見出し画像

人間普遍的なテーマ~「リトル・ダンサー」

21世紀になり、それまでの因習や固定観念からの解放が礼賛喧しい。
今だからこその視点で過去を振り返り、この方向への進歩を裏付けるような作品も2000年前後から見られるようになった気がする。
本作もその一つ、2000年公開「リトル・ダンサー」

舞台は1984年のイギリス北部の炭鉱町ダラム。不況のあおりを受けて、ストライキで町は対立が激化している。
ひょんなことでバレエに目覚めてしまったビリーが才能を開花させて、その
道を歩んでいくというお話。

ビリー演じるジェイミー・ベルは、2000人のオーディションの中から選ばれた新人。それがゆえに思春期特有の不安定な感じを出せていると思う。バレエも経験者とのこと、そのダンスもとても魅力的である。

この映画の眼目は当時のイギリス、いや今も残る階級社会のひずみなのではないだろうか。この親の子に生まれた、この町に生まれた、ということがその人の人生を決めてしまう。

昨年話題になった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」には、現代のイギリスが抱える問題を、市井の目線で描かれている。

このような、「夢を持つ少年と彼を縛り付けようとする閉鎖的な街」というテーマの映画はけっこうありそうでもある。なんとなく途中から既視感に襲われたのもそのせいだろう。
真っ先に思い当たったのが、「遠い空の向こうに」である。この映画も同じく炭鉱の町であった。

よくあるということは、言い換えれば普遍的なテーマとも言えるのかもしれない。

故郷を離れて夢に向かっていくというのも、決してラクではないとは思うけど。その陰には夢破れた人が幾千といることは語られないから。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?