"自律的"な組織の条件はあるのか?
トップダウン式の指令系統では自律的な組織にはなり得ない
まず、自律的な組織について考える前に、「自立」と「自律」の言葉の定義を明確にしたいと思います。
つまり、「自立」は自分の身の回りの最低限の部分は自力でできる状態ですが、「自律」は自らの思考や行動に対して自分で考え、自分を律している状態であると言えます。言い換えると、前者は経済的・社会的な独り立ちである一方で、後者はいかに精神的に個として独立し主体的に動くことができるか、といった解釈もできます。
DAOはDecentralized autonomous organizationの頭文字を取った言葉であり、この言葉を知った時から、「真に自律分散的である状態」とはどのような状態か、ずっと考えていました。明確な答えが出た訳ではありませんが、自律的な組織とは何か?どのようにして自律的な組織が作られるのか?の洞察を得たので本記事を書いています。
トヨタのグループ企業であるアイシン精機の事例
事例は1997年2月に起きたアイシン火災です。この事例は、火災そのものよりもその復旧までの鮮やかさが故にビジネススクールでも取り上げられるような一件です。(参考:「プロジェクトマネジメント」2023年6月25日/山口周)
当初「回復までに一ヶ月はかかる」事態に、部品調達が不可能となったトヨタは大パニック。しかしPバルブの供給は僅か数日で再開されることとなりました。
なぜこのようなことが可能だったのか。それはアイシン精機の発注先(=トヨタからすれば二次、三次のサプライヤー)が自発的・積極的に動くことで迅速な部品調達、製造が可能となったのです。
ある工具商社の社長は工場が火災だと知り、ということは工作機械も焼けてダメになると予測し、工作機械用の特別な刃具を全国から調達するために奔走。またある部品メーカーではそれまでPバルブを生産した経験はなかったものの、設計図を借りてきて、その時に手元にあった汎用機でPバルブ製造の施策を始めました。生産性は遥かに劣るものの、「Pバルブが全くない」という状況を回避する為に、各々が自分にできる精一杯の行動を誰から指示されたわけでもなく、自ら考えて行動していたそうです。
なぜ、自律的に動けたのか?
本件は多くの経営学者やジャーナリストが研究対象にしているのですが、彼らが共通して取り上げているのが「若芽会」という組織です。
アイシン精機では、取引先の経営を継ぐ予定の後継者を迎え入れ、彼らの成長を支援するプログラムを設けています。このプログラムを経た卒業生たちは、持続的な交流や情報の共有を目的として「若芽会」という組織を立ち上げています。つまり、若い時からアイシン精機という会社の価値観に触れ、参加している他の企業との関係性を構築しているのです。
つまり、自律的な組織には「目標(ゴール)の共有」と「横断的な連携」が求められるということが示唆されています。
まとめ
工具商社の社長の行動がとても良い例ですが、「現状」を冷静に把握し、自分たちの「ゴール」から逆算した時に何が足りないか?それを補うにはどうしたらよいか?その中で自分にできることは何か?を考え、行動することが大切なのだと思います。現在のコミュニティはDiscordやXが中心となっており、それぞれのコミュニティの価値観の醸成や横の繋がりをいかに深めるか、強めるかがポイントなのかなと考察します。
「相手の顔を見なくとも、声を聞かなくとも、コミュニケーションが取れる状態」が一般化して、人類が初めて到達してまだ10年ほど。社会学を研究していた者としては、テキスト(文字)だけで得られる情報でいかに人間関係を築いたり信頼を得ることができるのか(一方で、外見の先入観に左右されないので、適切な伝え方ができる人はある意味自分の100%のアイデンティティ(※1)で人と関わり合うことができるのではないかとも思っています)この点については引き続き動向を見ていきたいと思います。
※1 人は想像以上に見た目に印象を左右される生物なので、たとえ内容がボロボロでも身なりがきっちりしているスーツのイケメンは「仕事ができる」と認識してしまったり、内容は正しいことを言っていても身なりがだらしなく清潔感に欠ける人のことを過小評価してしまいます。(もっというと話し方、声、声のトーン等々…)ここではテキストのみのコミュニケーションはこれらを排除してくれるのであなたへの偏見のない状態で関わることができるのではないかという可能性を示唆しています。
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