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『強い雨が降っていたから』

きっと雨音で目覚めたのだろう
強い雨が降っていた
まだ朝になるまえのころ

そっと目頭を指先で押さえると
薄闇の色が深くなり
雨音が近づいてくる

その音に追い立てられるかのように
頭は、凛と冴えていく
目は、まだ開けないでとまぶたに懇願している

そんなやりとりを笑うかのように
アスファルトや窓ガラスを打楽器にして
激しくリズムを打ち続ける雨

参りました、と
電気を灯し枕元の単行本を手に取った
室温を確認し暖房を点ける

集中力の欠けたなかで読んでいると
新聞が届く音がした
強い雨だから、いつも以上に感謝の気持ちが溢れる

以前新聞の投稿欄で読んだ記事を思い出す
年末、配達員さんに感謝の言葉と和菓子を新聞受けに置いておいたら、丁寧な感謝の絵手紙の返信が新聞とともに配達されたという話

届けられた新聞紙を取りに立ち上がり
1滴の濡れもないそれを手にする
朝からあたたかな気持ちにさせてくれる仕事ぶり

白湯をちびちび飲みながら
パラりパラりとめくる
インクと紙の匂いが立ち上がる

その空気に
頭とともにすっかり目も冴えてきて
私は朝食の準備を始める

いつのまにか雨音は静かな音色に変わっていた

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