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不思議なピーチパイ/竹内まりや Fushigi Na Peach Pie / Mariya Takeuchi

高校2年生になりGWにF原さんと初めてデートすることになった。
今でもハッキリと覚えているがF原さんは水色に白の細い縦ストライプの半袖ワンピースを着ていた。

素敵だ。
眩しくて目が潰れそうだ。

初めて二人で一緒に映画を観ることにしていたが、
今となっては何を観たか全く覚えてない。
「スタートレック」だった気がする。
そうだとしたら映画のチョイスが良くない。
笑っちゃうね。

田舎の高校生だからこんなもんか。

映画が始まって右に座っているF原さんと肘が時々当たる。
全神経を肘に集中する。
心臓がドキドキする。
汗がダラダラでる。
息ができない。
苦しい。
勇気を出して暗闇の中でF原さんの手を探す。
チョンと当たった。
その手をギュッと握る。
F原さんに払いのけられたらどうしよう、と思っていたけどどうやらその心配はないようだ。
ああ、あったかくて細い手だ。
汗でベタベタしないだろうか。
その後も映画が終わるまでずっと手を握っていた。
太ももを触りたかったけど我慢した。
嫌われたくないもんね。

何が何だか分からないうちに映画は終わって外に出た。
この後はテニス部の先輩から伝授された洒落た喫茶店へ行くことにしているのだ。
その喫茶店はコーヒーを注文すると必ず小皿にピーナッツが3〜4個付いてきて、剥いた殻をそのまま床に捨てるというスタイルの店なのだ。
床にはそれまでに捨てられた殻が一面に落ちていて、歩くとジャクジャク音がする。
ただでさえ普段喫茶店などには行かない田舎者だから、2人ともそのカルチャーショックたるや凄いものがあった。

(どうだ、洒落た店知ってるだろ?先輩に教えてもらったんだけどな)

店の中ではヒットしていた竹内まりやの「不思議なピーチパイ」がかかっていた。
春の陽気にピッタリの曲だ。
透明感のある竹内まりやの声とシャレたバックの演奏が耳に心地よかった。

二人向き合って座ってそれぞれ好みのサンドイッチとコーヒーを注文した。
F原さんはBLTサンド、野菜嫌いな俺はベーコンエッグのベイクドサンドをナイフとフォークを使って食べた。

食べている間もずっと正面のF原さんを見ていた。
味なんかしなかった。

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