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膝外側の解剖と機能

膝外側に張りや痛みなどの症状がある場合、なんの組織が原因なのだろうか?


膝関節は関節自由度が低く、過剰な動きをコントロールするための靭帯・軟骨・軟部組織が多数存在する。
股関節と足関節の中間関節でもあるため、常に上下からの影響を受け、本来の動きから逸脱“させられて“しまうことが多い。

習慣的に本来の動きから逸脱させられ続けた結果、動きを制動している組織に損傷が生じ痛みや張り感となる。



今回は膝外側にある組織の解剖と、それらがどういった役割があるかまとめていく。
組織の場所と役割が分かれば、圧痛やストレステスト、アライメントを見たり、動作中の役割を増やす・減らす条件を与えることで症状の原因を確認できる。


靭帯

靭帯の主な役割は関節の安定化である。特に外側にある靭帯の多くが膝内反を制動する。
また膝蓋骨周囲の靭帯は、膝蓋骨が適切にトラッキングできるようコントロールしている。

外側・後外側

外側側副靭帯:
膝内反を強く制動する。関節弛緩性(laxity)がある場合や、TKAの術後などに動揺が見られることがある。
内反ストレステストや圧痛で弛緩性・疼痛を確認する。

弓状膝窩靭帯・斜膝窩靭帯:
外側やや後面に位置し斜めに走る靭帯。その走行から膝内反に加えて下腿の外旋(脛骨外側の後方移動)を制動する。これらの機能不全により後外側への不安定性が生じ、腓骨頭や膝窩筋に疼痛が生じることがある。

外旋方向のストレステスト(ダイヤルテスト)や下腿外旋制動のテーピングで症状の減弱が確認できる。


膝蓋骨外側

外側膝蓋大腿靭帯:
膝外側前面、パテラ外側に位置する靭帯。パテラが内方へズレないための靭帯であるが、外側広筋とともにしばしば癒着や柔軟性低下を引き起こす。そのため、パテラを外方へ引っ張りすぎてしまい、エラーが生じることが多い。膝関節の形態上、内側が弱化し外側が緊張してパテラが外方へずれるケースがほとんどである。
前額面やスカイラインビューでのパテラアライメントで評価することができる。




外側半月板

半月板は平坦な脛骨関節面と球状の大腿骨顆部をうまく適合させるために存在している。負荷の分散衝撃吸収を行い、関節運動や筋収縮によって受動的に移動する。
特に外側半月板は下腿外側の大きな前後移動にあわせて動く必要があり、可動時のエラーが生じやすい。
マクマレーテストや圧痛で評価する。

後述する膝窩筋によって後方への移動をサポートしてもらっている。
また前方への移動は膝蓋下脂肪体等の前方組織によって行われているが今回は割愛する。


筋・腱

膝外側の筋・腱は、靭帯の制動を手助けしたり半月板の受動的な動きを助ける役割がある。また下腿のコントロールも行う。

外側

大腿筋膜張筋・腸脛靭帯:
外側側副靭帯を助ける形で内反制動を行う。負担が増えるとタイトネスや腸脛靭帯炎が生じる。荷重時の骨盤外方偏位・股関節内転位などで下腿が外へ倒れることで内反ストレスが増大するケースが多い。
oberテストやノブルコンプレッションテストで柔軟性、疼痛を確認する。

外側広筋:
膝伸展に加えて外反方向へ収縮する。過度な負担はパテラの動きを阻害したり、屈曲制限が生じる。


後外側

大腿二頭筋腱:
下腿のコントロールとして捉えると、この筋の役割は下腿の前方・内旋制動である。下腿の外旋偏位時にはしばしば柔軟性の低下による内旋可動域の減少が問題となる。

膝窩筋:
下腿の外旋制動と外側半月板の後方誘導を行う。外旋アライメントによる膝窩筋への過負荷は以前も記事にした膝窩筋の疼痛へとつながる。
また外側半月板の後方移動が不十分だと屈曲時に後方でのインピンジメントが生じることがある。



参考文献

整形外科運動療法ナビゲーション下肢.2014,林典雄 他
青木治人,他.スポーツリハビリテーションの臨床.メディカル・サイエンス・インターナショナル.2019

ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回の記事も見ていただけると嬉しいです。


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