若いけもの

創作のためのアカウントとして開きました。小説かくぞー!とおもいます。写真も撮ります、本…

若いけもの

創作のためのアカウントとして開きました。小説かくぞー!とおもいます。写真も撮ります、本や映画の感想や、詩も書くかも。すべての創作を

マガジン

  • 小説:短編やショートショートなど

    noteに書いた小説をまとめています

最近の記事

  • 固定された記事

短編: えくぼ☆さん

『対話で解をみつけます エクボザワ☆セラピューティックサロン』 田んぼがぷつりと終わる農道の角に、予約したサロンの看板を見つけた。ドアを押すとカランコロンと喫茶店みたいなベルが鳴り、「みきさん?どーぞー」と30代半ばぐらいの女性が出てきた。 「笑窪沢このみ」と、渡された名刺にある。珍しい名字。笑うとほんとにえくぼ出てる。 「病気になる前に来てくれてよかったー。意外と知らないでしょ、若い人はこういう所。ここで手に負えなきゃ病院紹介するし」 「あ、提携する病院があるのですね

    • 短編: 「義父に会いに行く」

       気がつくと、ひんやりとした暗闇の中にいた。ここはどこ。足がつかないプールに浮いているような感覚。でも気分は悪くない。  そばに誰かいる。  暗闇を見つめると、ろうそくで照らしたみたいにぼおっと、男性の顔が浮かんだ。にっと笑ってる。『不思議の国のアリス』のチェシャ猫みたい。タレ目でぽっちゃりした輪郭。会った覚えはないけれど、懐かしい顔立ち。 「マイちゃんやな、はじめまして」  うわ、話しかけてきた。 「そら驚くわな。墓の中で話しかけられたら」 「はが、ゲホッ、ゴホッ」  す

      • ショートショート: 立方体の思い出

        気がつくと、暗い草っぱらに転がっていた。体中が痛い。裸の上半身に草がはりつく。喉が乾いた。 ここはどこだ。 高速に近いのか、車の走る音が風に乗って聞こえる。辺りには電灯一本だけ、人影はない。 何があったか思い出せない。ああ水が飲みたい。 ブーンと音がし、トラックが猛スピードで近づいて来る。待ってくれ、待って!だがうめき声にしかならない。 そのとき窓が開き、運転手が何かを放り投げた。きらきら光る立方体が、カシャンと草むらに転がり落ちる。 近づくとそれはペットボトルだ

        • 新潟の生酒 kamosu mori 3種の楽しみかた

          見かけほど酒は強くない。 体格が物申して酒豪に見られがちだが、親類には下戸か酒乱しかいない。母は奈良漬で動悸がし、弟と妹は缶チューハイなど口にすればこたつで寝る。父は飲み会の後、金網を見ると吐く。 そんな一家では珍しく、若いころからアルコールを好んできた私だが、note主催の「自治体おすすめのお酒をおともにnoteを書く会」で飲みまくるほど強くはない。そこで私はねらいを定めた。あの日本酒に。 それは県をあげてnoteをやっている新潟は津南町の苗場酒造がかもす「kamos

        • 固定された記事

        短編: えくぼ☆さん

        マガジン

        • 小説:短編やショートショートなど
          23本

        記事

          ショートショート: 告白雨雲

          空は真っ黒に陰り、もうすぐ雨が降り出しそうだ。 冬めいた、寒い10月の終わり。何年も前に、金色にきらめくイチョウ並木を一緒に見に行ったことがあったね。今年は色付く間もないまま、寒空にひとり、場違いな緑の姿をさらしている。 呼び出されて向かったカフェの、テラス席にあなたはいた。両手をグレーのダッフルのポケットに入れて、寒そうに背中を丸め、テーブルの一点を見つめている。 「元気?」 声をかけると、あなたはゆっくり顔を上げた。 「うん。来てくれて、ありがとう」 向かいに座る

          ショートショート: 告白雨雲

          ショートショート: 告白雨雲

          「まだ来ねえかな」 曇り空を見上げて、ため息をつく。次に告白雨雲がきたらナオトは告白する。そう決めていた。 「まだか、そろそろ時間やばいぞ」 声をかけると、芦田は口ごもった。 「まだっすね、もう、ちょい……」 告白雨雲のタイミングを読むなら芦田はピカイチだ。奴がそう言うなら、もう少し待とう。 腕時計を見ると深夜零時。冷えてきた。コーヒーでも飲むか。立ちあがったそのとき、空を見て芦田が叫んだ。 「あっ、あ、あ、来た、来ました告白雨雲。だいたい2分後だと思います」 ついに来

          ショートショート: 告白雨雲

          ショートショート: 棒アイドルはふり向かない

          人気アイドル牧ミナミが、週刊誌「ドキュン!」を発行する波浪社を訴えた裁判で、裁判所は「不倫等の事実は認められず、記事は芸能人として活動する原告の名誉を著しく毀損した」として、発行元に20万円の罰金を言い渡した。 妻のいる複数の人気俳優とのありもしない熱愛をでっち上げられ、「既婚者キラーの泥棒アイドル」の見出しで報じられた時、牧ミナミはふざけんなと、静かに怒りをたぎらせた。 所属する「ときめきメロン女子部」のメンバーでは珍しく、異性交遊は一切断ってきた。男になどなびかない。

          ショートショート: 棒アイドルはふり向かない

          ショートショート: 宙とぶ棒アイドル

          幾万もの星がはりつく宇宙空間に、体がふわりと浮かぶ。ハッチを開けエアロックに戻ると、ナツキは宇宙服を脱着した。 船外活動は成功だ。「グッドジョブナツキ!」。仲間にハイタッチで迎えられ国際宇宙ステーションの寝室に入ると、ナツキはケースからマッチ棒のようなものを丁寧に取り出す。表面に少女の姿が浮かび上がった。 「じゃジャジャジャーン!おつかれマンボ、ゆきりんだよ」 緊張がほどけ、ふっと笑顔になる。 宇宙船という閉鎖空間で過ごす飛行士は鍛錬した強者ぞろい。だが、緊張と高揚感の

          ショートショート: 宙とぶ棒アイドル

          ショートショート: 国民的棒アイドル

          「人見知りだけど構ってほしい、あなたと飲みたいサラミのオレンジです」 「ゲームしようぜ!テンションMAXチーズのシルバーです」 よろしくお願いしまーす、と朝の情報番組で口上を述べているのは、話題のバーチャル・棒アイドルだ。原材料費の高騰で、一本12円だった定価を30円に上げねばならなくなった棒菓子メーカーが、商品に付加価値をと生み出した。 長年ドラえもん似の謎キャラが描かれてきたパッケージは一新、味ごとに異なる約20の棒アイドルが様々な衣装やポーズで登場する。「パジャマ姿で

          ショートショート: 国民的棒アイドル

          ねぎキムチはおいし

          先日、上野駅で「茨城フェス」的な物産展をやっていました。そこで購入しました「ねぎキムチ」。ごはんがもりもり進むやつで、おつまみにもすぐ使える。260円だったかと。 もやしを袋のままチンして、その上にこのねぎキムチをのせるだけで、うんま‼︎ もやし+きゅうり+トマトにのせるなど、簡単に野菜がたくさん取りやすいです。お豆腐の上、たぶんラーメンの上にも合う。 炒めものも簡単にできそうだし応用力ありなおかたです。

          ねぎキムチはおいし

          ショートショート: ロレンス釣り ジュリエット釣り

          お客さんは運がいい、ほら、川底にメオトトキウオが見えますよ。この魚は必ずつがいで行動してね、釣りには空気銃を使うのです。 「魚釣りに空気銃ですか?」 ええ、やってみますか?いやなに、仮死状態にさせるだけです。いけすに入れたら生き返りますから。 つがいを見つけたら必ずメスに狙いを定めて。 よし、いまだ、はい撃って! パン! 川面にぷかりと腹を見せ、魚が2匹浮かんできた。 「あっ、メスだけ撃ったつもりだったのに」 いやそれがメオトトキウオの習性でしてね。メスが死んだ

          ショートショート: ロレンス釣り ジュリエット釣り

          ショートショート: ジュリエット釣り

          「3組の戸倉俊を知ってるな」 美咲の部屋にあがり込むと、僕は切り出した。 「同い年の従兄弟として忠告する。あのサッカー野郎には近づくな」 美咲は迷惑そうに何なのよと言う。僕は続けた。 「家は遠くてチャリで1時間かかるし、金がないからマシな服も持ってない。しかもあいつは……」 「あいつは?」 美咲が先を促した。 「お前んとこの商売敵の息子さ。隣町にスーパーができて売り上げ激減だって、叔父さん嘆いてたろ」 「パパの店の……」 うつむく美咲に畳み掛ける。 「好きになるなよ

          ショートショート: ジュリエット釣り

          ショート童話: お星さまの明かり

          「ぼく、お空のおうちに、帰り方がわからなくなっちゃったんです」 白いシャツと白い半ズボンをはいたぼうやは、丁寧な言葉づかいで話しました。まっすぐこちらを見ています。 「それじゃあおばさんのうちに来るかい?ふとんの用意ぐらいならしてあげられるよ。もうじきおじさんも帰ってくるし」 ぼうやはおばさんについて行きました。 「お空のおうちではね、ぼく、平らなおうちの屋根にまくらを置いて、自分ひとりで眠るんです。もちろん、タオルケットをかけますけれど。風が吹いて気持ちいいの」 ぼうや

          ショート童話: お星さまの明かり

          +6

          写真: よっ、富士さん

          写真: よっ、富士さん

          +5
          +9

          写真: 青空とあるく秋の京

          写真: 青空とあるく秋の京

          +8

          いつまでもあなたが #しゃべる画像

          iPhone で撮った写真を、 長押ししたら、 ムービーみたいに動きだした。 ほんの数秒間。 ピースをして笑う直前の、 ふつうのあなたの顔が見える。 うどん屋さんで「あち」という声や、 そのとき店に流れていた、どうでもいいBGMが聞こえる。 沖縄の海に、ごうごう吹いていた風の音と、 ため息のような「すごい色やなあ」が聞こえる。 お花見の上野で、 桜の前に缶チューハイを持って立つ。 その横や後ろにいた人たちの、 ざわざわとした人ごみの音。 「はい1.2.3」という、

          いつまでもあなたが #しゃべる画像