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【ピアノ初心者の30代サラリーマンがコンクールに出場するまで】④

前回の続きはこちら。

友人の結婚式2次会で、5人バンドを組み、Bank band「糸」の間奏部分でフルートを披露することに。
バンドとはいえ、関西にいた私以外全員東京組で、一度も全体練習は出来なかった。(まぁ自分は間奏だけやし…)

個人では限界があるので音楽教室の先生にお願いし、レッスンで練習中の曲を一旦終了して急遽「糸」のレクチャーを依頼することに。

たかが30秒程度と舐めていたが、これがまぁ難しかった。
細かいタンギング、スラー、装飾音符、ビブラート(無理)、正直途中で辞退しようかと何度も思った。

でも努力した。何といっても新郎新婦共に大学1年から10年来の付き合いなので、喜んで貰いたいという一心で。
あとは「アイツやるやん!カッコええやん!」とチヤホヤされたいほんの少しの下心。

細かい箇所は置いといて、何とか形になり本番当日。
当日少しでも練習しようと、夜行バスで向かい新宿のとあるスタジオを朝6時からレンタルし2時間みっちりリハ。この時は出来そうな気がした。

練習後もカフェで音源を聴きまくりイメトレして、あっという間に披露宴の時間に。

飲んではしゃぐ皆をよそに、冷静を保って酒は程々にした。酔っ払って暗譜が全部飛ぶことを危惧していたからだ。席の下で運指を確認したり、楽譜を見返すくらいソワソワしっぱなし。

そして本番、運命の2次会。

1曲目は自分抜きのバンドでウルフルズの「バンザイ」、2曲目が「糸」だった。会場約70人の視線が集まる中で、演奏スタート。自分の配置はステージ後方。間奏パートまで3分程待機。

人生で初めて習った楽器。人生で初めての楽器披露。ましてや結婚式の2次会。
目標に向けて今まで必死に練習したこと、色々な事が蘇ってきた。

「絶対出来る。完璧じゃなくても良い。冷静にやれば大丈夫。」
何回も言い聞かせた。と言いながらも手は少し震えていたのを鮮明に覚えている。

思い巡らせる間に、ついに自分のパートである間奏部分がやってきた。

出だしは何の変哲もないレの高音から。大丈夫大丈夫。

しかし事件は起きる….




音が聞こえない。てか全く出てない!!!!!!
何ならドラムの音しか聞こえん!!!!



息の角度が合っているかすらも分からずフルートを前後にクルクル。いや、そもそも音は合ってるのか?指が違うのか?何がおかしいのか?てかBank bandの音源とも全く違う。
慌てて途中から入ろうとするも、入るタイミングが分からず更にパニック。絞り出した微かな音色がドラムの音に消されてることだけは理解出来た。

まさに地獄の30秒。
一瞬すぎて、トータルで3秒くらいしか弾いた気がしない。出番終了後、演奏が終わるまで呆然と立ち尽くした。

バンド自体は大盛況だったようで、ステージに向けて拍手が送られる。
でも私は一ミリも喜べなかった。恥ずかしさ、悔しさ、悲しさ、色々な感情で頭が一杯だった。

そこからは3次会もうヤケ酒。
ずっと落ち込んでいたが、「お前弾いてた?」と友人が酒のツマミとして早速ネタにしてくれた。盛り上がったようで若干救われた。

思い掛けず巡ってきたフルート披露の場は、大失敗に終わったのであった。  

当時の写真。久々に見返すと顔が引きつっていた笑



時は過ぎ4月。
県外へ転勤となり、音楽教室も退会することになった。
フルートを始めて約1年半。勢いで始めてよくこれだけ続いたなと、少しだけ感心した。
習ったのはJPOP、簡単なクラシック、糸も含め6曲。失敗には終わったが人前で披露する貴重な機会もあり、本当に良い経験をさせて貰った。

2次会の悔しさが忘れられず転勤先でも音楽教室を探すも、田舎で教室自体が少ないのと、昔通っていた教室のように時間の融通が利く場所が無く、残念ながらフルートを再開することを断念。
結局転勤先ではフルート以外の楽器にも触れず。

さらに月日は過ぎ、2020年のコロナ禍。

在宅勤務や緊急事態宣言中の自粛で時間を持て余していた頃、あるYouTube動画に出会い日常が一変するのであった。



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