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厚労省が障害者雇用除外率の引下げ・縮小を検討|気ままに労働雑感

厚生労働省は5月10日、労働政策審議会障害者雇用分科会を開き、障害者の雇用義務を軽減する除外率制度について、対象業種の除外率を一律に10ポイント引き下げる案を提示しました。

除外率は、建設業や道路旅客運送業など障害者の就業が困難な業種について、雇用する労働者数を計算する際に一定の労働者数を控除する制度ですが、障害者と健常者が平等に生活できる社会をめざす「ノーマライゼーション」の観点から、平成14年の障害者雇用促進法改正によって、16年4月に廃止されました。
現在は、経過措置として、対象業種ごとに引き続き除外率が設定されており、廃止の方向で段階的に引下げ・縮小が行われています。
これまで16年4月と22年7月に、それぞれ一律10ポイントの引下げを実施しています。その結果、除外率は令和4年4月時点で、5%(倉庫業など5業種)~80%(船員等による船舶運航等の事業)の範囲で29業種において設定されています。

厚労省が今回示した案は、法定雇用率の見直しのタイミングに合わせて、さらに10ポイントを引き下げるものです。
実現すれば、除外率が5%の5業種と、10%の窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用)など4業種の計9業種が廃止されることになります。

厚労省案に対して障害者代表の委員からは、引下げ・縮小のさらなるスピードアップを求める意見などが出ています。
一方、使用者委員は、法定雇用率の達成企業割合が50%を下回っていることなどを考慮し、慎重に検討するよう求めました。
さらに、企業が対応するための十分な準備期間を確保する観点から、引下げ・縮小のタイミングは次回の法定雇用率見直し時期ではなく、それ以降にするのが望ましいという意見も挙がりました。

除外率の引下げ・縮小が進むなかで、対象業種が実雇用率を伸ばしていくためには、対象業種における障害者雇用のノウハウの獲得が欠かせないでしょう。
行政において、業種や職種ごとの好事例を積極的に周知するほか、企業への個別支援を充実させる必要があると思います。

労働新聞編集長 金井 朗仁

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