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ビール業界焦ってますなぁ。

キリンがビール首位を奪還した理由。

 酒税法の絡みで国際競争力のない、国内向けの安かろう悪かろうのビールもどきに開発のリソースを割く必要がなくなった影響もあってか、最近になって、アサヒ新スーパードライや生ジョッキ缶のリニューアル、サッポロヱビスのリニューアル、プレミアムモルツの派生商品と、やたらとビール会社において缶ビールのテコ入れが加熱している。しかし、キリンだけは看板商品である一番搾りのテコ入れをしていないのにビール首位を11年振りに奪還している。不思議ではないだろうか。

 キリンが11年振りにビール首位を奪還した記事の内容としては、飲食店に卸していたアサヒ、家飲みのキリンの住み分けが疫病によって明暗が分かれたと解説されているが、本質は新商品のクオリティに表れていると私は考える。

渾身のクラフトビール。

 今までサッポロ黒ラベル派だった私であるが、昨年、キリンのスプリングバレー豊潤<496>を飲んで以来、缶ビールの枠に留まっていないあまりの美味しさに衝撃を受けて、すっかりスプリングバレー豊潤<496>の虜になっている。

 ビールよりは日本酒やワインが好きなアル中なので、基本的には350ml缶で飲めば十分で、ロング缶(500ml)を飲むことなど滅多にないのだが、スプリングバレー豊潤<496>に関しては是非ともロング缶で飲みたくなる位、飽きのこない美味しさに仕上がっている。まさに毎日飲んでも飽きない完全数である496の名に相応しいクオリティである。

 キリン渾身のクラフトビールだけあって、プロモーションも積極的に行ってはいるが、価格帯が缶ビール市場では高価な部類のためか、まだ一般にコイツの凄さがあまり認知されていないのが現状である。しかし、株主優待が弾着する2022年4月中旬以降、株式を保有するだけの余裕がある比較的富裕層がコイツを飲んだ時に、どんな反応をするのか今から楽しみである。

 キリンの缶ビール如きに大袈裟だと思われるかもしれない。確かに世の中に美味しいビールは山ほどあるが、500ml缶で363円と一番搾りやサッポロヱビス、黒ラベルにワンコイン上乗せする程度の、缶ビールとして決して高くはない価格帯で、本場のドイツやベルギー産ビールに引けを取らないクオリティ。これが一番搾りの流通に耐えられるだけの生産を安定的に行える点でマーケティングの4Pからしても見事で、キリンの本気を感じる。

 大袈裟だと思う方は、騙されたと思ってコイツを飲んでから判断して頂きたい。今のところ高いだけで不味いなどのアンチレビューで沸いているのは不思議とスーパードライの愛飲者だけだが、おっと誰か来たようだ。

気付いた時には既に手遅れ。

 ビール業界の同業他社であるアサヒ、サッポロ、サントリーが最近になって看板商品をテコ入れしているのは、間違いなく業界関係者がスプリングバレー豊潤<496>のクオリティに衝撃を受けた焦りによるものだと個人的には考えている。

 しかし、スプリングバレー豊潤<496>はキリンがクラフトビール事業に参入してから、足掛け10年でようやく得られた成果である。手間のかかる製法であるクラフトビールを、安定的に生産・流通させて、一般の消費者が気軽に入手できる形を実現するのは並大抵のことではない。現に、スプリングバレー豊潤<496>の品質を支えているディップホップ製法は、海外からはクレイジーと言われる程度に手間が掛かっている。

 ネックだった流通も、疫病による宴会需要の消滅により飲食店への卸しから、個人にシフトしたことで見通しが立ったものと思われ、巣ごもり需要に伴うエンゲル係数の上昇や、酒税法の改正により、本格的なビールの価格的優位性が出て来たことなどの要因と重なり、満を持して2021年の3月に登場させている訳である。プレミアムビールを出している各社が気付いた時には既に手遅れである。

感動をありがとう。

 個人的には今までサッポロ黒ラベル派だったので、頑張って欲しい気持ちもある反面、これほど国際競争力のある製品を作れる企業が日本にまだあるのかと、希望や将来性を感じずにはいられなかった。21世紀にもなって疫病や戦争などの暗い話題が溢れかえっている昨今、まさか缶ビールで感動して、明るい世界を垣間見ることが出来たのは、キリンの企業努力の賜物に他ならない。ありがとうキリン。これからは株主として動向を見守りたいと思う。

 ビール業界株は、原材料の高騰による業績悪化が懸念されているため、現時点では割安に放置されているのが現状である。確かに今までの既成品の延長線上で考えれば、マイナスの判断材料である。

 しかし、マーケットが国内から海外に進出できれば、話は変わってくる。私はキリン渾身のスプリングバレー豊潤<496>に一口乗ってみたいと思った。投資というのは大多数の意見に惑わされると、高く買って安く売る羽目になる。大多数が悪手だと思っている銘柄を、信念を持って買うことが大きな利益につながる場合だってある。

 過去のマネックスG(8698)がそうだった。ネム流出事件を機にコインチェックを傘下に収めたものの、2020年までビットコインはオワコン扱いされていた。しかし、イーロンマスク砲により2017年以上の活気を取り戻し、株価も3〜4倍に跳ね上がった。キリンがどちらに転ぶのか、答えは未来にならなければ分からないが、個人的に今から楽しみな銘柄のひとつである。


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