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『母の手』さくらの頃~千曲と私⑥~

桜の開花が始まる頃に聴きたくなるのは、
ゴーストノートの中の「桜狩り」と
この「母の手」だ。

大江千里さんポップス時代最後のオリジナルアルバム「ゴーストライター」
その中に収録されている最後の曲。

満開ではなく、散っていくさくらに母との思い出を重ねている。

♪幾つもの思い出が  次の春にまたその次の春に  届きますように♪

人々がさくらを毎年愛でるのはそんな風に人の思い出が続いていくからなのだろうか。

タイトル通り、曲の中で息子は
散っていく花びらを見ながら母の手を思い浮かべる。
幼い頃に繋いだ頼れる母の手と
大人になって繋いだ痩せた母の手を。

2013年の神戸新聞に連載していた記事の中で、
お母様のことについて書かれているものがある。
2人で義兄に会いに行った話、神戸が好きだった話、
そこから千里さんのお母様への思慕や、
人となりを垣間見ることができる。

優しいドラムのリズムと
柔らかなギターとウッドベースの音
効果的に入る美しいピアノの音色が紡ぐ穏やかなバラード

そして母の人生を想う

♪幾つもの人生を  母よあなたは振り返らずに  僕らを育て続けた♪

ああ、なんて温かい声で歌うのだろう。
この曲一番の涙腺崩壊箇所。

個人的に大好きな歌詞が次に続く。

♪さくらの花が空を舞ってく  
誰かの肩に水面の裾に  音も立てずに落ちる  
今年はそっと酒を抱えて 
 あなたが好きなあの会下山の  風に伝えに行こう♪

今年はどんな話をするのだろうか、と思いを馳せる。


私の両親はまだ元気に歩けていて、いまだ手を引く側になっていないので、母の手の感触を上手く思い浮かべることができない。
小さい頃に繋いでいた手の感触もそれほど心に残っていない。
逆に、母となり娘の小さな手を繋いで歩いた日々、あの小さな手の感触は覚えている。
そして私の母は酒も飲まないし、好きな山もない。

息子として母を想う心。
私は娘であり、母となり、感じる心。
異なる境遇ではあっても、この曲を聴くと胸が震えるのは、
母への想いという、深い繊細な部分を確実にすくっているからだろう。

それは、
無駄な文字が何一つない。そぎおとされて、しかし必要なものはすべて入れた。そういう千里さんの言葉の感性を感じる名曲。


追伸

「桜狩り」も「母の手」もSpotifyにはないので、貼り付けられません。聴きたいかたは、どうぞGhost note とゴーストライターというアルバムをご購入ください😁

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