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本決算は株価が荒れる。

一次情報と二次情報の間にある深い溝。

 2月に決算を迎えた銘柄の決算短信が続々と公表されている。来月の今頃は上場企業の大半を占める3月期決算の発表があるため、株式市場の相場はその内容によって、売買が活発となり、ボラティリティーも高くなり、何かと荒れがちであるが、それが金儲けに繋がる人もいる。

 2月期決算の上場企業は、ある種3月期に向けての予行演習的な要素があり、個人的にはウォーミングアップにちょうどいいと思い嫌いではない。某名古屋発の珈琲所銘柄は、決算発表で増益増配と、会社四季報予想を覆して最高値を記録する、四季報相場から見たサプライズ決算となった。

 BSテレ東「マネーのまなび」3月30日放送分では、投資の情報収集で、巷の人たちは何を参考にしているのかが取り上げられていて、二次情報ばかりが情報源として重宝されており、あまり一次情報が活用されていないところに、世間とのギャップを感じた次第である。

 YouTubeやSNS、情報サイト、新聞、テレビ、情報誌、書籍。これらは全て二次情報であり、一次情報を取得した誰かが、他者に対して分かりやすく噛み砕いた情報であり、ソースの信憑性や正確性を見極める力を、個人で身に付けていなければならない。

 溢れんばかりの情報が蔓延る現代社会においては、自分自身にとって有益な情報を取捨選択するだけでも相当、骨が折れる作業のように感じてしまうだけでなく、マスメディアに取り上げられて拡散された情報ほど、みんなが知っている情報であり、自分が良いと思う時には、既に相場に織り込まれている可能性が高く、そこを出し抜いて利益を得るのは、同じことを考える人がゴマンと居るため難易度は高い。

 だから私は、誰かが体系的にまとめてくれた二次情報は、発信者や世間はこう考えているのだと、大衆とは感性がズレている自分自身とのギャップを認識して、世間一般の考え方や物事の捉え方を知るために活用することが大半で、二次情報だけを元に投資判断を下す事はなく、やはり、そこにはギャップを感じる。

二次情報の発信者を見極める難しさ。

 そもそも論、二次情報を発信している人たちは、本当に経済や会計の知識に長けていて、投資経験も豊富なのかと言えば、どちらか一方が満たせていない可能性が高いと私は考える。

 経済や会計の知識に長けている人は、何とかアナリストや新聞記者を生業にしており、担当する企業の一次情報を仕事の一環として収集するから、個人投資家には叶わないような、社長や重役との取材も企業のネームバリューで許されたりする。

 こうした一次情報を、マスメディアを通じて二次情報として発信する立場の人たちは、大衆よりも、企業や経済の動向を一歩早い段階で入手できてしまう職業柄、インサイダー取引の恐れがあり、業務の範囲で熟知している銘柄は取引できないのが常である。

 つまり、株式投資をやってない人たちが、尤もらしく発信している情報を、我々大衆はありがたがって収集しているわけである。世間では目立たない優良企業にスポットライトを当てる意味では絶大な効力を発揮するものの、投資情報として有益かは別問題ではないだろうか。

 もう一方の、投資経験が豊富で、億トレーダーなどで持て囃される方たちは、投資に関する経験は抜群だが、投資手法は人によってバラバラだし、大抵の場合は世間一般の人が真似できないような、クセの強いやり方な傾向にある。

 考えてみれば当然の話で、人並みの行動をしていたら、人並みの結果にしかならないのだから、桁違いの資産を築きあげた以上、他人とは違う何かを行っている可能性が高く、そこに再現性があるかも定かではない。

 故に経験則を引き出したところで参考にならなかったり、マネできるかも定かでないだけでなく、時の運も必要だったりする。それにカリスマ投資家の全員が、経済や会計の知識が豊富とは限らず、情報が定量的なものなのか、定性的なものなのかを見極める力は、受け取り手に委ねられる。

 そう考えると、二次情報はエンタメのように娯楽として消化するくらいの温度感がちょうど良いのではないかと個人的には思う。身銭を切って投資をする以上、判断材料は一次情報を元にした方が、予想と外れたとしても、どこで間違えたのかを後で把握しやすく、フィードバックが累積して、情報収集の精度が向上するように思えるからだ。

 誰かの色眼鏡という名のバイアスが生じている二次情報から学びを得るのは、フィルターを排除した上で精査しなければならない分、手間が掛かるため検証しづらく、結果として学びづらい。

情報リテラシーよりも、アンテナの感度。

 一次情報と聞くと、企業のIR情報ばかりに注目しがちだが、自分自身が普段営んでいる、何気ない日常生活での気づきも立派な一次情報である。と言うよりも、個人的には後者をもとにした、ある種の直感的な投資判断の方がパフォーマンスが高かったりする。

 入れ替わりの激しい飲食店や小売店の激戦区で、最も旬な店舗や、老舗はどこか。他店とは何が違い、競合他社が追従や真似できる芸当なのか。できなければ競争優位性が高いことになる。

 都内某所で散歩をしていると、学生の学校指定ではないリュックサックや手提げバッグで、一人勝ちしているブランドがあることに気付き、流行の兆しを察知しては、収集前の缶ゴミから、アルコール飲料会社のシェアや、消費性向を察知する。日常に忙殺されて、気にも留めていないだけで、一次情報は日常にいくらでも転がっている。それをどう味付けするかは自分次第である。

 冒頭に出たきりで、すでに忘れ去られているかも知れないが、伏線回収をすると、某名古屋発の珈琲所銘柄は、会社四季報の23年2集で会社比弱気となっていた。

 しかし、本決算は四季報予想を覆す内容だったため、四季報相場から一変して急騰した。街中の店舗で株主優待を消化する傍ら、同じ地域の競合店と比べた空席の少なさや、客単価並びに利益率の高さ。利益構造の違いなどを鑑みて、四季報予想よりも会社予想寄りの決算になると判断して持ち越した次第である。

 情報収集や精査する能力は、1日の情報量が江戸時代の1日分に匹敵する現代ではとても大切だが、それ以上にアンテナの感度が大切ではないだろうか。

 実体験をもとに一次情報を蓄積させ、知識と結び付け、仮説を立てて検証を繰り返す過程が、誰にも真似できない独自の投資手法や、優位性を生み出す源泉となる気がしてならない。


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