『Dubidubiduo』夜空を見上げた帰り道~千曲と私⑨~
そう、すべての行動は自分が選んだものでしかない。
「あうっ」というシャウトから始まる明るくてリズミカルなこの曲
1998年発売 アルバム『ROOM802』9曲目 / 大江千里
👓🎶
出会ったのは、シングルとなり幼子ふたり相手に過ごしていた頃。
楽しくてノリノリの曲♪が第一印象だった。
とりあえず購入したけれど、余裕がなくて数回聴いただけ。でも、耳に残った明るいこの曲は、帰り道にふっと口から出てくることがあった。
お迎えの時間に間に合うように、仕事を時間内に終わらせ、慌てて保育園へ駆け込む毎日。
両手をふたりの娘と繋いで歩く帰り道。
疲弊し辛いときこそ口から出てきた。
そう、歌うって大事だよね。
子育てはうまくいかないことが多すぎて
復帰したての仕事も凹むことが多すぎて
毎日毎日その一瞬だけをなんとか生きている感じだった。
彼は歌う。
保育園が目と鼻の先にあったので、あっという間に家に着くのだが、1日の終わりに、私が「HEYHEY口笛吹きならそ♪ 今日1日が終わった♪」と口ずさむと、娘たちが吹けない口笛を吹こうとして、笑った。
そんな帰り道。
些細でちっぽけな日常に一生懸命だった頃。
でもこんな日々に何の意味があるの、なんて虚無感に襲われたりしていた頃。
彼は歌う。
冬の帰り道はもうすっかり暗い。
「月夜の夜は遠回り♪ だってもったいないじゃん♪」と口ずさみながら空を見上げる。
家に着くと、食事の仕度をして、食べて、片付けて、お風呂へ入れて、明日の準備をして、等。
やること目白押しで余裕がなくなる。
そんなときこそ、ちょっと遠回りして。
本来なら、一刻も早く帰ってやることやらないと、また余裕がなくなる。
でも。。。
この時間が、
このちょっとした遠回りが逆に、心の余裕による時間を作るよね、そんなことを思いながら、娘とお月様を見上げて、そして思わず口ずさんでしまうのだ。
そう、もったいないよね。
彼は歌う。
それでもすぐに余裕がなくなるから自分のためにまた繰り返し聴く。そして歌う。
何度も何度も繰り返して。
でもね、こんなに明るい曲なのに、時に泣けてくるんだよ。
彼は歌う。
そうだよね。
アレコレ結果で悩まない。だって選んだこと。前を向こう。
笑いながらね。
👓🎶
今、
あれから20年経った今、
私の手元には、車内で流すために あの頃作った
お気に入り曲を集めた自作のCDがある。
その中にもこの曲が入っている。
グッと入り込んで聴いてしまうと、こんなにも明るい曲なのに、ほろっと今でも涙ぐんだりしてしまう。
そんなとき彼は歌うのだ。
とびきり明るく。
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