バドワイザーを飲む頻度が減った話
「ロッキーさんってバドワイザー好きですよね」
「え?そうかな?」
その時の僕は曖昧なリアクションだったと思う。
季節や気分で飲むお酒を決める。
もちろんビールでも。
瓶ビールが飲みたいお店や黒ビールが飲みたい気分やジョッキでいきたい季節など、ビールの飲み方も様々だ。
行儀は良くないがコンビニで買って歩きながら飲むこともある。
その場合も缶ビールか瓶ビールか気分で選ぶ。
僕は缶ビールが苦手だ。
安いし手軽だからよく買うのだが、どうも飲みきるのに苦労する。
あの小さい口周りだと炭酸がきつくてゴクゴクいけないんだよ。
で、歩いてると炭酸が抜けちゃって、気がつくと不味くなって飲めたもんじゃないと。苦手だ。
そんな中、コンビニで買えるビールだとバドワイザーが好きだ。
サッパリしているのでゴクゴク飲めるから、よく買うし、1人の時は頻繁に飲んでいる。
夏は特にそう。
2019年の夏、とある女性とランチへ行った。
夏の間だけ海の家で一緒に働いてる女性だ。
彼女と彼女のペットと3人。その日はじめて一緒に出かけた。
お互いお酒が好きってこともありランチビールをいただく。
ピザとパスタを分け合って食べて、追加でもう一杯アルコールを注文。
二杯目はレモンサワーとかそんな感じだった気がする。
ランチの営業時間ってのは早くて、僕らが飲み終わる前に会計伝票が運ばれてきた。
会計を済ませまだ14時か15時頃、どうしよっか?と話すと彼女が
「この辺にもう一軒ペット可のカフェがありますよ。お酒もありそうだし時間も夜までやってるんで行きます?」
なんて粋な提案してくれた。
調べてくれて優しいな。
そのお店は変わっていて、カフェ営業をとってるのに扱ってるお酒は明らかに「BAR」そのもの。
聞くとマスターがお酒好き。けど建物としてBARの営業が取れないのでカフェでオープンしたと。
お酒と心意気は完全にBARだった。
マスターから色んなお酒の薀蓄をききながらお互い初めてのお酒を楽しんだ。
時間はまだ18時、楽しかったな。
僕はライブ、彼女はペットのトリミングがあるのでここで解散。
「駅まで送りますよ」
そう行ってくれた彼女に甘え3人で駅まで。途中でコンビニに寄る。
2軒目のカフェでの最後がスコッチだったので、口の中をライトにするためビールが飲みたかった。
「それなんですか?」
「バドワイザー。アメリカのビールだよ」
「へー。飲んでる人はじめて見ました」
「飲む?」
「一口だけ、、、ビールですね」
「そりゃそうだろ」
アホみたいな会話で駅に向かう。
彼女とは毎日連絡を取り合い、翌週からは週に6日会った。
出勤のタイミングは違うが帰りは一緒だ。
たまにコンビニにも寄る。
たまにはバドワイザーも買う。
「ロッキーさんってバドワイザー好きですよね」
「え?そうかな?」
僕は曖昧なリアクションだったと思う。
僕がコンビニでバドワイザーを買えば「好きですよね」
と言い
僕がコンビニでバドワイザー以外のビールを買えば「今日は違うんですね」
と言う
僕のリアクションが曖昧な理由も、僕がいつもの夏よりバドワイザーを飲む頻度が増えたのも、全て彼女が原因だった。
「ロッキーってビール好きだっけ?」
海の家に遊びにきた友達にそう質問され、僕は
「まあ、普通っす」
と答えた。
実際、格別にビールが好きってわけでもないし、他のアルコールに比べて知識も疎い。
続けてその友達から
「好きな銘柄ってないの?」
との質問
「うーん、、、」
沖縄だからオリオンビールへの愛着はあるし、けど過去に一番飲んでたのはサントリーだし、てかその前にうちの店はシンハービールがスポンサーだし
なんて考えてたら、隣から
「バドワイザーです!ロッキーさんはバドワイザーが好きなんです!」
と元気な声が
例の彼女が、ニコニコとした得意げな笑顔で答える
「バドワイザー好きなの?」
「まあ、好きっすよ」
「へー。知らなかった」
何気ないワンシーン
何気ない会話
それが記憶にしっかり残ってるのも彼女が原因で、その理由は彼女への気持ちが夏の中でひときわ目立っていたから。
9月2日
海の家の営業が終わり、当初から話していたように僕と彼女は他人になった。
あれだけ毎日笑いあっていた彼女は次の日から存在せず
なぜか晴れた夏らしい日が増す中、今もコンビニにはバドワイザーが並んでいる
夏に比べてバドワイザーを飲む頻度が減ったのは、季節のせいではなく、彼女が原因だろう。
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