フリーランスと「生々しい経営」について

■確定申告のこの時期だから書いてみることにした

僕は現在、Rockakuというコピーライターだけの会社を経営していて、もうすぐ7期目に入るんですが、2012年に法人化するまでは約5年間フリーランスをやっていました。

働き方改革やら脱社畜やらとフリーランスに注目が集まる昨今ですが、わりと経営視点でフリーランスを語ってる人が少ないような気がするんで(まあ、僕、インフルエンサー的な人のブログとかほぼ読まないだけなんですけど)、そこら辺を少しまとめてみようかなと思います。

なんでわざわざこんなことを書くかというと、僕自身があんまり数字に強くなくて、しなくていい苦労をたくさんしてきたってこと。あと、その経験を「UX」に置き換えて、フリーランス向けのマネジメントサービスの開発に携わっていたりするので、多くのフリーランサーたちが数字と向き合う確定申告のこの時期に、誰かの助けになればと思って筆を執ることにしました。

因みに今回の記事ではけっこう具体的な数字が出てきますが、これはあくまでも僕の経験則と、2007〜2010年頃の相場と、あと、僕の職業(コピーライター兼ディレクター兼セミナー講師=ソフトや機材にあんまりお金がかからないひと)における話なので、各人、自分の職種に置き換えて考えてもらった方がいいところも多々あります。


■会社員とフリーランスの違いは「収入の解像度」にある

さて、まず、フリーランスとして活躍されている&フリーランスになろうか考えているみなさんに質問です。会社員とフリーランスの間にある大きな違いって何だと思いますか? これに関してはいろいろな見解はあるかと思いますが、今回のテーマに即して言うならば「収入の解像度」だと思います。

「収入の解像度」と言う言葉はさっき僕が考えたんですけど……会社員の場合、給与明細があって税金や保険を会社が差し引いた金額が一覧化されるので良くも悪くも実入りが明確で先も読みやすい……つまり「解像度が高い」ということになるわけです。

これに対してフリーランスはグッとぼやけます。まず、何もさっ引かれていない「売り上げ」の増減に一喜一憂し、税金や経費を差し引いた自分の年収なんて、確定申告時までほとんど把握できてないのが実情です。
特に売り上げが巨大になればなるほど、当座の請求金額と残高くらいしか指標がなくなり、「うほ、俺、月収が会社員時代の10倍になったぞ!」なんて甘い勘違いをして、ヤフオクで20万とか使っちゃう生活に陥るわけです。先に言っておきますが、それは「月収」じゃなくて「月商」です

売り上げが大きいフリーランサーは当然クソ忙しいし、ほとんどの事務処理もひとりでこなしてます。しかも、大概は事務が苦手です。もう、どんどん解像度が低くなっていくのは想像にたやすいと思います。


■【試算】とあるフリーランスのランニングコスト

てなことを踏まえてから考えたいのが、会社員における「収入」とフリーランスにおける「売り上げ」を対比したとき、同レベルの生活水準を維持するにはどれくらいの差があるのか? です。

例えばですが、額面30万円でボーナス込み込み約年収450万円をもらっていた会社員がいるとしましょう。年齢は28歳で都内にひとり暮らし。家賃7万円のお部屋ってことでどうでしょう。

この人がフリーランスになった場合、売り上げはどれくらい必要でしょうか。先に言っておきますが、売り上げが30万円だったらフリーランスになるメリットは(収入面では)全くありません。てか、かなり苦しくなります。

まず、これまで会社が負担したPCやソフトや文房具や通信費は全部自腹になります。社会保険も国民健康保険に変わります。これだけでけっこう削られます。あと、「来月も同じ収入がある」という状況もほぼ無くなります。つまり、常に多めの収入を確保する心構えが必要になります。

ってなことがフリーランスでやっていく上での「わかりやすいリスクとコスト」です。このリスクやコストに見合うだけの収入(実入り)を得る……つまりフリーランスとしてやっていく「うまみ」を得るためには、どれくらいの売り上げが必要になるか。このあたりから試算をはじめて見ましょうか。

<ざっくりランニングコスト> 
・家賃:70000円
・通信費(ケータイ/ネット):20000円
・Adobe・マイクロソフトなどのソフト代:15000円
・食費(1食平均500円でも):45000円
・光熱費:15000円
・交際費(月3回飲みに行くとして):20000円
・資料代:30000円
・文房具など:5000円
・交通費(都内・鉄道メインとして):5000円
・何らかの趣味:20000円
・服飾・美容費:20000円
 →@265000円

超ざっくり組みましたけど、自分の経験と照らし合わせるとけっこうリアルに仕上がったと思います。僕の場合は家賃がかなり安かったのがちょっと違うかもですが。
上記、まずは食費と交際費についてはもっとかさむことになると思います。特に交際費。人に会う機会をつくるのはかなり大事な「仕事の一部」なので、これじゃちょっと安すぎるかも知れないのでご注意ください。
あと趣味も大事です。せっかく自分の裁量で時間が使えるようになったりするわけで、平日昼間の美術館を満喫したり、サラリーマンでは難しいフェスの通し券を買ったりと、そういう特権は味わっておくべきです。
それから服飾・美容=身だしなみ。これも必要経費だと思います。もうちょっとお金かかるかもですね。


■じゃあ、いくら稼げば安心なのか

で、仮にこれが平均的なランニングコストだとしましょうか。正直、そんなに贅沢な暮らしぶりではないと思います。それでもこの時点でサラリーマン時代の手取りはぶっちぎってますよね。じゃあ、この金額を毎月稼げればOKかと言えば、そうは問屋が卸しません。まず、先行きが不安定なので、常に必要経費以上の売り上げを目指す必要があります。プール金も必要ですし、上の試算に入れていない税金の支払いなんかもあります。そして何より、カツカツの収入からは心のゆとりが全く生まれない。

これは精神論ではなくて、単純にフリーランサーとしての生命線のひとつである「持続力」に紐付く重要な要素なんです。会社員における「月収」は「来月もある程度、必ずといっていい確率で入金するお金」ですが、フリーランスにはそれがない。数ヶ月後に急に100万円もらえるかも知れないけど、来月確実に26万円もらえる保証がない。その26万円がないために数ヶ月後の100万円に辿り着く前にショートしてしまったら元も子もないので、やっぱりお金は大事なんです。

で、まあ、緻密な計算もできなくはないんですけど、わかりやすい1つの基準が月商50〜60万円だと思っています。ランニングコストを回しつつ、好きなことも楽しめて、貯蓄もできる最低額。

つまり、「リスクを冒してまでフリーランスをやる意義がある」と言えそうな金額が、だいたいこの位なのかなと。もちろん、住んでいるエリアや年齢によって違うでしょうし、職種によっても異なりますんで、まあ、そこらへんはざっくりとらえてください。


■重要なのはここからです

で、で、ここから徐々に「経営」の話になってきます。仮にですが月商60万円を目指すとしましょう。となると、年商の目標は720万円。1ヶ月の平均営業日が20日間なので、日商換算で最低3万円稼がねばなりません。

つまり、かなり強引ですが、「1日で3万円稼げる手段・スキル・ルートを持っているかどうか?」が、ある種の生命線になるというわけです。逆に目標がもっと高いぜ!というひとは、同じように目標金額をここに代入してみましょう。

【参考】年商>月商>日商の目安 
・年商600万円>月商50万円>日商2.5万円 
・年商720万円>月商60万円>日商3万円 
・年商1000万円>月商約84万円>日商約4.2万円

僕は何も最初から月商60万円ラインでなきゃダメだとという話をしているわけではありません。僕もそこに届くまでに2年ちょっとかかったと記憶してます。ただ、いずれそのラインまでは届かないと、遅かれ早かれ疲弊してぶっ倒れる未来があるということは(断言しないまでも)、少しイメージしておいてほしいかも……と思ったりします。


■何でどれほど稼いでいるか? を見極めるチャンスが確定申告

フリーランス時代から事務や会計は大の苦手で、今日も行政関係の案件で契約書類の不備があって、係員監視の下で必要事項を記入させられていた僕ですが、敢えて言います。確定申告はフリーランスにとって、「収入の解像度」を高める絶好のチャンスであると。

届け出だけで精一杯なのはよくわかりますけどね。でも、ちょっと考えてみてください。例えばライターさん。あなたがやっているお仕事の種類は1つじゃないっすよね。インタビューがあったり、レポート記事があったり、お店の取材があったりするでしょう。デザイナーさんだって、ロゴつくったり、パンフつくったり、ウェブつくったりします。で、それぞれに「得意なジャンルや分野」があると思うんですけど、その「得意なジャンルや分野」が本当にどれほどのお金になっているか?って把握できていますか?

これは実際にある年度末、僕が自分の会社でやってみたことなんですけど、「1年分の請求書の分解」という気が狂いそうな作業に挑戦したんです。と、いうのも、僕がつくったRockakuという会社は、コピーライターとして扱う仕事の種類がかなり多くなってきていましてね。正直、自分たちの主力となっている業務が何であるかわからなくなっていて、それで、ジャンル分けを試みたと。そんな感じです。

その結果に僕は震えましたよ。とにかく感覚と数字のズレがひどかった。その年、僕は常にネーミングの案件を抱えていて、狂気レベルで名称案を考え続けていたんですよ。でも、年商の中でネーミングが占める割合はなんと5%未満でした。そして、そこまで大量に手がけたと言う意識がなかった採用系のインタビュー記事の売り上げが20%を超えてたり、企画の仕事が30%に届きつつあったりと、いろいろな発見と課題が生まれました。あとは、売り上げの元となるクライアント別での割合分析なんかもして、それで依存度とか、開拓の方向性とかが見えたのもよかったです。

これと同じことをやっておくと、フリーランスの「経営」はかなり強化され、戦略的になっていくと思います。で、それをやる絶好のタイミングが数字と向き合う確定申告であるというわけです。

でも、まあ、正直大変だと思うのです、こういう分類・分析まるっとできちゃうサービスをつくっておいたので、興味がある方は来年に向けて導入をご検討ください。という、壮大な広告だった……というオチ、どうでしょうか?

すみません。そんな冗談はさておき、必要経費/目指す生活水準から導き出す「フリーランスの生々しい経営」というお話しでしたが、真面目な話、フリーランスを経験する大きなメリットの1つが、スモールなリスクとコストで、経営を体験的に学べることだったりするんですよね。いずれにしても、お金だけがフリーランスになるメリットや動機ではありません。でも、お金がないと自由も狭まる。だからこそ、お金ともっと正面から、ポジティブに向き合ってほしいな……なんて、老婆心ながら思ったりする次第です。

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ありがたやー
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Rockaku森田

フリーランス(的なひとたち)のための経営note

フリーランスや、フリーランスになろうかどうか考えているひとたちのためになったり、ならなかったりする雑文をまとめてみました。
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コメント1件

60万の月商くらいになるとある程度生きられるという話を、肌感覚でしていたので、なるほど!でした🙏🙏🙏
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