終わりなき旅/U2 I Still Haven't Found What I'm Looking for / U2
故郷に帰るのを前提に東京のPA会社に勤めていたが、当時の音響業界はとても立場が低かった。
コンサートの全体予算からまず出演者のギャラが支払われる。当然だ。
次に会場、舞台関係が優先的に予算を取る。
そのあと照明が予算取りして、最後に残った予算で音響関係をなんとかやり繰りする。
その結果、労働環境は最悪なものとなる。
正直ある程度覚悟はしていたものの、あまりの給料の安さに音を上げた。
ここまで酷いのかと。
まだ何もできないのだから安くて当たり前と言えば当たり前だが、暮らして行くことができない。
さらに言えば故郷に帰ってF原さんと一緒になろうと思っていたが、これではとても養っていけそうもない。
家庭など持てそうもない。
親には学校で学んだ事を活かせる仕事に就いたと報告してあったが、辞めて故郷で改めて仕事を探すと伝えたら母はまたしても涙し、嘆き悲しんだ。
「ほんとにお前って子は・・・」
3月のある日、ハイエースをレンタカー屋で借りて部屋の荷物を全て積み込んで、F原さんと二人で故郷へ帰った。
F原さんの家に車を停めて荷物を降ろす。
なんとも言えない挫折感というか、「東京で何もできなかったな」
という思いがあった。
ただ今にして思えばここでハッキリとF原さんに「一緒になるから待っていてくれ」と伝えるべきだったが、なんとなく居心地も悪くて、そのへんを有耶無耶にしたまま、そそくさと自分の家へ車を発車してしまった。
当然だが、仕事も決まってないので自分に自信も無いし、この先どうしようか自分自身も迷っていた。
探しているものはまだ見つからなかった。
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