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【簡単あらすじ】ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー(微ネタバレ)【講談社タイガ】


『もし、歴史がこうなっていたなら…』
 5人の作者が描く、改変歴史SFアンソロジー

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『はじめに』
毎日猛暑日が続き体力が削られ、外出どころか何もしたくないと考えてしまうような日々が続きます。
しかし、外出を控えるようになったということは、逆に考えると家の中でエアコンを起動させ、傍に飲み物を持ってくると外の雰囲気に全く影響されない、絶好の読書シチュエーションになります。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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ほんタメ「20230104この人、またメチャクチャ読んでます!【2023年1月】」で紹介された作品です。


各作者が描く、それぞれのif(偽史)の世界。

舞台も設定も展開も締めも5人それぞれの作品だったので、大変楽しめました。

1.石川宗生「うたう蜘蛛」

イタリア・ナポリで、タランティズムと呼ばれる奇病?が発生した。

この奇病に冒された者は、話しかけられても・飲み食いを一週間しなくとも・足から血を流しても、喜悦の表情を浮かべながら踊り続け、そのまま帰らぬ人となる。

危機感を募らせたナポリ総督は、奇病の克服のため、音楽で治療を行うという者に治療の全権を委ねたが…

2.宮内悠介「パニック ―一九六五年のSNS」

1965年2月16日、開高健がベトナムで一時行方不明となりその後救助された、という報道がされた後、世界最初のウェブ炎上事件が発生した。

ウェブ上で繰り返された言葉は「ジサクジエン」「ジコセキニン」

3.斜線堂有紀「一一六二年のlovin’ life」

和歌とは、大和言葉のまま人前で披露するものではなく、専用の言葉である『詠語』に直さなくてはいけないという世界で生きる、「ずば抜けた和歌の才能を持ちながらも歌を詠まない:式子内親王」と「天才的詠訳人:帥」の物語。

4.小川一水『大江戸石廓突破仕留』

関東代官・水道奉行の息子たちは、いつも通り「玉川上水」の監視と清掃のために見回りを行っていた。

しかしある時、川に毒が流されるという大問題が発生する。
犯人の目的とは?

5.伴名練「二〇〇〇一週目のジャンヌ」

フランスとイングランドの「百年戦争」後半に現れた、オルレアンの少女:ジャンヌダルク

現在のフランス領の約半分までイングランド軍に奪われ、絶体絶命だったフランス軍は、彼女に率いられ次々と領地を奪還する。

華々しい戦果を挙げたジャンヌだったが、政治的・宗教的な絡みもあり最後は異端裁判により火あぶりの計に処されてしまう。

享年19歳。

しかし、焼けつく炎の熱さ・煙の苦しさを体験したジャンヌが目を覚ますと、処刑直前にいた牢獄に再び横たわっていた…

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各作者が作り上げた「偽史」とはいえ、各作品には「正史」も一部基にして話が展開されていますので、

1.では、洋楽(ハードロック)について
2.では、開高健さんの生き方や著書について
3.では、平安・鎌倉時代の和歌について
4.では、江戸の地理・災害について
5.では、中世ヨーロッパの歴史について

各作品について上記の知識がある方ならば、背景も深く理解することが出来、さらに楽しめると思います。

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個人的には、和歌と詠語と英語という単語を、凄くまとまりよくしっくりさせた世界観が心に響いた、斜線堂有紀さんの作品がお気に入りです。

ほんタメや読書垢さんたちのツイートで、「斜線堂有紀さんが凄い・面白い」ということは知っていたのですが、その理由の一端を知ることが出来ました。

次は、斜線堂有紀さんの長編を読みたいと思わせる作品でした。

歴史の改変は良くないということは当然ですが、今作品のように「力量のある作家さんが偽史を作り上げる」という試みがとても良かったと思います。

偽史というテーマは同じで、違う作家さんにも書いて欲しいシリーズです。



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