「突然ですが、内定辞退しました。」


私が以前描いていたブログ最初の記事は、こんな穏やかではない一文から始まりました。


こんにちは、木衣(きい)と申します。創作漫画を描いております。


今までライブドアブログの方で日記を書いていたのですが、この度noteへの移行を決めましたので改めて自己紹介したいと思います。(注意・長文になります!)


初めて雑誌に漫画を投稿し始めたのは中学生の頃、初めて賞をいただいたのは高校生の頃でした。


それから実に9年間、私は漫画を描いて商業誌に投稿を繰り返す漫画家志望「でした。」


過去形なのには訳があります。


というのも、最近私は自らのことを「漫画家志望」ではなく「漫画描き」と名乗るようになったからです。


しかしこれは何も商業誌でデビューして漫画家志望を卒業したから、とかそういう意味ではございません。

何なら私は今でも傍から見れば「漫画家志望」のままです。


それなのになぜ「漫画描き」を名乗るようになったのかといいますと、ちょっとした心境の変化があったからです。


話は1年ほど前に遡ります。


「御社の内定を辞退させていただきます」


そんな電話を内定先の人事の方にしたのが、ちょうど去年の11月でした。


私はその頃、関西の某大学の文学部4回生で、同時に卒業を来年に控えた就活生でもありました。


モチベーションは決して高いとはいえなかったものの、周りと同じように就活をした結果、ありがたいことに地元である東海地方のとある企業様から内定をいただきました。


しかしこの頃私はハイパー猛烈ウルトラ深刻に悩んでいました。

それは「9年間目指し続けてきた漫画家の夢を諦めるのか、就職して真っ当に生きるのか」というものです。


スマホの検索履歴には、

「就活 やりたいこと 他にある」「漫画家志望 就活」「正社員 夢 追う」


などといったワードがびっしりと並び、私の焦りはピークを迎えていました。


そして色々あった末出た結論が、


「夢を追ってみよう」


だったのです。


ちょうどその頃公開されていた「ボヘミアンラプソディー」を鑑賞したことも大きく、映画の中でフレディマーキュリーが言った


「今やらないと一生後悔する」


という台詞に背中を押されるようにして、私は決まっていた内定の辞退を会社に伝えました。(人事の方本当に申し訳ありません…)


そして「とりあえずは一年間本気で漫画描いて投稿してみよう」と思い、今までしてこなかった絵の勉強(私は中学高校も普通の文系クラスで、大学も文学部でした)をする決意をしました。


卒業式も終わり、同級生が新社会人として立派にスタートを切った春。私はというと地元に戻り、ある造形美術教室の門を叩きました。


こうして今日まで続く、絵やデッサンの勉強をしながら投稿作を描く、といった新しい日常が始まったのです。


その間には2回ほど東京に持ち込みに行き、初めて編集さんに自分の作品を読んでもらう、といった好機にも恵まれました。


それらの経験を経て、私は最近あることに気付きました。


それは、

「自分がものすごく狭い世界しか見ていなかった」

ということです。


私は中学生の頃から9年間漫画を投稿してきましたが、その投稿先はすべて「商業誌」と呼ばれている所でした。


いわば「商業誌」=「漫画の世界のすべて」

だと思い込んでいたのです。


しかし、編集者さんや他の漫画家志望の方、新人漫画家さんなどと出会ってお話をするうちに、もしかしたら「漫画業界」というものは思っているより遥かに大きいものなのでは?という疑惑が沸いてきました。


そして、初めて一般参加者として参加したコミティアでその疑惑は確信に変わります。


私は今まで恥ずかしながら、漫画を描いておいてコミケやコミティアといった漫画のイベントに参加したことが一度もありませんでした。


本は紙派のアナログ人間だったため、ネットで創作漫画サイト等を見ることもなかった私は、世の中にこれほど漫画を描いている人がいるのか!と投稿歴9年目にして遅すぎる衝撃を受けました。


同時に、今まで自分が思っていた「漫画の世界」というのは、実は氷山の一角…ほんのちょっと地上に見えている部分だけだったことを身をもって体験しました。


むしろ、私が今まですべてだと思っていた「漫画界」を根底で支えているのが、そういったアマチュア作家さんたちの世界なのかもしれません。



元々私はずっと「万人受けはしてないけど、熱狂的でコアな読者が少し付いている漫画家さん」に強烈な憧れを抱いており、自分もそんな漫画が描きたい!と思っていました。


(いわば人付き合いの「浅く広く」よりも「深く狭く」を好む典型的なタイプです)


そんなコアでニッチな世界の大パノラマが、まさしく初めて参加したコミティアの会場いっぱいに広がっていたのです。


私はやっと、商業誌の持ち込みで「コアな作品が描きたいんです」と言った時の編集さんの渋い顔や「ウチもビジネスでやってるからね」という言葉の意味、「同人誌はやってないの?」と不思議そうに聞き返された訳が分かりました。


それだけでなく、長年棚上げしていた私の最大の悩み、


「漫画をとるか就職をとるか」


にもついに終止符が打たれました。


今までずっと、漫画を描き続けるためにはそれを「仕事」にしなくてはいけないと思い悩み苦しんでいました。


しかし、コミティアがきっかけでアマチュアの世界を垣間見た私は、


「漫画で生きる」のではなく「漫画描きながら生きる」


という道もあることに気付いたのです。


「作品を一つでも完成させたら、その人は立派な漫画描き」


という書き込みをいつだったかネットで目にしました。


9年間で描いた投稿作は33作。


なら、そろそろ漫画描きと名乗っても許されるのでは…


そんなことを思った私は、以来「いつかコミティアで自分の作品を出す」ことを目標に「漫画描き」を名乗るようになりました。


…とまあ、ここまでが私の簡単な略歴でございます。

ちなみに、現在は同人イベントが多く開催される関東への移住と就職を目論んでいる最中です。


…今さらでなんですが、書いておいてあまりの長さに自分で自分にドン引きです。



まとめると、私はただの「無鉄砲世間知らず漫画バカ」だったということです。


そして何を隠そう、その世間知らず野郎が同人誌販売という新たな目標のために、心機一転始めたのがこのnoteだったりします。


ずいぶん長くなってしまいましたが、こちらではこれからも漫画のことや日常のこと、漫画と同じくらい大好きな旅のことについて頻度低めに細く長く呟いていけたらと思っております。


ここまで長文を読んで下さって本当にありがとうございます。


もし少しでも気になった方がいらっしゃいましたら、Twitterなどものぞいていただけたら冥利に尽きます。


それでは、今回はこの辺りで失礼致します!

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