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【簡単あらすじ】非日常の謎 ミステリアンソロジー(微ネタバレ)【講談社タイガ】

ミステリにおける「日常の謎」というジャンルを「非日常の謎」と置き換え、日々の生活の狭間に突如訪れる、刹那の非日常で生まれる「謎」をテーマとして、六人の著者が書いた短編集です。

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『はじめに』
毎日猛暑日が続き体力が削られ、外出どころか何もしたくないと考えてしまうような日々が続きます。
しかし、外出を控えるようになったということは、逆に考えると家の中でエアコンを起動させ、傍に飲み物を持ってくると外の雰囲気に全く影響されない、絶好の読書シチュエーションになります。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

現在はかなり落ち着いてきた状況とは言え、数年前の日常にはまだまだ戻っておりません。

そういった「非日常」を乗り越える内容の六つの短編集です。

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1.辻堂ゆめ「十四時間の空の旅」

高校一年生のエリカは、四年間住んだアメリカから日本に帰国することになった。

アメリカを離れるのが寂しいのか、日本に帰れるのが嬉しいのか。

自分の気持ちが整理されないまま飛行機に搭乗するが、機内には、ヤバい人とエリカの直感が告げる「全身黒づくめの男」も座っていた。

2.凪良ゆう「表面張力」

経営していた下宿の取り壊しの途中、その一室から「変なもの」が出てきたという電話を受け、管理人は現場へ行く。

その変なものとは、古代インドのサンスクリット語が起源となっている種字で書かれた「壁一面に貼られたお札」だった。

3.城平京「これは運命ではない」

小山内敦は、恋愛ドラマや映画でありそうなシチュエーションを、現実世界で何度も体験する。

あまりにも不自然と感じた小山内は、合理的な解釈を求め、大学時代の先輩・桜川九郎に相談する。

4.木元哉多「どっち?」

元モデルの本田奎は、妻で社長の美嘉が経営する会社の部長を務めている。

奎は、妻にも仕事にも特に不満の無い日常を送っていたが、ある時から美嘉の友達であるクリスティーンと不倫状態にあった。

ある日、奎が自宅に戻ると、寝室でクリスティーンが首を吊っており…

5.阿津川辰海「成人式とタイムカプセル」

正月に合わせて実家に帰省した有田雄馬。

そこに、母校である小学校教師の中沢から「タイムカプセルに心当たりがないか」という電話がかかってくる。

雄馬は、タイムカプセルの受取りのついでに全く興味のない成人式に参加すると、そこで最初の親友であり初恋の人である篠原日景と出会う。

二人の会話は弾み、その流れで一緒に小学校へ向かうことになる。

6.芦沢央「この世界には間違いが七つある」

マスターが扉を開けると開始するゲームの参加者が殺された。マスターの機嫌を損ねれば、いつでも処分される運命の参加者たち。

どうやって秩序を取り戻すか。
参加者たちは頭を絞る。

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各編とも、短編とはいえ内容はしっかり練り込まれていますし、世界観が私好みの作者さんしかいない作品だったので、全ての作品がおススメですが、その中でも「題名だけで結末まで見抜ける可能性があった」という仕掛けを持つ、芦沢央さんの作品が好みです。

文章だけを読むと、少々のグロ表現もドロドロとした人間模様も描かれていますが、最後まで読むと… というところがポイントです。

短編集に拒否反応のある方でも、間違い無く楽しめる一冊です。



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