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最低賃金引上げ議論がスタート|気ままに労働雑感

中央最低賃金審議会(中賃審、会長=藤村博之法政大学大学院教授)は6月28日、令和4年度の最低賃金の引上げの「目安」策定に向けた議論を開始しました。
後藤茂之厚生労働大臣が藤村会長に諮問文を手交し、できる限り早期の全国加重平均1000円以上の実現をめざし、生計費、賃金、賃金支払い能力を考慮して検討するよう求めました。

「できる限り早期の全国加重平均1000円以上の実現」は、6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)や「新しい資本主義実行計画工程表」に盛り込まれたものです。さらに、骨太の方針などのほか、同日閣議決定の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、最低賃金の決定に当たり、生計費、賃金、賃金支払い能力を考慮することを明記していました。

最賃決定における生計費、賃金、賃金支払い能力の考慮については、過去の審議などにおいて使用者側が強く訴えていたものです。
過去最大の引上げ幅となった昨年の「目安」審議において使用者側は、コロナ禍の中小企業の厳しい状況を踏まえ、とくに賃金支払い能力を重視するよう求めるとともに、当時の最賃水準の維持を訴えました。
そのため、中賃審の「目安に関する小委員会」では、全国加重平均28円の引上げを盛り込んだ公益委員見解に対する採決において、使用者側委員4人のうち2人が反対の意思を示しました。

この公益委員見解で示した目安をもとに地方審議会で地域ごとの引上げ額を検討したところ、東京地方最低賃金審議会では、当時の水準維持を一貫して求めてきた使用者側委員が、同審議会専門部会で示された28円の引上げ案について、「地域の経済や雇用の実態を見極めた審議が行われたとは言いがたい案が示された」などと反発。
採決を前に使用者側委員6人のうち3人が退席し、残る3人も棄権の意思を示す事態になりました。

果たして、賃金支払い能力など3要素の考慮を前提とする今年度の審議は、どのような結果になるのでしょうか。

労働新聞編集長 金井 朗仁

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