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日本社会でシルバー民主主義が覆るとき。


人口動態は恐ろしく正確な未来を映し出す。

 今年の5月に「消滅可能性都市」でお馴染みの増田リポートが再試算される見通しとなっている。

 少子高齢化、人口減少時代と言われて久しいが、問題なのはその内訳である。全世代が均等に減少する訳ではない。高齢者人口は減少するどころか、2054年まで増加の一途を辿る。

 日本の人口は減少するのに、高齢者は増え続けるということは、減っていくのは若者であり、子どもであることを意味する。

 「消滅可能性都市」の定義は、2014年に試算した段階で、2040年までに若年女性が半分以下となる自治体を指す。お母さんになる可能性のある人が減れば、当然ながら少子化が加速する。

 これが何を意味するのか。1世代だけの出来事であれば少子化問題は表面化しないが、子どもに良い教育を受けさせるなら、少なく産むしかないと考える親のもとで育った子どもが、同じ考えで今度は親となり、2世代目、3世代目と続くと、子どもは指数関数的に減少していく。

 少子化が本格的に騒がれ始めたのは1990年の1.57ショックであり、90年代に生まれた世代が子どもを産み育てている状況は、既に1世代目から2世代目に差し掛かっていると捉えられる。

 2040年代になると、今の時代に産まれている子どもたちが、今度は親となり始める時期に突入するが、親となる候補者の数の天井は既に80万人を割っている。

 18年後の成人が、今年産まれた子の数を上回ることは絶対にないのだから、人口動態は恐ろしく正確な未来を映し出す、唯一と言っても良い統計データと言える。

少子化により若さが希少価値を持つ。

 つまり、今よりも日本経済が没落して、庶民の暮らしぶりがより一層厳しくなれば、兄弟姉妹が居る家庭よりも、ひとりっ子の家庭が圧倒多数となるのは必然だろう。

 そうなると、世代を跨ぐ毎に出生数は半減していく可能性が高く、この頃には、婚活市場で「長男以外」という条件が、時代の産物として語られるだろう。決して私が長男で不遇な目に遭った腹いせで記している訳じゃないんだから!

 そうして少子化が加速していくと、より一層シルバーデモクラシーが加速して、若者に冷酷な社会になるのではないかと、今の若年層は、これまで不遇だったが故に危惧しがちである。

 しかし、私は日本社会で超マイノリティな若者だからこそ、存在そのものが希少価値を持ち、これからの日本社会を担って貰うために、無下に扱えなくなり、このクソみたいなシルバー民主主義が覆る時が来る可能性もあると考えている。

 昨今の労働市場は人手不足が叫ばれているが、奴隷不足と履き違えて選り好みしている勘違い漆黒企業と、成り手が居ないなら育てるしかないと、人材確保・育成に躍起になっている企業とで二極化している印象がある。

 前者が未だに少子化1世代目の感覚で採用している企業、後者が少子化2世代目の現実を直視している企業と捉えたら、2040年にどちらが生き残れるかは明白だろう。

 同じ現象が地方自治体でも起きている。これまでのやり方を踏襲して高齢者が暮らしやすい社会を続ける自治体と、今の状態がいつまでも持続する筈がないことに気づき、大々的な子育て支援に打って出る自治体で、どちらが消滅するかも明白だろう。

将来世代のことを考えた行動を。

 想像力を働かせて頂きたい。地方は今以上に街中が、主に年金暮らしの高齢者で溢れかえり、若い働き手が枯渇する未来を。

 誰がコンビニやスーパーで働くのか。誰が物流や郵便を担うのか。誰が交通機関の運行を担うのか。誰が医療に従事するのか。誰が高齢者の介護を担うのか。誰が街の治安や国を守るのか。

 エッセンシャルワーカーを蔑ろにして、若い成り手が居なくなったら、働ける高齢者が社会インフラを支え、高齢者が高齢者を支える世代”内”扶養社会が到来する可能性も十分考えられる。

 それが嫌なら移民を受け入れる他ないが、島国で形成された村社会で、よそ者を受け入れられるか。そもそも論で、経済大国では既になくなりつつある今、来てくれるような方が居ないだろう。今や日本の若者が海外に出稼ぎに行く時代なのだから。

 つまり、若者は居心地が悪くなったら、地元を見捨てて上京してしまえば、東京一極集中が続く限り、日本社会が終わるその時まで、逃げられる余地があるだけでなく、語学力さえ身に付けて、国を見捨てて海外移住してしまえば、文字通りの対岸の火事となる。

 憲法第22条で、住む場所と職業の自由が保証されている以上、地方に引き留めるためには、東京以上のインセンティブが必要になってくるし、日本という国に引き留めるためには、主要先進国以上のインセンティブがないと、語学力が身に付けられる優秀な人から順を追って居なくなる地獄絵図と化す。

 消滅可能性都市や日本社会という名の沈没船に乗船していて、浸水している現実から目を背け、問題を先送りし続ければ、いずれ沈没する。逃げ足の速さが重要なのは記すまでもない。

 一般論では、若者の方がフットワークが軽い。2040年以降に少子高齢化が深刻化した際、危機感を持っている今の若者は30〜50代と、逃げようと思えば逃げられる一方で、20年後には死んでいるだろうから、自分には関係ない。逃げ切れると考えている世代の方が逃げ切れず、沈みゆく船の中で、座して死を待つような最期を迎えるかも知れない。

 そんな最期を迎えたくないと少しでも思うのであれば、将来世代のことを考えた行動を、ひとつひとつ積み重ねていく他ない。そうした考えを持つ高齢者が過半を超えた時が、シルバー民主主義が覆る時となるだろう。


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