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瀬尾 まいこ / 卵の緒

瀬尾まいこさんは、決してシンプルじゃない家族を、とてもシンプルに描く天才だと思う。

瀬尾作品の特徴。
家族の会話は、割とそっけないけど暖かくて、食事はとても美味しそう。
突然悲しい出来事に襲われる。(本当に、突然)
でもジェットコースターのような気持ちの上下は無くて、読んでる間ずっと暖かい気持ちが続いている。
"生きづらさ"から決して目は逸らさないけど、でもそれを軽やかに飛び越えていく。
読んだ後、少し泣きそうになる。
本当になんだか、不思議な作家さんだなと思います。
 
そんな瀬尾さんのデビュー作。

僕は捨て子だ。証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵から産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7's blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。

巻末あらすじ

デビュー作にして瀬尾作品の全てが詰め込まれた傑作でした。
特に『7's blood』はとても良かった。七子の生活に突然入ってきた弟の七生。弟と言っても、母親は違う。七生の母親は傷害事件を起こして服役中。そして二人の父親はすでに他界。七子の母親からしたら、全く血の繋がっていない七生を、なぜかたった二度会っただけで引き取ってしまった。
納得がいかない七子と、「愛人の子」の常識を覆すほどに素直で朗らかな七生の生活が始まる。

母親が七生を引き取った理由がわかる終盤、少し胸が詰まってしまった。
『卵の緒』もそうなんだけど、瀬尾さんの描く母親の愛が凄いんだよな。決して重くないのに、ズシリと心に響く。

そしてラスト。少し予感がしていた展開。辛いし悲しいけれど、でも前を向ける。それが瀬尾まいこさんが描く世界なんだと思う。


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