見出し画像

石原慎太郎死去は、作家スターの終焉

いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。

作家の石原慎太郎さんがお亡くなりになられました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

石原さんの訃報を聞いて、何か『作家からスターになる』という道程が完全に消えた気がしました。

というのも石原慎太郎の経歴を見ればわかります。

一橋大学在学中に、小説『太陽の季節』で芥川賞を受賞しました。当時の最年少記録です。

現在の純文学は小説の中でもかなりマイナーなジャンルになってしまいましたが、当時は小説の王道ですからね。

太陽の季節は『太陽族』という流行語を生み出しました。自由で新しい価値観を持った戦後の若者達のことですね。

小説をきっかけに流行語になるなんて今では考えられません。渡辺淳一先生の『失楽園』以来聞かないですよね。あれって25年前の流行語なので。

やっぱり発信源と媒体に力がないと、流行を産むまでに至りません。太陽の季節の頃の小説は、それほど力があったということです。

しかもその太陽の季節が映画化された際、弟の石原裕次郎が俳優デビューしました。裕次郎さんはこれを機に大スターの階段を駆け上がります。

最年少芥川賞受賞で映画化でも凄いのに、さらに弟がその映画を機に銀幕スターになるんですからね。冷静に考えるととんでもない兄弟です。

その後石原慎太郎は作家として大活躍し、文壇のスターとなります。

さらに彼は政治の世界にも飛び込みます。運輸大臣、都知事を歴任して、政治家としても名を馳せました。

まあ当時は政治家というものの憧れが強かった時代ですからね。立身出世の象徴として政治家というものが機能していました。『末は博士か大臣か』ってやつです。

芸人さんもよく政治の世界に入っていましたからね。

作家スゴロクというものがあるとすれば、石原慎太郎はもうこれ以上ない最高の結果であがれたんじゃないでしょうか。

一緒に遊んでいた友達が、「おまえサイコロになんか仕込んでるやろ」と殴りかかってきてもおかしくないほど恵まれた作家人生です。

ただ作家がその影響力を最大限に発揮できた時代は、石原慎太郎で終わったんだなとも思いました。

日本の有名人の名前をあげてくださいと質問したとします。石原慎太郎が芥川賞を取った時代、1956年の人々に尋ねたら、作家の名前が上位に上がってくると思います。

みんな読書を習慣としていた時代ですからね。作家の影響力はそうとうなものでした。

特に文学の力が凄かったんです。知識階級で文学に触れていない人など誰もいなかったでしょう。

「おまえあの作家も読んでないのか」とバカにされる時代でしたからね。それが悔しくて、みんな必死になって分厚い本を読んでいたんです。読書をしていないことが恥だった時代があったんですね。今では信じられないです。

ところが今「誰か有名人をあげてください」と尋ねると、テレビタレントの名前が大半でしょう。ヒカキンさんなどのユーチューバーの名前も出てくるかもしれないですね。

作家の名前があがることはまずありません。

それだけ作家の影響力が薄れていたんですが、今回の石原慎太郎さんのご訃報で完全に消えた気がしましたね。

高倉健さんの訃報を聞いた時、「銀幕スターの時代が終わった」と感じたんですが、それと似たような感想を今回抱きました。

時代は変わります。改めて石原さんのご冥福を謹んでお祈り致します。





この記事が参加している募集

noteでよかったこと

よろしければサポートお願いします。コーヒー代に使わせていただき、コーヒーを呑みながら記事を書かせてもらいます。