りべます

リベラル・マスキュリズム。

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最近の記事

制度史を少しばかり覗く

とりとめもない断想。 1現代の法や社会制度の仕組みもなかなか難しくて、色々見ながらジェンダー平等を目指していかなきゃいけないと、思う。 一方で、日本では明治時代になるまで奈良時代に作られた養老律令がいちおう形式的には有効だったりしたし、現代の習慣や法律も各国にそれぞれの事情があり、そういうものも参観しないといけない。明律は明治時代にも法整備のために参照されたそうだ。 ウル・ナンム法典に始まり、ハンムラビ法典、ローマ法、律令、イスラム法(シャリーア)、色々な法や社会制度が

    • 日本人女性の声はなぜ高いのか

      俗説とデータこんな俗説をしばしば聞く。 「日本人女性の声が高いのは、日本の男尊女卑やロリコン文化のせいだ!」 この俗説は頻繁に繰り返され、再生産されている。 これについて2年ほど前の須藤玲司氏の連投に面白く有益な情報が含まれていた。Erik Bernhardsson氏はブログで、様々な言語話者の声の高さを比較している。 比較のため、Bernhardsson氏のグラフから日本語話者と英語話者の部分だけを抜粋してみよう。確かに日本語を話す女性の声は高い。しかし、日本語を話

      • 科学とジェンダー

        女性優遇のアファーマティブ・アクション現在日本で行われている女性優遇のアファーマティブ・アクションに対して、「年輩の男性研究者が自分たちが不当に得てきた利益のツケを若い男性研究者に払わせている」という見方を、ネット上でよく見るようになったが、この見方は間違いだと思う。 現在日本で行われている女性優遇のアファーマティブ・アクションは、「男性プラス1、女性マイナス1」を「男性マイナス1、女性プラス1」にする、というような性質のものではない。「男性プラスマイナスゼロ、女性プラスマ

        • 年金格差は存在するか

          昨日3月8日の国際女性デーに際して、『東京新聞』がこんな記事をネットに載せた。 女性の年金受給額は男性の3分の2であるという煽情的なタイトルで、あたかも高齢の女性が(男性に比べて)不利な状況に置かれているかのように書き立てている。 1詳しく裏取りをして検討をする余裕はないので、この記事の内容をざっと眺めてみよう。 この記事では「65歳~69歳」から「85歳以上」まで5歳ずつに年齢層を区切り、「単身高齢世帯の公的年金・恩給給付の年間受給額」の男女差を示している。男女差が最

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          半年後の自分への置き土産

          というなんともエモーショナルなタイトルをつけてみたが、本当に自分のための置き土産なので、別に私以外の誰かが読んで面白いものではないだろう。ただのメモである。 長い前置き先日、男性差別の現状を記述するためにエンペディアを始めた。エンペディアに加筆するために男性差別の現状をちまちまと調べ始めたところ、これはちょっとやそっとの仕事ではないぞ、ということに気づいたのだった。マスキュリズムは「男性差別の可視化と撤廃のための学問」にならなければならないと常々思ってきたが、まさにこの種の

          半年後の自分への置き土産

          エンペディアはじめました――あるいは茂澄遙人さんの追憶――

          エンペディアはじめました「謎の百科事典もどき」エンペディアでの執筆を始めました。 今のところ「男性差別」「性犯罪の冤罪」「マスキュリズム」の3つの記事を作りました。我ながら、まあそれなりにいい仕事をしたんじゃないかと思います。 特に「性犯罪の冤罪」の項目には、色々ご存じの事例を追加していただけたりなんかすると幸いです。 茂澄遙人さんの追憶少し前までインターネットで活動していた人に、茂澄遙人さんという人がいました。いつのまにか見ないなと思ったら去年の4月にTwitterの

          エンペディアはじめました――あるいは茂澄遙人さんの追憶――

          生きよう

          本居宣長は「この世に死ぬるほど悲しきことは候はぬなり」(この世に死ぬことほど悲しいことはないのです)と言った。ここを出発点にしよう。死ぬことほど悲しいことはない。誰も、好き好んで死にはしない。この当たり前のことが、こと男性の命に関しては忘れられている。だから何度でも言わなければならない。死ぬことは悲しいことだ。 この世には様々な死がある。たとえば、戦争に駆り出される死がある。 与謝野晶子は「すめらみことは、戦ひに おほみづからは出でまさね」(天皇陛下は戦争にご自身でお出ま

          同性愛における男性差別

          歴史上、男性の同性間の性交渉は女性のそれよりもしばしば重い罪とされてきた。男性同士のみを罪とする制度も多い。日本の法律において同性間の性行為が違法とされたのは明治時代のわずか10年間であったが、それもはやり男性にのみ課せられた罪であった。同性間の性交渉を違法とする法制の問題は、常に流行りの「LGBTプライド」の文脈に回収される。しかし、男性のみに同性との性交渉を認めないことには男性差別という側面があることを見逃すわけにはいかない。 同性愛については男性の方がずっと不利な立場

          同性愛における男性差別

          透明化される「マスキュリサイド」(男殺し)

          8月5日、金沢市で60代の女が見ず知らずの50代の男性をナイフで刺す事件が起きた[1]。しかし、この事件は小さなローカルニュースとして取り上げられただけだった。 翌日6日に、世田谷区内を走行していた小田急線の電車内で30代の男が男女5人ずつ計10人を襲い、4人を切りつける事件が起きた[2]。最も執拗に狙われたのは20代の女性であった。この事件は大々的に報道され、注目されることとなった。人数の多さよりは、被害者が若い女性であったことが騒がれる原因であった。この事件は「フェミサ

          透明化される「マスキュリサイド」(男殺し)

          麻疹・風疹と男性差別

          4月の職場の健康診断で麻疹・風疹抗体検査を受けたところ、基準を満たしておらず、ワクチンを摂取してきた。自由診療なのでだいぶお金がかかった。 かつてワクチンを与えられなかった男性たち昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれまで、17年間にわたり、女性に対しては風疹ワクチンの定期接種が行われたが、男性に対しては行われなかった。将来生まれてくる子どもを守るために、女性だけに接種すればいいという大義名分だが、これは男性の健康を軽んじる大きな差別であった。 だが、状況は好転し

          麻疹・風疹と男性差別

          貧茎万歳! #貧茎チャレンジ

          背景胸の大きな女性が胸の上にスマホなどを置くことに挑戦する「#たわわチャレンジ」(※)というものが流行ったことがあります。それに対抗して胸の小さな女性が胸の上にスマホなどを置くことに挑戦する「#貧乳チャレンジ」というものをしてみた女性もいたようです。もちろんスマホは滑り落ちます。 なお最近では男性が勃起した性器にシャンプーのボトルを乗せることに挑戦する「#shampoochallange」というものも流行っているようです。 その「#貧乳チャレンジ」というハッシュタグの存在

          貧茎万歳! #貧茎チャレンジ

          COVID-19は続いている

          5月21日、東京・神奈川・千葉・埼玉・北海道を除いて緊急事態宣言が解除された(「緊急事態宣言、大阪・京都・兵庫で解除。首都圏も25日解除の可能性 - Impress Watch」)。一時は不足していたマスクやエタノールも、すっかり値下がりして、容易に手に入るようになった。 日本ではすでに「コロナは終わった」という空気だが、世界ではますます拡大を続けている。5月20日には、1日に世界全体で確認された感染者数が過去最多となった。 COVID-19は続いている。終わっていない。

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          全人類必見のTEDx動画: Meeting the Enemy

          「Meeting the Enemy: A Feminist Comes to Terms with the Mens' Rights Movement.」は、全人類必見のTEDx動画だ。とにかく見てほしい。YouTubeには日本語字幕もついているので、英語が分からなくても問題ない。 キャシー・ジェイ氏はドキュメンタリー監督で、フェミニストだった。当時27歳だった彼女は、男性人権運動家たちを「女性差別主義者で男女同権の阻止に熱心なヘイト集団」と決めつけ、その闇を暴くドキュメ

          全人類必見のTEDx動画: Meeting the Enemy

          なぜいつも「女性が被害者」なのか

          なんでも、一部の人が言うことによれば、いつも女性ばかりが被害を受けているらしい。だから被害者である女性を守らないといけないのだという。なぜいつも女性が被害者なのだろう。 1998年11月17日にヒラリー・クリントンがエルサルバドルで行った演説に全ての答えがある。このあまりに馬鹿げた発言は、アメリカではネットミームにもなっている。 Women have always been the primary victims of war. Women lose their husb

          なぜいつも「女性が被害者」なのか

          噴出した差別

          この記事の概要: COVID-19の蔓延によって多くの差別が噴出している。その一つが男性差別である。男性の致死率の高さを「天罰」と言う者がいる。「女性リーダーの方が優秀で、COVID-19対策に成功している」などと言いふらす者がいる。実際には、国のリーダーの性別はCOVID-19対策が上手く行っているかどうかに関係ない。 ※※※ COVID-19が人々の差別心を噴出させた。 最初にこの感染症がアジアで蔓延しはじめたとき、アジア人差別が一気に噴出した(「新型コロナウイルス

          噴出した差別

          COVID-19の最大の被害者は「黒人」と「男性」

          COVID-19が猛威を振るっている。 この感染症は、決して全ての人を平等に苦しめているのではない。 アメリカにおいてCOVID-19による死亡率が高く、最も苦しめられているのは黒人だという。黒人が置かれている社会的な地位の低さがその原因となっているのだ。 黒人は白人に比べ、日々危険な肉体労働によって生活費を稼がねばならない。黒人は健康的な生活を送りにくい。また、今でも医療従事者が「黒人は白人より痛みを感じにくい」という誤った認識を持っていることが多く、医療の場でもぞん

          COVID-19の最大の被害者は「黒人」と「男性」