起承転結からの自由~「ナイン・ストーリーズ」

最近忙しく、平日に読書の時間がなかなかとれていない。
そんな中でも少しずつ読み進められた短編集がこちら。
サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」

サリンジャーというと、「ライ麦畑でつかまえて」である。
この作品を読んだのはもう何年前になるだろう。それまであまり翻訳モノは得意ではなかったのだが、この作品を読んでとても瑞々しい印象を受け、他の海外作品を読めるようになったきっかけとなった覚えがある。

収められている9つの短編は、いずれもちょっと変わったシチュエーションのなかのエピソードがつづられている。
変っていると言っても、ファンタジーっぽかったり非現実的であったりするわけではなく、手の込んだ設定がされていて、「こんなことあるものかな」というようなひっかかりを持たせる具合だ。

そして読んでいってその世界に馴染んできたくらいに、ストンと終わってしまう。昔の特に海外の短編にはよくある、この終わり方。潔いというかもったいないというか、起承転結から解き放たれているとでも言おうか。直前に読んだ向田邦子の短編集とは正反対、余韻も後腐れも残さない読後感。

じっくり味わいたい場合は国内モノ、さらっとニオイを感じたい場合は海外モノ、そんな読み分けであろうか。
いやいや、それは乱暴すぎるか。
でも、「ナイン・ストーリーズ」にはくすんだアメリカの空気は感じられた気がした。

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