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速を出すUXリサーチ(社内リサーチ編)

こんにちは、GMOペパボ株式会社でデザインとUXリサーチをしている うえだです。
これまでホスティングサービスのデザインを主に担ってきましたが、今年に入ってからUXリサーチが組織的に求められる機運が高まってきました 🙌

業務でリサーチに着手しながら、いろんな壁にぶつかっています。そのうちの一つがスピード感

リサーチって時間かかるんでしょう」という認識は、誰もが一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。「効果があるのは分かるけど、時間がかかるのはねぇ…」というのは私も葛藤している部分です。

ただ、業務でのリサーチにチャレンジする中で、速を出すためのリサーチもできるのではないか?と感じています。
そこで今回は「社外から協力者をリクルーティングする余裕もない時、社内で協力者を募って仮説検証の速を出すやり方とポイント」について軽くまとめてみます。

自分と同じような環境にある方への記録として残しておこうかなと思い、筆をとってみます✍️


誰に読んでほしいか

👉 中〜大規模企業(社員が一定数いる組織)に勤めるデザイナーやPM
👉 Slackのようなワークスペースを使っている
👉 リサーチにコスト割きにくいが、仮説検証やユーザー理解が必要な状況にある人

今回は「社内で協力者を募ってリサーチをする話」なので、スタートアップや少数組織というよりも、社内に数十名〜数百名以上存在する規模の会社に勤める方向けの内容です。


社内リサーチって何?

「社内で協力者を募って、ユーザビリティテストやインタビューなどのUXリサーチをする試み」をここでは指します。

実際、ペパボでは社内でユーザビリティテストやインタビューの協力者を募っているSlack投稿をよく見かけます。サービスの特性にもよりますが、社内にユーザー(に近い要件の人)がいる場合にとりやすい手段として、よく選ばれている印象です。

社内でテスト協力者を募っているSlackの投稿のキャプチャ画像。
ユーザビリティテストの協力者を募ったSlack投稿

ちなみに、私が新卒1年目で業務で初めてリサーチしたのも「社内ユーザビリティテスト」でした。なつかしい〜!(2年前!)


社内リサーチの良さ

社内リサーチ、こんなメリットがあると考えます💡(会社によって事情が異なるかもしれませんが、一例として挙げてみます)

🚀 とにかく素早く実施できる
調整できれば、当日中にもできるくらいのスピード感が可能。

⏰ 日程調整が楽
Slackスレでやり取りするか相手のカレンダーを見ればOK。メールや外部ツールのやり取りが不要!(日程調整って地味に大変ですよね…)

📋 NDAを気にしなくてよい
社外だと秘密保持契約が必要になる案件の場合も、組織内だと気にせず実施できるのはいいですよね🙆‍♂️(NDAの段取りって大変ですよね……)

🔰 リサーチ初心者もやりやすい
実践に慣れておらずたとえ段取りなどで失敗したとしても、社内であれば許容されやすいため、実践の場としても適切だと考えます。

💸 謝礼の手配・コスト不要
本来は協力の謝礼の手配やコストが必要になりますが、社内の場合は基本的にお互いの工数のみコストになる程度で、コストもぐっと抑えられますね🙆‍♂️


社内リサーチが向いていそうなもの

どんなサービスでも社内リサーチ可能!とは言えないでしょう。
社内の協力者が実際のユーザーとあまりに乖離していると、協力者は想像でユーザーを演じることになってしまい、そもそもリサーチが機能しなくなってしまいます 💭

そのため、例えば「利用者が幅広いtoCサービス」だと、社内でも実際に使っているユーザーが見つかるかもしれません。他にも、toBサービスでターゲットの職種の方が社内にいる場合なんかは向いているかもしれませんね。

どちらにしろ、あらかじめ設定した対象者要件と比較して「社内リサーチで本当に目的が達成できそうか」の事前の見極めが大事そうです。
リサーチ目的から落とし込んだ要件と照らしつつ判断して、協力者を社内で募れるとよさそうですね💡


🥕 🥕 🥕


社内インタビューの具体的なやり方・ポイント

先日、実際に社内インタビューをやる機会がありました。その段取りをふり返りつつ、やり方を記してみます 🪐


1. 調査計画を立て、リサーチしたい人の要件を整理する

これは通常のリサーチのプロセスと同じですね。調査計画を立てる中で、どんな人に調査をお願いしたいか?どんな属性や条件であれば、調査目的を達成できるのか。
これらを整理した上で、どうやって協力者を募るか考えます。


2. Slackのみんながいるチャンネルに、簡易アンケートを投稿する

先ほど整理した要件に当てはまる人を探すため、まずは社内アンケートを実施します!(いわゆるスクリーニング目的)

ここでは「インタビューのためのアンケート」と言わずに、アンケート回答だけを募るのがポイントです。
また、フォームなどリンクに飛ばさずに「スタンプポチッ」を回答とするのも、気軽に答えてもらうための工夫です💡(アンケート回答数をできるだけ多くするためのコツですね)

Slack投稿の例

※ 実際に投稿したキャプチャは開発中の内容を含み公開できないため、サンプルをさっき用意しました🙆‍♂️

400名ほど入っているチャンネルに実際に投稿した時には100名以上の方にスタンプを押してもらい、充分な数だけ対象者を募ることができました💡


3. スタンプを押した人を見て、個別にお声がけする

アンケートのスタンプを押した人一覧から要件に当てはまる人を見つけ、個別にメンションしてインタビューのお願いをします。

スレで全員が快諾してくれました。協力的でやさしい人たちです… 🙏


4. 日程調整して、インタビュー実施

あとはスレで日程調整して、インタビューに臨みます🙆‍♂️
それ以降の手順は、通常のリサーチと同じです。


このときのスピード感ですが、「チームメンバーからリサーチしたいと相談を受けた時」を開始時点とすると、スクリーニングアンケート実施まで3営業日、それからインタビュー実施完了(6名)までトータル9営業日で取り組むことができました。

社外のユーザーさんにお願いする場合は、スクリーニングも含めるとこのテンポ感ではなかなか難しいため、社内インタビューだからこそのスピード感が出せたのではと思っています🚀



社内ユーザビリティテストの具体的なやり方

ユーザビリティテストに関しては約1年半前、イベントに登壇した際の資料にまとめていました🐟

(初めての業務でのリサーチだったこともあり、いま見返すと内容が粗かったりとやや恥ずかしいですが…)Notionページのスクショをまるっと載せてたりするので、よかったら参考にしてみてください🙆‍♂️

このときの取り組みは、準備からふり返りまで、トータル6時間程度の工数(1営業日程度)で実施していました。

資料から抜粋。初めてにしてはよく頑張った。


社内リサーチだからこその注意点、リスク

ここまでは良い面にフォーカスした話ばかりでしたが、どんな点に気をつけるべきでしょうか?実際にやってみて学んだ点を残しておきます。✍️


🧠 サービス提供側のバイアスがある

これは言わずもがな想像できることかもしれませんが、サービスを提供する会社の構成員である以上、サービスに関するバイアスは拭えないし、ユーザーになりきることはできません。
特にデザインやPMなど開発系の職種の場合、常に提供するサービスをよくしようと考えている人達なので、なかなか頭を切り替えることが難しいですよね。

たとえばバックオフィスやCSなど開発と距離ある職種の方や、部署の異なる方・同じ社内でも接点がほぼない方などにお願いできるとよさそうに思います。


🙊 同僚だからこそ、話しにくい(質問に答えられない)ことがある

社内で公開していない個人情報やプライベートのことなど「同じ会社の人だからこそ言いにくい」ことって結構ありませんか?

リサーチ対象のサービスによっては、コアとなる体験の部分を詳細に話してもらえない可能性があるため、事前設計時点で想定と注意が必要そうです。(相性悪そうなのは副業系、転職系など)

これに対しては、状況や相手との関係性にもよりますが・・・「会話録や録画の共有権限はインタビュー同席者のみに絞る」ことなどで、どうにか対応できる場面もあるかもしれませんね。


💫 💫 💫


最後に:社内リサーチで、速く小さく成功事例をつくっていくこと

社内リサーチの意義、可能性についての話を最後にちょっとだけ 🙋‍♂️

私の事業部内では、リサーチによる大きな成功事例がまだほぼない状況のため、私自身も周囲も手探りでリサーチをやっています 🏃‍♀️🌀

そんな状況では、小さな成功事例をたくさんつくっていくことが大事だと感じています。

ひとつの大きなリサーチサイクルを時間かけて実現するよりもまず、すぐにやってみて、目に見える効果をみんなで分かち合うこと。すると「リサーチやってよかったね」「リサーチしたからすぐに仮説検証して、軌道修正できたね」となりやすいです。それが積み重なると、社内リサーチという手段に縛られず、より本質的にユーザーを理解するためのアクションや提案につなげやすいと感じました。

そんな「小さな成功事例」を早く生む手段として、社内リサーチは相性がよいと感じています。
社内リサーチで速を出しつつ、多くのユーザーさんがよろこぶサービス開発をしていきたいですね 🚀


社内リサーチ、実は結構やっている方が多そうだけど、実践知があまり出回ってないかな?と思いシェアしてみました。
こんな観点もあるよ、などあればぜひぜひコメントやTwitterで気軽に教えてください!


📣 こういうリサーチの体験談をもっと聞いてみたい方へ

今回は私のやってみた共有でしたが、こんな体験談をもっと知りたくありませんか?そんな方に、ちょうどおすすめのイベントがあります〜〜!(PR😂)

来たる5月27日(土)に「リサーチカンファレンス2023」というリサーチの体験談が集まるイベントがあります🙌

登壇される方々は私よりもっと実践経験の多い方々ばかりなので、いろんなお話を聞けるのがとても楽しみです。(私はスタッフとして当日盛り上げる予定です!🎉)
まだまだ参加募集してますので、ぜひ覗きに来てみてください!

noteでも発信してますので、気になった記事からぜひ見てみてください 🎉

2023年5月30日追記:リサーチカンファレンス開催しました!
以下ツイートまとめから当日の様子やセッションの感想追うことができます🙌


👇 ちなみに、私(うえだ)は普段どんなリサーチしてるの?という方へ、昨年の取り組み紹介記事を貼っておきます。今はもうここからだいぶ違うリサーチに取り組んでいます!はやく記事にしたい!ウズウズ


ここまで読んでくれてありがとうございました〜〜!(サクッと軽めnoteにしたかったのに、また4,000字超えになってしまった。。)

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