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Tへのメール

オーストラリアに来てすぐに出会ったT。就職前の学生最後の一人旅で来てた彼とは彼の帰国後、何回かメールのやりとりをした。お互いに惹かれたんだろうけど。オーストラリアと日本。発展しそうでしなかった。


私がオーストラリアで永住権を取りたい理由か...
漠然としているけど、自分にとって豊かさとは何かということを考えたらこの選択になった。私は単に息をしているわけじゃないし、そのために働いてるわけでもない。息をするだけじゃなくて人生をおくりたい。

北欧なんていい社会制度があるらしいけど、寒いの苦手だし、私がスウェーデンなんて現実味がない。少なくとも日本にいる時みたいに些細な理由で毎回仕事を辞める必要はないし、個々の人間がより人間らしく尊重される制度が日本よりあると思う。


きっと誰もが自分なりの豊かさを求めているんだろう。何を豊かと思うかは人それぞれだから自分がより豊かになれる道を選べばいいんじゃないかな。

Life is not what's better than.

誰の人生がより良いかなんて比べようもない。もしあるとしたら当の本人たちがどれほど自分の選択した人生に満たされているか。


永住権を手にしたら少なくとも私は日本にいる時よりも自由を手に入れる。実現するか保証はないけど人ってある時点でリスクを覚悟で人生の選択に飛び出すしかない。私と君はこういうとこちょっと似ているね。2人ともおそらく飛び出す側ということだ。日本が嫌なわけじゃないよ。むしろ私日本が好きだよ。日本人であれて嬉しいし、こんなに洗練された道徳観念や美意識を持つ国ってそうないと思う。

四月には社会人になって一流会社で働き始めるだろう君が日本で今どんな事を考えてるんだろうなあと時々想像したりする。ふと来たオーストラリアで偶然に出会った私と一緒に過ごした数日がもう遠い昔のことのように思えるんじゃないかな。

私の場合おそらく君の言う「一流」の人たちとは別の世界で全く違う概念と価値観で生きている。何を良しとするかの基準も絶対的に違っているから比べることがまず不可能なんだろ。君はアプローチは違うだろうが、牽かれたレールが違うだろうが最終的に向かう対象はその「一流」の人たちと同じかもしれない。私は君の言う「一流」になりたいわけでもないし、追いつきたいわけでもない。全く違う一流の定義があるんだろう。探したことないけど。

君は本当に揺るぎなく健全だよ。君の場合汚くてずるい心はもっとキレイであったりするんだろうね。他の人間にとってどれほどそれをさらけ出すのが難しいかってのに何でもないことのようにやってのけるんだろう。よく君のいう一流の人が自分の社会的地位をもって受け入れられるという前提の下で自分を見せる人がいるけど、君の場合はそうじゃないからいいんだ。認められようと背伸びをして自分をつくるところもあるけどそれ以上に自分という人間を相手に伝えることができる人だから君に触発されてるよ。




photo by Joshua Harris 

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