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ショート童話: お星さまの明かり

「ぼく、お空のおうちに、帰り方がわからなくなっちゃったんです」

白いシャツと白い半ズボンをはいたぼうやは、丁寧な言葉づかいで話しました。まっすぐこちらを見ています。
「それじゃあおばさんのうちに来るかい?ふとんの用意ぐらいならしてあげられるよ。もうじきおじさんも帰ってくるし」

ぼうやはおばさんについて行きました。
「お空のおうちではね、ぼく、平らなおうちの屋根にまくらを置いて、自分ひとりで眠るんです。もちろん、タオルケットをかけますけれど。風が吹いて気持ちいいの」
ぼうやは続けて言いました。
「まっくらなお空にはね、緑や赤や青や、きいろやピンクの星が、ちかちかちかちかするのが、いーっぱい見えて、それはきれいなんです」

おばさんは、それなら、と言いました。
「この明かりをつけてあげようね。お空の星みたいで、さびしくないだろう」
おばさんは枕元でカチッとスイッチをつけました。キャンディーみたいないろとりどりの明かりがパッとつき、あたたかいおふとんに入ったぼうやのにこにこ顔を照らしました。

朝の5時ごろでしょうか、おばさんとおじさんが目をさますと、まくらとおふとんだけがあり、ぼうやはいなくなっていました。
青い夜明けの寝室のおふとんの上に、お星さまのような明かりが、つきっぱなしで残されていました。まだ暗いうちに、6人の天使がお迎えにきて、ぼうやはお空のおうちに戻ることができたのです。


「死んだの?」

息子はふとんの中でぱっちり目をあけている。

「違うよ、帰ったんだよ、天使と一緒にお空の上に。お話はおしまい。もう寝なさい、明日眠くて学校に行けなくなるよ」

Flying Tigerで買った宝石のような明かりをパチリと消した。しばらくすると、うちのぼうやの寝息が、スースーと聞こえてきた。

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