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私は、面倒くさい女。

「あなた」は野心のある面倒くさい女になってはいけなかった。
——西加奈子先生 「あなたの中から」より抜粋

 先ほど放送された、NHK クローズアップ現代に、西加奈子先生が出演されていました。西加奈子先生が大好きです。作品も、そのお人柄も、大好きです。最新作「わたしに会いたい」に関しては、サイン本を入手し、一人ニマニマとサインを眺めるくらい、とんでもなく大好きなのです。

 暫し、西加奈子先生への想いを語らせてください。ゴリゴリとした思考は苦手なので、もしよろしければ、どうかお気を楽にして、お付き合いくださいませ。

 西加奈子先生の作品との出会いは、かれこれもう10年ほど前になります。最初に読んだ作品は、「きいろいゾウ」。「なんて、生々しい! ただ事じゃない!」という、はなはだしく鮮烈な印象でした。人間の生の情動を真空パックしたものを開封したような感覚で、嗅覚、触覚にまで訴えてくる圧倒的なリアルでした。

 「きいろいゾウ」を皮切りに、西加奈子先生の作品を巡る旅が始まりました。「白いしるし」、「ふくわらい」、直木賞受賞作の「サラバ!」、「i」、「夜が明ける」、「まにまに」、「くもをさがす」、そして最新作「わたしに会いたい」。

 私の言語野は、西加奈子先生の文章と相性がとても良いのでしょう。「ん?」とか「へ?」とか思わずに、文章そのままが、すんなりと頭に入ってきます。「一旦自分で咀嚼する」過程を経ずに、「そのまま」で理解できる文章のなんと素晴らしいことか。

 西加奈子先生の書かれる世界には、飾らない人間たちがいます。西加奈子先生の文章を読んだり、インタビューを聞いたりして感動してしまうのは、圧倒的な自己開示力です。世界に開かれた存在としての、自己。自分を自分自身に偽らない、真っすぐさ。

 まず自分として生きること。答に最短距離で到達しようとしないこと。他者との軋轢、偽り、失敗を経るからこそ、真実に辿り着き、他者に寛容でいられるということ。自分だけは、最初から最後まで、自分自身の味方でいるということ。西加奈子先生から学んだことは、宝物のようです。

 私は、「役に立つ可愛がり甲斐のある女」ではありません。社会が「女」という存在にかけた呪いを、全身全霊で解こうとしている最中です。小さな歯車同士が、隣り合いながら、軋み合いながら、「こうあるべき」という軌道を懸命に守って、「社会」という化け物を構成しているのです。おかしいとお思いになりませんか? 歯車として生きることは、こんなにも痛いのに、苦しいのに。

 そんなこんなで色々考えているうちに、私は、「産む性」としての女性の社会的宿命を、とうとう受け入れることができなくなりました。そうしたら、これまで笑っていなしてきたことを、いなせなくなって。

 それ以降、いろいろな「どうして?」が、私の中で芽吹いています。

「私も、あなた様みたいになりたい。教えて、教えて、幸せですよね?」
——ちゃんみな「美人」より抜粋

 果たして、「あなた様」は本当に幸せなのでしょうか。
 自分の幸せは、自分で決めたい。
 
 「あなた様」にはならなくていい。私は、「野心のある面倒くさい女」になりたいのです。「賞味期限」が切れようが、もう知ったこっちゃありません。

 一回しかない人生です。
 どうせなら、最後の瞬間には、自分に正直に楽しく生きてきたと、人生に感謝していたいのです。

 ああ、面倒くさい奴め!

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