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マイノリティ側である経験|スロベニア日記#2

リュブリャナに来てから1カ月が経った。

大学は10月スタートだったけど、ビザの関係で1ヶ月遅れてスロベニアに来たため、現地で授業を受けられるようになってからは約1ヶ月。クラスには私を含めて10人いて、国籍でいうと、ボスニアヘルツェゴビナ人から来た人が1人と、韓国から今の学期だけ来ている人が1人、あとはスロベニア人。

デザインの授業なので、進め方としては教授からの一方通行の講義なんてものはほとんどなくて、リサーチしてきた結果の共有や自分の考えの発表、教授や学生同士のディスカッションがほとんどだ。

教授からの説明とかは英語でやってくれているし、学生のみんなも英語は流暢に話せるのだけど、さすがにディスカッションとかになると、母国語のほうが思ったことをそのまま話せるから、スロベニア語で話し始める人がいる。一人が話し始めちゃうと当然ながらみんなも、教授でさえもそれにつられちゃう。そして、スロベニア語のディスカッションが始まる。これが本当にしんどい…!お前らなんて排他的なんだって叫びそうになる。

英語ならまだ聞き取れるし自分も入れるのだけど、スロベニア語は本当に推測もつかない…。まだ英語もバリバリ使えるわけでもない、かつ1ヶ月遅れてきたためにあんまりクラスに心理的安全性を抱けていない私は、英語でそこになかなかカットインしていくこともできない。

特にクラス全体で話すときが大変で、スロベニア人が何人もいるので私が入れなくても問題なくディスカッションを進めることができる。2時間のディスカッションの時間で二言三言くらいしか話せなかったという、日本にいたときの私からしたらありえないような日だってあった。自分が透明人間になってしまったような気分になった。カバー画像の右の方にいる、紫の服を来ている人は、一緒にやっているように見えて、ほぼ見ているだけの私。笑

英語の壁は想像してたけど、まさかこの壁にぶち当たるとは思わなかった。学生たちにも悪気はなくて、気づいて英語に戻してくれることもあるし、教授たちも気づいたときには英語で話そう!って言ってくれる。私は、クラスメイトはひどい人たちだ!ってことをいいたいわけではなく、これはもうごく自然な人間の性なんだろうなということを学んだ。そして、自分が日本にいたとき、きっと同じことを留学生や外国出身の社員にやってしまってたんだろうな〜、こんな気分だったのか、、、と猛反省した。言語の問題だけじゃなくて、所属や年齢とか、いろんなカテゴリーで、複数人で話すときに少数側の人が入れないような見えない輪を作ってしまったことが何度もあったと思う。スロベニアに来て、自らがマイノリティ側である経験をして初めて、そういう想像力を持てた。

日本で生活している分には、純ジャパで、特に障がいもなく、20代で、生物学的にも精神的にも女性で、大学を出て、一人暮らししながら、正社員で東京で働いている人物として、自分が複数人のなかで少数派だった記憶はない。それは自分が少数派側になるような組織やコミュニティには所属していなかったという意味でもあるけど。きっとあのまま生活していたら、しばらくは自分が少数派だなと思うような体験をすることもなかったと思う。

実際に体験することは、想像することに比べたら、リアリティの質がまったく違う。絶対に忘れない。スナップショットで見ればスロベニア語に閉じ込められている瞬間はしんどい。でも、これからの時代において、多くの人が関わりあう場をつくったり、多くの人の目に触れるものを作る側の人間として、リアリティを持って共感できる気持ちの幅を増やすことはとても大事なことだと思っているので、これを20代で体験できただけでもここに来た価値があったと思う。一回り、強くて優しい人になれた気がする。



もちろん、ここで書いたような状況はたまにあるだけで、毎日ずっとこうなわけではない。基本的には普通に英語で授業を受けられているし、みんなとも拙い英語とビジュアライズの力でディスカッションできてるので安心してね。

(ちなみにスロベニア人は英語をとても流暢に使いこなせる。というのも、学校の授業で勉強したのに加えて、スロベニア語のアニメやゲーム、映画や本はほとんどないので、しょうがないから英語のもので遊んだり見ているうちに慣れ親しんでいるかららしい。その理由を聞いたとき、ほぼあらゆるメディアを日本語で楽しめていたのって本当に幸せなことなんだなと思った。映画もアニメも、字幕だけじゃなくて、吹き替えまでされているなんてことは本当にお金も時間も労力もかかっているし、ありがたいことだったんだと実感した。)

それに、考え方によってはスロベニア語を学ぶには最高の環境でもあるので、スロベニア語もぼちぼち勉強し始めようと思っている。それでは、ここまで読んでくれた人、Hvala!(フヴァーラ!= ありがとう)

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