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時間を超えた再会

あれは高校1年生の冬
生まれて初めて
1人で入ったコーヒー専門店

インスタントコーヒーしか
知らない田舎育ちの当時の僕

ドアを開けた時の香り
店の雰囲気
珈琲職人の熟練の技
そして全てを凌駕する
旨いコーヒー

その空間の全てに
その頃の僕は魅了された

20年近くたって
あの感動を再び味わいたい
そう願い 店へ訪れてみたが

閉店

あの喪失感は今でも覚えている

もう1度だけでいい
もう1度だけ味わいたい

そう願っても夢のまた夢

しかし、先日
用事を済ませ
たまたま通りかかった
裏道の小さなビルの1階

見覚えのある店名
見覚えのある職人
懐かしい重厚な香り

気が付けば 私は店内へ

あの頃と同じく
オリジナルブレンドをオーダー

数分後、カウンター越しに
出されたコーヒー

ひとくち また ひとくち

間違いない

あれほどの喪失感が
嘘のように消え失せ
懐かしさの中 感動が蘇る

思い出を美化した味ではない
まちがいなく私を魅了した
あの日のコーヒー

20分かけて
ゆっくり味わう

あの日の幸福感に満たされる

マスターに話を聞けば
閉店後、しばらくして
移転したとの事
常連にだけ知らせていたらしい

帰り際、珈琲豆を200g購入
父と母に贈った

数十年の時を経て
再び出逢えた至福の時間

また来よう

あの青臭い記憶と共に

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