積極財政の政権を実現する方法を選挙結果から考察する~緊縮財政の自民党ではなく、「金を出す自民党」が必要だ~

 今回は日本で積極財政の政権を実現する方法を現行の選挙制度やその結果、傾向を踏まえて考察して行きたい。
 端的に言えば、自公政権で積極財政を主張する総理大臣が誕生すれば早い話だが、しかし仮に誕生したところで、自民党内の緊縮財政派の国会議員や財務官僚に邪魔されて、積極財政は骨抜きにされてしまうであろう。なので、私は既存の「自公政権」という枠組みでは、もはや積極財政の政権は見込めないのではないかと考える。
 一方で、では野党政権を樹立すれば良いかと言えば、これに関しては絶望的なまで現実的ではない。残念ながら既存の立憲民主党では到底、自公政権を倒し得る存在にはなれないであろう。それよりも、まだ日本維新の会の方が自民党に代わって政権担当になる可能性は高いように思える。理由は小選挙区で自民党支持層にも食い込むことが出来るからだ。かと言って、維新政権では「身を切る改革」と称して、今の自民党政権以上に、緊縮財政になることが危惧されるので、やはり積極財政の政権は樹立し得ない。

 積極財政と言えば、れいわ新選組があるじゃないかと言われるかもしれないが、現時点では残念ながら立憲民主党よりも左側の政党と見られているので、尚更、小選挙区で自民党に勝つことは難しい。仮に野党共闘で統一候補になったとしても、小選挙区当選はかなり厳しいと言わざるを得ないのが、客観的な評価である。
 というわけで、日本はもう詰んでいるのが現状である。コアコアCPIでインフレ率2%目標も達成できず、ずっとデフレ・低インフレのまま、国民は貧窮化して行くだろう。積極財政を主張する経済政策アナリストとして、身も蓋もない結論となってしまって申し訳ない。
 しかし、私には政治評論家、選挙アナリストというもう1つの顔もあるので、その選挙の観点から、緊縮財政の自公政権を変える方法を編み出してみたいと思う。

 まず、現在の日本における選挙結果の特徴について言及しておこう。必ずしもこの通りになるわけではないが、概ねこのような傾向があると言える。

・投票率は概ね50~60%
・5000万人〜6000万人が選挙に行く
・うち3〜4割弱が比例区では自民党に投票
・自民党の比例区の得票数は2000万票前後
・公明党の比例区の得票数は700万票前後
・小選挙区で自公の候補者は計3000万票弱取る
・公明党の議席は衆参各30議席ずつ
・衆議院の小選挙区にて自公は200議席程度取る(200勝)
・比例区では自民党は70議席前後、公明党は20議席強で、両党で比例議席の過半数を占める
・小選挙区で勝てる以上、自公政権は恒久的に安泰

 と、このような傾向が伺える。2009年の民主党政権時には投票率を69%まで引き上げ、普段は選挙には行かなかった無党派層を味方について大勝することが出来たが、現在のように野党が乱立しているような状況下においては、そうした旋風によって政権交代を果たすのは現実的で無いように思える。やれるとしても、それは立憲民主党ではなく、日本維新の会の方になるであろう。
 以上のような積極財政派からすれば、非常に厳しい傾向が過去の選挙結果からは伺うことが出来る。では、どのようにすれば良いのだろうか。

 私自身の非常に端的な解答とすれば、やはり「自民党支持層から票を取れる積極財政の政党」が必要だということになる。自民党2000万票は、もはや岩盤なような堅さではあるが、これを少しでも削り取れる政党があれば良いと言うのが私の考えだ。
 はっきり言って、別に小選挙区で自民党候補者に勝てなくても良い。小選挙区で勝つのは立憲民主党の候補者でも、もっと言えば日本維新の会の候補者だって構わないと割り切る。比例区では自公で90議席は取るので、自公を過半数割れの合計230議席以下に抑えるには、差し引き自公の小選挙区での勝利を140勝以下にすることが求められるのである。現状は200勝するのが自公政権であるから、あと60勝、他の政党に勝ってもらう必要性がある。
 このように自公を過半数割れに追い込むのが大前提で、そして過半数割れに追い込んだところで、連立政権のパートナーとして、「金を出す自民党」をコンセプトとした政党を選んでもらえれば、積極財政が実現する運びとはなる。無論、大幅に自公が減った場合、小選挙区の勝利で議席を増やした維新が選ばれて、より一層、新自由主義的な改革が進んでしまうデメリットもあるので、ギリギリの線の戦いでもあると言えよう。

 さて、自民党支持層から票を取れる、積極財政の自民党はどのように選挙を戦えば良いのだろうか。それに関しては、先月記事に書いた通りである。
反緊縮保守の政治団体を国政政党にする必勝法~お金と選挙戦略で必ず国政政党化はできる!~
https://note.com/researcherm/n/ncbb642342014

 まず初めに、選挙資金として2億円以上のお金が必要である。この第一歩だけで、ほぼ躓いてしまうので、それだけで現行の選挙制度下では高過ぎるハードルである。次に参戦するのは参議院議員選挙の方で、全45選挙区に候補者を擁立することである。なので、45選挙区で出馬してくれる人を募集しなければならない。都市部では希望者が居ても地方ではなかなか苦労するかもしれない。逆にこの2点さえ満たせば、選挙区での得票率2%の達成は比較的容易なハードルと言えよう。次は比例区で1議席獲得するか、どこからか国会議員を1人スカウトして来ることになる。
 この選挙区で2%+国会議員1人で晴れて国政政党化することが出来る。また国政政党化すると1票につき毎年約40円が政党助成金として手に入るので、仮に政治団体として戦った参議院選挙で、選挙区100万票×40円=4000万円、比例区100万票×40円=4000万円、議員割160億円÷715人=2230万円とすると、年間合計1億円以上もの政党助成金を得ることが出来る。

 その政党助成金を元手に次に迎えるは衆議院議員総選挙になるが、小選挙区だと300万円、比例区と重複立候補だと600万円かかる。全国で11ブロックあることを考えると、最低6600万円は必要だ。本当に日本の選挙はお金が高過ぎる。もはや被選挙権行使の憲法違反ではないかと言いたくなる高さである。
 そういう中で仮にお金が満たせたとしよう。その時には、候補者はずばり「緊縮財政派の自民党議員の選挙区」に刺客として擁立するのがセオリーである。そこで金を出さない自民党現職と、金を出す自民党新人(反緊縮保守の政党)どちらにしますかと問えば良い。自民党とは違うだろとツッコまれるかもしれないが、反緊縮保守政党の基本的なコンセプトは「金を出す自民党」である。だから、外交安全保障政策などは自民党と一緒で良いのである(私自身の考えは少し異なるが)。その上で違いは、金を出すか出さないかを争点とすべきなのである。

 このようにして、財政出動の部分以外はガッツリ自民党に寄せて、自民党支持層から、自民党緊縮財政派の候補者の票を削り取って行くのが、この反緊縮保守政党の大きな狙いなのである。そして、自民党の緊縮財政派の議員を小選挙区落選、ひいては完全落選にまで持って行ければ、自民党内での緊縮財政派の勢力も弱まるのである。逆に、自民党の積極財政派の小選挙区に関しては候補者を送らず、推薦を送るなど応援をしても良い。
 これで、先ほど述べたように自公の小選挙区での勝利を140勝以下に抑えることである。あとは、自民党の緊縮財政派の選挙区に、供託金300万円(比例重複しない場合)を払って、どれだけ候補者を擁立できるかの勝負になる。加えて、反緊縮保守政党で、比例区で数議席取れれば、過半数割れした自公との連立政権協議に入ることも可能になる。

 以上が積極財政の政治評論家が考える、積極財政の政権を樹立するまでの選挙プロセスである。さすがに、今年の参議院選挙には間に合わないので、早ければ2025年の参議院議員選挙から、2026年~2027年に行われるであろう次々回衆議院選挙で、この目的を達成することは、理屈上は可能だ。早ければ4~5年で積極財政を達成出来る算段である。
 というわけで、この「金を出す自民党」をコンセプトにした反緊縮保守の政治団体を設立して、この戦略のアイデアで、選挙を戦ってくれるお金持ちの方はどなたかいないでしょうか。日本経済を一刻も早く経済成長の軌道に乗せるためにも、総額2億円以上を出資して下さる方々を募って行きたい限りである。

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