見出し画像

お金の流れを読み解く習慣の大切さ。


投信の対面販売、ノーロード化のカラクリ。

 日経の経済メディアにて、新NISA特集が組まれていたが、とある地方銀行にて窓口で対面販売している投資信託の、購入手数料を無料化、すなわちノーロード化をウリにしている様子が窺えた。

 この方針自体は1年ほど前から実施されているらしいが、そもそも銀行で投資信託を買うこと自体、賢しい選択とは言い難いという先入観から、私のアンテナには引っ掛からなかった話題でもある。

 というのも、対面販売をしている以上、相手をする銀行員の人件費が発生するわけで、仮にパートで最低賃金ギリギリを攻めたとしても1時間あたり1,000円近い人件費に加えて、窓口を設置するために、建物の減価償却費なども間接的に顧客から回収しなければ営利企業としては成り立たないからである。

 これまで購入時に手数料を取っていたものを取りやめたことで、ネット証券と同じノーロードを謳えるようになり、一見するとネット証券と大差ないような印象を、金融リテラシーを持ち合わせていない人ほど持ってしまいがちである。

 しかし、想像力を膨らませて、購入時に手数料を取らないのだとすると、対面販売のコストは一体どこで回収しているのだろうか。

 私は対面販売のノーロード化を見た瞬間に、信託報酬(運用中に発生するコスト)や、信託財産留保額(売却時に発生するコスト)で回収する構造ではないかと思い浮かんだが、その点を番組内で触れることはなく、後から自分で調べたら予想通りのカラクリだった。

考える習慣により、投資詐欺も気付ける。

 「只より高いものはない」のことわざにもあるように、一時的にコストの支払いを免れることができても、後から相応の対価を何かしらの形で支払う羽目になり、却って高くつく構造は昔から変わらない。

 世の中は取るに足らないパンピーに都合良くはできていないことへの戒めであり、ウマい話には裏があると一旦疑った方が、人生が再起不能になるレベルの何かを失わずに済むのは不変の真理と言える。

 ただ、そもそも失うものがない人であれば、騙されても何も失わないどころか、後々笑い話になるためリスクがなく、伸るか反るかの大博打感覚で、騙されたと思って普通なら絶対にやらない経験を積むのはアリだと思うが責任は取れない。

 しかし、まだ日本は1億総無敵の人社会になっていないため、基本的にはウマい話は一旦疑ってかかり、カラクリを推察することが重要であり、その手法としてお金の流れをイメージすることが有効と言えるだろう。

 考える習慣を身に付けると、銀行の投資信託に限らず、保険商品や、預金口座、携帯電話、ガソリンスタンドなど、対面でサービスを受けるよりも、セルフの方が人件費のコストが掛からない分、構造的には安くできることが感覚的に理解できる。

 そんなの当たり前だと思うかもしれないが、いわゆる投資詐欺的なやつも構造は同じで、他人の資産を預かって、リスクをとって運用するのに、成果が100%受け取れるなら、取り次ぐ人にメリットがないことに気付き、引っ掛からないだろう。

逆転の発想で、相手の立場から考える。

 自分の財布からお金が減るということは、誰かの財布のお金が増える訳で、おおまかな流れをイメージすることで、資産を守るだけではなく、企業の戦略を知ることにも活用できるため、それが投資アイディアの源泉になる。

 コロナ前にQRコード決済が乱立した際に、大規模な還元祭りが実施されたのは記憶に新しいが、一時的にはバラマキの赤字覚悟でも、QR決済の覇権を取ることで、長期目線では導入企業から手数料を薄く広く徴収できる公算だろう。

 これに気付けば、お得なキャンペーンは一社が覇権を取るまでの間しか実施されないと気付くし、どこの会社が本腰を入れて、覇権を取りに行く姿勢なのかも窺い知れる。

 話は変わり、コ○トコが卸値に近い価格で商品を提供できるのは、会員費が収益源となっていて、個々の商品に利益を上乗せする必要がないからである。

 通常の小売店は消費者が手に取りやすいよう、小口で販売するのに対して、あえて小分けにせず、通常なら配送拠点の倉庫で扱うような状態のまま売っている訳で、陳列や在庫管理に比較的コストを割く必要がないことも安く提供できる強みとして捉えられる。

 最近ならクレジットカードで、ゴールドカードが永年無料で持てる制度を新設し、その会員資格を得るために消費者の購買を促していたり、投資信託の積立にカード決済を嚙ませることで、ポイントが付与されるシステムが乱立している。

 これもまた、ファーストランナーに追従するか否か、本腰を入れて覇権を取る姿勢なのか否かで、カード会社間の思惑が朧げに浮かび上がってくる。

 大切なのは、自分がウマいと思った話ほど、相手の立場から、逆転の発想で考えることだろう。

 先述のクレジットカードの例であれば、カード会社は顧客の獲得のために、広告宣伝費を投じて一時的にばら撒いているだけだから、騙しに掛かっている訳ではないと判断できる。

 逆に他人を介した形で勧められる儲け話は、紹介者にメリットがなければ、他人に教えず自分でやれば良い話で、それをしない時点で裏がある。騙そうとしていると判断できる。

 お金は単なる数値だが、その増減の流れを読み解くことで、相手の思惑を推し量れるのだから、それを読み解く能力はあって損することはないはずだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?