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日本らしい果物といったら何を思い浮かべるでしょうか。柿ではないでしょうか。柿は日本以外ではほとんど見たことがありません。昔どこかの果物売り場で一度見たくらいです。ここでは柿を語ってみたいと思います。

柿の実がなっているのを秋にはよく見ます。
柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺
という、子規の俳句は有名です。

柿は東アジア原産の果物です。日本でもよく見られますが、支那にも多く生えているようです。柿はブドウ糖·果糖·ショ糖などの糖質や食物繊維に加えて、ビタミンとタンニンを含有しています。ビタミンCの含有量が高いことも特徴です。そしてタンニンが渋柿と甘柿を分ける主要なファクタです。

タンニンは水溶性なので食べると渋みを感じます。タンニンが口腔のタンパク質を変性させるためです。甘柿は成熟するとタンニンが不溶性誘導体になるので、渋みを感じません。一方、渋柿は成熟してもタンニンが不溶性にならないために渋みを感じます。おもしろいことに糖質は渋柿のほうが多いのですが、タンニンのせいで甘さよりも渋さを多く感じてしまうのです。

渋を抜く方法が干し柿です。皮をむくと、そこに薄い膜ができ、その膜は酸素を透過させないために柿は嫌気性発酵状態になるために、アルデハイドを生成します。そのアルデハイドとタンニンが結合することでタンニンの不溶性誘導体が形成され、食べても渋さを感じなくなります。干し柿は日本のドライフルーツといえるでしょう。支那に干し柿があるかどうかは分かりませんが、わが国では奈良時代から干し柿が作られていたようです。

柿の学名はdiospyros Kakiです。神のたべもの柿という意味です。八百万の神々がやどるわが国を代表する果物としてふさわしい名前です。

(Oct/2023)


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