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【簡単あらすじ】名探偵のままでいて(微ネタバレ)【小西マサテル/宝島社】



『楓。煙草を一本くれないか』


若い頃は学校内で一番人気の教師・校長先生で、周りからは親愛の情をこめて「まどふき先生」とも呼ばれていた祖父は、現在、幻視や記憶障害といった症状がみられるレビー小体型認知症を患っている。

生まれたときに母親、学生時代に父親を亡くしてしまい、祖父と多くの時間を暮らしてきた楓にとって、現在の祖父の様子は、信じたくなく受け入れない状況でもある。

しかし、体調が良いときの祖父に、楓が購入した古本の謎についての意見を求めると、以前の祖父を彷彿させる頭の切れを見せる。

そんな祖父が好きな楓は、日常の様々な謎を祖父に聞かせるのだが…

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『はじめに』
酷かった花粉の飛散もようやく収まり、窓を開けると爽やかな風を感じ・ポカポカ陽気で何となく幸せも感じるという、絶好の読書シチュエーションを得られる時期が到来しました。ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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書店で、表紙イラストと題名を見た瞬間に、必ず読もうと思った作品です。

こういうのを一目惚れというのかもしれません。

祖父と楓は、血のつながった家族というのは当然ですが、楓が小学生の頃の校長先生でもあったため、校長(教師)とその生徒という関係性もあります。

そういったこともあり、楓が意見を求めたある謎について、名探偵の祖父は、まず楓へ「どんな物語を紡ぐかね」という問いかけから始めます。

楓も祖父の影響からか、謎に関して自分なりの・話の筋が通っている推測を持ってきますが、真相までは中々届きません。

楓の推測を吟味した祖父は、辻褄が合わない所を添削し、さらに、話の矛盾点が無いような結論に辿り着きます。

そして場合によっては、真相への違ったアプローチを行い、様々な真相の可能性を挙げます。

私も、時々学習塾のお手伝いをしているからか、こういった「ある結論に向かって二人が真剣に様々なアプローチを行う」という「理想的な先生と生徒」の関係性がとても羨ましく・清々しく感じます。

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「終章・ストーカーの謎」は、ある件についての解決だけでなく、「女か虎か?」という実際にある古典文学についての、作者の一つの考えが書いてあります。

そして今作も、終章で明らかになった「ある二択」について、結論が提示されないまま終わりを迎えます。

ですが、はっきりとした結末を迎えなくとも、決してモヤモヤした気持ちにはならなく、すっきりした読了感を味わえます。

次作・名探偵じゃなくても



が既に発売されていますが、上記の二択の結論が出てしまう可能性が高いと考えると、読みたいような読みなくないような複雑な気持ちです笑

ですが、記述してきたように今作は間違い無く傑作ですので、表紙イラストと題名の雰囲気に心をつかまれた人は是非読んで欲しい一作です。



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