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伸るか反るか。

中古市場が好調らしいが...

 昨今の疫病や戦争の影響に伴い、グローバル社会の前提が覆り、サプライチェーンが崩壊するなど、ブロック経済を連想させる世界情勢となっている今日このごろである。

 その影響から、テレビを所有していない私ですら、銭湯の休憩室などで中古市場の特集が組まれているのを目にした。

 世間では賃上げの伴わない物価上昇、すなわちスタグフレーションが加速した影響で可処分所得が減少し、生活苦から出費を出来るだけ安く抑えたい需要が高まっていること。一方の市場側も、半導体不足で新製品の入荷に遅れが出ており、中央線のグリーン車導入が遅れているのも半導体の影響と聞いている。

 人によっては生活必需品で、かつ重要度の高いスマホ、パソコン、エアコン、車の供給がままならい状況で、店頭で買えなかったり、入荷するまで待たされては溜まったものではない。

 連日の猛暑でエアコンが壊れたなどの、四の五の言ってられない状況で、新品を買えるだけのお金を持っていようとも、市場に新品が出回っておらず、すぐさま買えないのだから、たとえ中古品が高くても買わざるを得ないのが正直なところだろう。

 そんな状況下で、これまで見向きもされず、割安なまま放置されていたような、中古市場を扱う銘柄の業績が好調となる期待から、中古市場関連銘柄の株価も上昇傾向にある。

 しかし私は、このタイミングで中古市場を扱う銘柄を手放した。それはケネディ大統領の父である、ジョーの実体験である靴磨きの少年を彷彿とさせる状態だからである。

靴磨きの少年から学ぶ。

 巨万の富を築いた投資家であるジョーは、少年に靴を磨いて貰っている時に、この株が儲かると言われたらしい。ジョーは靴磨きで小銭を稼ぐような、投資とは無縁な少年でさえ知っている話=周知の事実で市場はバブルと化している。流行の終わりが近いと判断し、保有銘柄を売却した。その後、世界恐慌の元凶となった暗黒の木曜日を回避した話である。

 テレビの特集で中古市場がアツいなどと大々的に報じられれば、多くの人は安直に、中古市場に関連する銘柄を保有しておけば、来年の決算が好調で、ひょっとしたら増配やキャピタル・ゲインの恩恵を受けられるかも知れないと考えることだろう。

 そうした期待が膨らむと、買い手が増えて株価は上昇する。チャートが右肩上がりなのを見ると、先送りしたらもっと高値になっているかも知れないと、今すぐ買おうとする人が殺到する。そしてまた株価が釣り上がる。

 こうして、人々の期待値が実態以上に膨らむとバブルとなり、何かの拍子でバブルが弾けるその時まで、壮大なババ抜きが展開されるのはチューリップ・バブルの歴史を見れば明白である。

 今、まさに中古市場がその状態ではないかと思っている。そもそも中古市場というのは、市場に新品が出回ることで商品となる中古品が流通するのであって、新品が大して出回っていない現在は、過去にストックしていた中古品を捌いて売上が出ているに過ぎない。

 新品と中古市場とで、在庫状況にタイムラグがあることで、ストックした中古品が捌いている今は業績が好調だが、中古市場も時間の問題で在庫がなくなる。そうなると回転率が悪化し、売上高が計上されなくなる。更に新品が出回るようになれば、その反動で中古市場が再び下火になると、中古品バブルは崩壊すると言うのが私の推察である。

 実際に連続増配株ナンバー2の座にいて、中古車を取り扱うUSS(4732)を保有していたが、7月に発表されたオークション実績の速報で、売上高は増加しているが、販売台数が減少していたため、弾切れでそろそろ天井だと判断し、第一四半期決算短信を待たずに売却したところ、予想通り決算短信の失望売りによって10%下落した。

 他の銘柄は決算短信で好調のため、更に株価が上がっているが、時間の問題でUSS(4732)のような状態になると踏んでいるため、落ち着くまではポジションを解消して、中古関連銘柄は保有しない方針である。

半導体不足は解消しつつある。

 それに、半導体不足が叫ばれて久しいが、既にモノによっては供給量が充足しつつある。

 2022年6月時点で、スマホ、PC、家電向け半導体は供給過剰となっていることから、今年の猛暑さえ乗り切れば、エアコンも無理して割高な時期に買い換える必要がないだろうし、9月に発表されるであろう新型iPhoneも例年通り供給されるだろう。

 現に日経225ならぬ、日経5と揶揄される銘柄のひとつである、東京エレクトロン(8035)は世界4位の半導体製造装置メーカーだが、供給過剰になりつつある半導体需要の先行きを懸念する動きから株価が続落している状況で、半導体の流行りに乗っかった投資家は今頃、冷水を浴びせられていることだろう。

 今回は半導体と中古市場にフォーカスしたが、増配ラッシュで盛り上がっている海運銘柄も、戦争が落ち着いてサプライチェーンが正常化する未来を想定すると、同じ様な結末を迎えるのではないかと思いながら傍観に徹している。

 本当に海運に将来性があるのであれば、配当利回り10%超の状態が放置されることはなく、もっと買い手が集まって、高配当であっても3〜4%の水準に落ち着く筈で、配当利回り10%超のまま放置されているということは、上記のような隠然たるリスクがあるかも知れない。

 尤も、未来の株価がどうなるかは全くもって予想が付かないため、参考にするのも無視を決め込むのも読者次第である。大切なのは、表向きの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて将来のシナリオを予測し、トライアンドエラーを繰り返す過程で学び、限られた情報の中で確度の高い推察力を身につけることなのだから。


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