【短歌11首】何年経っても、言わなくてはいけないことがある … 原発さえなければ、と。

梅の花咲いたことすら気づかずにただ駆け抜けた震災の春

職歴を原発事故で断ち切られ寒風に揺れる木の如く立つ

ランドセル、文具と次々送り出し子どもの気配が消えていく家

列島に冬が来た 夫には雪を私たちには雨を降らせて

週一で帰れる距離ならよかったね ライブカメラで雪を見ている

甲状腺検査を知らせる封筒が宣告の如く吾子らに届く

身の奥に棲みついている 福島での家族の日々が見ていた夢が

避難者を置き去りにして次々に再稼働の道開かれてゆく

しろじろとあかるい夜のスーパーで幸せだけが売られていない

繰り返し心は還る思い出のなかの一番あかるい場所に

ストリートビューで訪ねるあのドアに取り戻せない幸せが棲む


東日本大震災から9年が過ぎました。今回は、ネット歌会「うたの日」に投稿した歌の中から、原発事故後の避難をテーマにしたものを集めました。現在も母子避難は続いています。夫はいわば「単身赴任」状態です。

原発事故までは、本当に普通に幸せに暮らしていた家族でした。子どもたちを、友達や生まれ育った町から引き離さなければならなかったこと。子どもたちが成長していく大切な時期に、父親と一緒に暮らせなくなったこと。経済的な打撃。他にもいろいろなことがありました。今でも悔しく、残念でなりません。「原発さえなければ...」と、何度思ったかわかりません。

短歌を始めて間もない頃の非常に拙い歌もありますが、あえて入れておきます。

うたの日投稿の日とお題はこちらです。


梅の花咲いたことすら気づかずにただ駆け抜けた震災の春
              2016年3月6日「梅」

職歴を原発事故で断ち切られ寒風に揺れる木の如く立つ
              2014年11月23日「仕事」

ランドセル、文具と次々送り出し子どもの気配が消えていく家
              2014年11月17日「避難」

列島に冬が来た 夫には雪を私たちには雨を降らせて
              2014年12月2日「冬」

週一で帰れる距離ならよかったね ライブカメラで雪を見ている
              2014年12月11日「週1」

甲状腺検査を知らせる封筒が宣告の如く吾子らに届く
              2018年10月18日「封筒」

身の奥に棲みついている 福島での家族の日々が見ていた夢が
              2016年3月11日「奥」

避難者を置き去りにして次々に再稼働の道開かれてゆく
              2015年11月13日「道」

しろじろとあかるい夜のスーパーで幸せだけが売られていない
              2016年7月14日「スーパー」

繰り返し心は還る思い出のなかの一番あかるい場所に
              2016年10月5日「帰」

ストリートビューで訪ねるあのドアに取り戻せない幸せが棲む
              2015年7月10日「ドア」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?