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若い劇伴作家のための映画案内#10

映画好きおじさんはブレード・ランナーの夢を見るか

(最終回)

このネタは尽きないので、、今回で最終回にしたいかなと。
二つのキーワードについて書いていきます。

【サイバーパンク】
これも細かい定義とかいろんなことは検索してもらうといいと思いますが、簡単に言うと80年代に生まれたSFのジャンルです。
極度にテクノロジーが発達した未来で、機械やコンピュータと肉体の融合とか、高度に発達したネットワーク環境によるサイバースペース、仮想空間が舞台となる社会とかそういったものが描かれ、その世界での人間の自我とか
AIとは何かというような問いかけがされます。
あれ?どこかで聞いたような?
「サイバーパンク」というジャンルを確立した作品としては、ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」が有名ですが1984年作品。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」そのものは60年代に書かれているので、サイバーパンクの枠ではないですが、82年公開のブレードランナーの世界観が、ファッションも含め、まさにサイバーパンクのイメージの源流になったと。
ちなみに「ニューロマンサー」の舞台はチバシティだったと思います。(20年以上読んでないな。。)電脳世界の最先端は日本のチバシティということでこれもブレードランナーの歌舞伎町感とも繋がります。そして、サイバーパンク/映画 とかで検索すれば山ほど映画が出て来ます。
もちろんな『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』1995年 を始めとする押井守監督作品、それに影響を受けたとされる 『マトリックス』1999年、
もろにサイバーパンク小説が原作の『JM』(Johnny Mnemonic)1995年、
(キアヌ・リーブス主演!たけしさんも出てます)、割と最近のものでは『アリータ: バトル・エンジェル』(原題: Alita: Battle Angel)2019年 とか、まあある意味、それ以降のほとんどの未来を描いたSFが何らかのサイバーパンク的世界に影響されていると言ってもの言い過ぎではないかと。

そして、原作者
【フィリップ・K・ディック】
1928年!生まれで、1982年に53歳でブレードランナーの完成を待たず亡くなってしまいました。
正直、難解なものが多いし、SF小説家として評価はされていたものの、経済的にはあまり成功せずに終わったようです。(この辺りも正しい情報は検索を!^^)
で、何が重要かというと、、こちらも詳細は検索推奨ですが、僕が見たやつでは、
ブレードランナー 1982年
トータル・リコール 1990年 (2012にリメイクもあった)
スクリーマーズ 1995年
マイノリティ・リポート 2002年
ペイチェック 2003年
スキャナー・ダークリー 2006年
NEXT 2007年
アジャストメント 2011年

などなど。彼の作品が多数映画化されているわけです。まあ当たり外れはあったりしますが、それぞれ有名なSF作品です。もちろんディックの世界観だし、ブレードランナーの影響も大きいでしょう。これらを見た後にブレードランナー見ても、あれ、なんか見たことある感じとなるかもしれません。

ということで、お気づきかと思いますが、
なぜ、若い人はブレードランナーをそれほどすごいと思わないのか的なことの結論は、SFX、サイバーパンク、そしてブレードランナー的未来、僕らが初めて見て衝撃を受けた表現が、その後40年間で若者にとっては、普通によくある設定、表現、何なら現実になってしまっているので、おじさんたちが今更熱くなるのに距離感を持ってしまうのではないかと。
音楽だとビートルズとかにありがちな現象です。

ということで、そんな歴史を踏まえつつ、ブレードランナーを熱く語るおぢさんたちのことはぜひ暖かい目で見ていただき、音楽的にはヴァンゲリス的なシンセの劇伴がいいのか、マトリックス的な緊張感のあるオケものなのか、川井憲次さんの攻殻的なちょっとエスニック感があるものなのか、求められているものを探っていただければと思います。

さて、話題を変えて年内にもう一回くらい書けるといいなあと。
4回分読んでくれた方、ありがとうございました。

映画をメインに劇伴の音楽プロデューサーをやっています。
音楽打ち合わせの時には、具体的な映画のタイトルが飛び交うことが多いですが、若い作曲家にとっては生まれる前の映画なんていう場合も多く、
どこから手をつけていったらいいかわからないなんて話も聞くので
打ち合わせで実際に出た映画とかを(不定期に、、、)紹介していきます。
何か、間違っていたことを言ってたりしたら、ぜひ、ご指摘いただければと
思います!

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