葉化。言葉の人間化。
 人間の文字化。文字の人間化。

 人のつくるものは、どんどん人に似ていく。
 人のつくるものに、人はどんどん似ていく。

     *

 人のつくるものは、ここにあってここにはない。
 人のつくるものは、鏡の向こうにしか見えない。

 そもそも人は自分さえが見えない。
 そもそも人は鏡のなかを覗きこむしかない。

片想い、ひとりずもう


 人は人のつくるものに憧れている。
 鏡の前での片想い。
 鏡の向こうに見える姿への熱い想い。

 人は人のつくるものを崇めたてまつり、それにひれ伏す。
 鏡の前でのひとりずもう。
 鏡の向こうに見える振りへの盲信と敗北。

うつる、うつす


 映る、映す、写る、写す。移る、移す。

 ここが向こうに映る、ここを向こうに映す。
 ここを向こうに写す、ここが向こうに写る。

 決して向こうへは移れない、決して向こうは移せない。

 映す・写すは、移す・移るの代償行動。
 この代償行動には代償がともなうはず。

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