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【製本のある暮らし】 インレイで表紙を飾る。



綴人の note にお越し頂き、ありがとうございます。


日々製本に関わる生活をしています。憧れであった革装本が作れるようになり、革装丁はそれだけで充分豪華で満足ではあるのですが、さらに上を目指したいと考えるのは人の常です。
御多分に洩れず、自分も身の程知らずだなぁと思いつつも冒険に出たいと思っています。

革装丁の表紙をさらに豪華に飾る方法としていくつかあります。
まず、金箔で飾るものが豪華で見ごたえがあります。特にイスラム圏の本は眩いばかりの装飾が目を引きます。イスラムでは偶像崇拝をしませんので、幾何学の図形などが連なる文様は圧巻です。

箔押しで使う型のみで、金箔を使わない空押しの装飾もあります。色が付かないエンボス加工になり、また違った表情を作ることができます。

そして表紙の革とは別の革で装飾するレイで、これには二つあり、オンレイとインレイという方法があります。
オンレイは表紙の革の上に別の革を張る方法、インレイは表紙の革を切り抜いて、別の革をはめ込む方法です。上に貼るオンレイが簡単そうに思えますが、じつはオンレイの方が難しいです。ではインレイが簡単かといえばそうではありません。どちらも難しさは同じです。
工程の違いです。

インレイの方が工程としては少ないので、今回私はインレイから挑戦しようと思います。



スケッチした図案を表紙に張り、これを切り抜きます。




まずは考えた図案をスケッチして、デザインを決めます。傍らに他の革を置いて色味、厚みを考慮しながらどう進めるかを考えながら作業に入ります。




カットした図案を剝がします。




表紙に貼った図案の型紙を切り抜くわけですが、この時の緊張はかなりのストレスです。失敗したらそれで終わりという恐怖に近い場面です。長い時間と手間暇をかけ、今回に至ってはイスラミック・ヘッドバンドという珍しいヘッドバンド(花布)を施したので、大変なリスクを選択したわけです。後悔と冒険ががっぷりよつの状態です。(汗)
ですが、この四つ相撲がたまりません!!アドレナリンの噴出が半端ないとはこのことです。
今までも何度か同じような経験をしていますが、それを乗り越えた先にお金には代えられないご褒美が待っていることを知った身としては、中毒といって差し支えありません。




図案に合わせてカットした革片を仮にはめてみます。




あらかじめカットしておいた革片を仮にはめてみます。この時点で後悔は土俵から押し出され、冒険が始まります。印象が具体的になったおかげで、心が躍ります。

インレイの難しさは、抜いた形にピッタリ合うよう革片を切り出すことです。これが上手くいかないと隙間が出来てしまいます。気にしなければ気にならない、という慰めはありがたいですが、やはりそこを極めたいというのが冒険なわけです。





図案に合うよう、微調整をしながら貼り込みます。




コツとしては、表紙の形より一回り大きく革片をカットすることです。革は弾力があるので、押し込んでやると押しくらまんじゅうのようにピッタリ合わさります。
それともう一つ、カッターの入れ方です。カッターの刃をそれぞれ内向きに角度を付けてやると隙間ができにくくなります。





中心になる部分に革片が入りました。





表紙の中心に革片が入りました。当初、これにワンポイントの金箔を入れ完成とする予定でしたが、もう一つ何かが足りないような気がしています。今は頭の中がインレイに挑戦した、という興奮状態なので、安易に金箔を入れてつまらないものになる気がしているので、しばらく時間をおいて頭をクールダウンしようと思います。

それでは今回はこの辺で。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

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