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3 シィ 司令官専用のラウンジのソファで仮眠をとっていたシィ(カイル・キートス白兵戦大佐)は、誰かが入って来た気配を感じ、反射的にむくりと上半身を起こした。 まだ覚醒しきっていない視界にこちらへ向かって来る人影が見えた。猫背の、明るい茶髪を短く刈り込んだ、目つきの鋭い、よく見知った男だった。 (あ、カイか) シィは額にかかる前髪をかきあげながら、反射的にいつもの営業スマイルを浮かべた。 「やっほー」 「やっほーじゃねぇよ。またここで寝てたのかよ。自分の
2 カイ 偵察機から降りるや、カイは回収してきた敵の脱出ポッドに向かって走った。中の人間を自ら確認するためだ。 エアポートの吹き抜けの3Dスクリーンにユーゴが映っているのが見えた。 遠目にも険しい顔をしているのがわかった。 無断外出の件でキレているのだろうと思ったが、それより捕らえてきた敵兵の方が重要だった。 メタリックに光る球状の脱出ポッドの周りには、メカニックスタッフが5人ほど集まっていて、表面を焼き切ろうとしていた。 「お? ボタン操作で開けられねぇの
アシリア王国 外界軍 移動基地「サザンクロス」1 ユーゴ アシリア王国とラククス神皇國は互いに遠く離れた場所にあるため、戦闘の場は領界の外、有害光線があふれる場所「外界」だ。 そのため、両国はそれぞれ多くの外界基地を設けている。 サザンクロスはアシリア軍の中で唯一、固定型ではなく移動型の外界基地だ。 また、そのメンバーは全員、通常の軍組織には属さないアシリア王女直属の部隊だ。 色々と特殊だが、同階級の司令官が4人いるのと、その全員が20代後半の若者というのは、
意図 プロローグ その世界は、生命に有害な光線で満ちていた。 人々はその光線を避け、地下に潜って生活していた。 しかし、地下も光線から安全な場所はごくわずかだった。 それだけでなく、千年に一度、約三年間にわたる極寒の「冬」が彼らを襲い、多くの者の命を残酷に奪い去った。 積み上げて来たものは、千年ごとにほぼゼロの状態までリセットされる。 そんな過酷な環境の中で、人々は命を繋いでいく希望を失っていた。 ある時、彼らを救済する存在が現れた。 人の姿をした神「アル