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[要旨]

組織開発とは、現場にいる人たちが自ら、人と人との関係性を通して、組織内の違和感のあるプロセスを見通し、より良い組織をつくる活動を言います。これに対し、人材開発は、個人の能力を高めることを指すますが、組織開発は、組織の仕組みなどが改善の対象となっています。

[本文]

コンサルタントの早瀬信さんたち3人の著書、「いちばんやさしい『組織開発』のはじめ方」を読みました。まず、本書で、早瀬さんは、組織開発とは何かについてご説明しておられます。「ここ数年、組織開発は、企業のあいだで関心が高まり、実践例も増えてきました。ただ、どうすれば組織開発がうまくワークし、組織が変わるのか、戸惑い、迷っている方も多いように思います。『組織』を『開発』する、というシンプルな2語からなる言葉ですが、そのシンプルさが、逆に、わかりづらさにつながっている印象もあります。

いったい、『組織を開発する』というのは、どのような行動を指すのでしょうか。組織開発は、もともと米国で発祥し、長年にわたって取り組まれ、洗練されてきたものです。その定義は、実に、さまざまですが、よく知られているものの1つに、次のような定義があります。『組織開発とは、組織の健全性、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である』(中略)やや硬い表現ですが、組織の『健全性』と『効果性』というのは大事なキーワードです。(中略)本書の監修者である中村和彦さんの著書、『入門組織開発』(光文社)には、次のような一文があります。

『組織開発の本来の意味は、“組織内の当事者が、自らの組織を効果的にしていく(よくしていく)ことや、そのための支援”です』当事者が、自分たちで組織を良くしていくために行うのが組織開発、ぐっとわかりやすくなりました。私たち3人の著者が合意しているのは、次の定義です。『意図的に行う、良いチームや良い組織づくり』組織開発とは、現場にいる人たちが自ら、人と人との関係性を通して、組織内の違和感のあるプロセスを見通し、より良い組織をつくる活動、と言えます。自分たちが感じるモヤモヤを、自分たちのために修正する、そんな良い組織をつくる活動を通して関係性も豊かになり、組織の健全性も高まると言われています」(32ページ)

組織開発という言葉は、しばしば、使われているものの、定義についてはあまり意識されていないと感じます。そして、その定義については、私も、早瀬さんたちの定義のように、「意図的に行う、良いチームや良い組織づくり」であると思います。ちなみに、組織開発に似ている言葉に、人材開発という言葉があります。そして、人材開発は、開発の対象が1人の個人であるのに対し、組織開発は、開発の対象が複数の人が集まった組織ということは、容易に理解できることです。

ここで少しややこしくなるのは、組織の開発すること、すなわち、組織を良くすることと、個人を開発、すなわち、個人の能力を高めることの違いはどういうことかということです。ここからは、私の考えですが、組織をよくすることとは、組織の風土をよくする、コミュニケーションを活発にする、組織の蓄えている知識の量を増やすなどということだと考えています。もう少し具体的に述べると、例えば、作家の岩崎夏海さんの大ヒット小説、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の舞台となる、東京都立程久保高校の野球部がよい参考になると思います。

同校野球部が強くなったのは、選手個人個人を強くしたというよりも、別の働きかけによるところが大きいと思います。例えば、才能が高く、キャプテンだった選手から、キャプテンの役割を外し、プレーに専念させることで、チーム全体がよいプレーができるようになりました。その一方で、補欠選手でありながら、ムードメーカーの選手にキャプテンを任せ、やはり、チームの雰囲気をよくすることに成功しています。こういった、個人ではなく組織の仕組みを改善していくことが、組織開発であると、私は考えています。

2024/3/9 No.2642

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